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はじめに
平成12(2000)年学長就任の年、啓友35号に「医学部長から学長へ 小括と展望」を寄稿致しました。その後、平成14(2002)年、巻頭言として「順天堂大学 只今躍進中」を寄稿致しました。その後、平成15年12月末日を持ちまして学長職を再任し、平成16年4月1日から学長2期目となりました。
平成16年3月31日、定例理事会に於いて石井理事長から正式に辞任表明があり、翌4月1日に開催されました臨時理事会に於いて理事長職兼務を拝命致しました。重責に身の引き締まる思いで御座居ます。
石井理事長は12年間理事長職を御勤めになりましたが、当初の4年間は学長職・理事長職を兼務していたとの事により、小生は学長と理事長職を当分の間兼務する事となりました。しかし乍ら、23年間継続しておりました、医学部皮膚科学・アレルギー学の主任教授は辞任する事と致しました。
医学部長職4年、学長職4年の計8年の間、特にこの5〜6年間は石井理事長よりかなりの部分を任されておりましたので、教授職を辞任すると心身共に負担は軽減する事と期待しております。
一方、本職は皮膚科の臨床医・学者のつもりで居りましたので、一抹の寂しさを感じております。しかし乍ら理事長職を拝命した限り、全学的な規模に立ち、順天堂大学の更なる発展を遂げさせるべく、一層の努力をして参りたいと思いますので、同窓の諸氏は宜敷く御支援の程、お願い申し上げます。
大学の近況
さて、以下に順天堂大学、特にスポーツ健康科学部の近況を中心に申し述べます。
@スポーツ健康科学部の一般入試の倍率は、スポーツ健康科学科18.79倍、マネジメント学科10.08倍、健康科学科20.33倍で、全体では16.84倍でした。医学部は一般入試約30倍であり、国家試験の合格率は97.7%であり、全国国公私立医学系大学(80校)中、第2位でありました。因みに過去6年間平均2位の合格率でありますので、医学部・スポーツ健康科学部共に医科系大学、体育系大学としては5指に入る、名門校としての地位を固めたと思います。
さて、医療看護学部は4年制の学部になって最初の入学試験で注目されました。一般入試は12.5倍となりました。因みに昨年、医療短大(3年制)時代は6.9倍でしたので、およそ2倍の倍率となりました。3年制医療短大の時代は年々受験生の倍率が下がっていましたので、懸念されておりましたが4年制学部にして倍旧の人気度となり、ホッと一安心しました。順天堂における医師育成の歴史は167年、看護師養成の歴史は108年となりますが、4年制の大学にして本当に良かったと思っています。
A看護師養成を3年制から4年制にするに当たっての最も根本的な問題は、順天堂大学の財政状況にありました。順天堂大学が抱える全ての資産を100とした場合、負債率が1/3を超えていると、大学法人は3年制から4年制への改組は文部科学省から許可して貰えません。
学長職としての小職の当面の目標はこの財政的難事を乗り切ることにありましたが、順天堂大学3学部、教師・医師・事務職・看護師・技師等々より成る職域横断的・斜断的な、学長室特別20のプロジェクトチームを結成し、問題点を公開し、論議し、解決法を提示・実行、その成果を広報しつつ、この難事を乗り切る事ができました。即ち、順天堂大学幹部挙げての知力を結集し、450億円近くあった有利子負債を過去4年有余で200数拾億返済を達成致しました。今なお200億円余の負債がありますが、順天堂大学の財政的危機は一応免れたと言えましょう。後述しますが、順天堂大学スポーツ健康科学部に新たな学科を新設するには、25%以下の負債率にする必要がありますが、これはあと2年のうちに達成されると思います。
さて、Bスポーツ健康科学部在校生、そして卒業生の活躍状況を以下に簡略します。本年はオリンピックの開催の年ですが、オリンピック日本代表として結成された者は以下の如き人たちです。その他に、澤木啓祐教授は日本オリンピック委員会JOC委員として、鈴木大地講師はアジア人初の世界オリンピアンズ協会理事として、選任されました。
以上、オリンピック関連以外に本学スポーツ健康科学部は、陸上競技、トライアスロン、自転車競技部等の優勝を始め、多くの選手が活躍しておりますが、これらの運動部の成績は他の人が詳しく論じるでありましょうから、それに譲ります。
近未来的展望
順天堂大学スポーツ健康科学部は本邦初のスポーツ健康科学博士課程を発足させ、文字通り日本初の博士号を順天堂より授与し、第二号も本年授与致します。今後の課題は大学院の更なる充実であります。医学部は既に80名の定員に対して100名を上回る大学院生が入学し、4年間において337名(定員320名)と大変な活況を呈しております。多くの優れた研究が生まれ、文部科学省より助成される研究費の総額は私立医科系大学の中でも屈指の状況にあります。スポーツ健康科学部の今後の課題は、大学院の定員を増やし、優れた研究、教育的論文が教員の指導の下に次々と生まれてくることでしょう。
近未来的には順天堂大学、医科系大学としては大学院大学としての資格を充分に満たしておりますが、体育系大学院大学としての資格を一日も早く満たすよう、努力したいと思っております。
スポーツ健康科学部の青木学部長は本年をもって定年退職され、順天堂大学の卒業生である澤木啓祐教授が次期学部長に選出されました。青木学部長が大学を去るに当たり、「スポーツ健康科学部の更なるグレードアップの為に、今、大学として何を為すべきか」という提言を求めましたところ、3つの提言を受けました。
@スポーツ健康科学部、特にスポーツ科学科は受験生も多く、大変勢いがあるので是非正式に定員を50名増員して欲しい、というものでありました。これは即刻了承し、その後理事会、評議員会などを経て正式に来年より果たされるよう、只今文科省に申請中であります。
Aは先述の大学院大学構想であります。現在、千葉の酒々井に於いて展開しております大学院中、修士課程を本郷の地に移し、社会人入学を大幅に受け入れて欲しい。日本の中心である東京の中心のお茶の水(湯島・本郷)地区にマスターコースを設置して欲しいとの提言であります。しかもその定員は医学部には絶対に負けたくない、つまり105名にして戴きたいとの提言でありました。私はその提案、特に心意気が素晴らしいと即座に了承し、それに向けて努力することを誓い合いました。やがて教授会、理事会、評議員会そして各種委員会等における協議、そして文科省等との厳しい折衝等が予想されますが、これも完成に向けて何とか努力して行きたいと思います。このマスターコースの充実は、それを教える教員のファカルテイ・ディベロップメント(FD)にも繋がり、教員諸氏がここ数年の間に自他共に研鎖して戴き、FDレベルが画期的に上昇することを望んでおります。
B番目の点は「国家資格の取れるような学科を併設して欲しい」というものでありました。これも誠に尤もであると思います。私の知る限り、私の卒業した頃の順天堂大学の体育学部はその卒業生の殆どが保健体育の教師として就職しておりました。しかし乍らこの就職率は徐々に下がり、教員資格を取っても就職口が無いという状況に陥っております。
私が医学部長になってから、この8年間、医学部の卒業生に対して、医療関連機関への就職方斡旋をお願いして参りました。また地域社会への紹介もお願いして参りました。又、体育学部同窓生諸氏も、これに大変な尽力をしてくれたと思います。その効果もあり、最近徐々に就職率は向上しておりますが、それでも尚、満足すべきものとは思っておりません。私も青木前学部長と全く同じ考えです。これも近未来的な課題として取り組んで行きたいと思います。
以上、3つの提言を青木学部長より受けたところで、学長特命の副学長として青木先生には大学に残って戴き、順天堂のスポーツ健康科学部の内部固めをしっかりとやって頂くことと致しました。@とAは果たせると思います。Bを果たす為には、大学財政の負債率を25%以下にすべく、大学側としてはその経営に努力しなければいけません。しかし乍ら、私の積算では、約2年後には負債率25%以下は達成できると思います。
さて、順天堂大学スポーツ健康科学部は内部構想、近未来的将来構想も固まり、澤木啓祐・新学部長以下多数の有力な教授陣を擁しておりますので、これらのファカルティ・メンバーが切磋琢磨しつつ互いに協調し、讃えあいつつ進めば順天堂大学スポーツ健康科学部の前途は洋々たるものがあると信じております。どうか体育学部・スポーツ健康科学部の同窓生の諸氏は順天堂大学の発展の為に、引き続き絶大なる御支援・御協力の程をお願い申し上げます。
終わりに
以上、順天堂大学の現在、そして近未来的な構想をお話しました。今後加えまするに、大学法人全体としては、@危機管理体制の再点検・再整理。3学部6病院各部署で起こりうるあらゆる種類の危機に対する対応体制を再点検すること。A情報センターの設立を定めました。氾濫する情報を収集・整理・分析し、大学の運営・教育・研究・医療向上に必要な情報を選りすぐり、それを判断・実行していくことが肝要です。そのコアとしての情報センターを設立します。Bは各種の事業を運営していくに当たり、3学部に於いて何が必要であるか、その優先順序を明らかにさせつつ、それを実行していくその為の財政の確立であります。正に「財の独立無くして、学の独立無し」これは私学の基本です。今、国は国公立大学の独法化を進めており、国公私立大を問わず、自助努力、知的財産の創造は大学の基本となるでしょう。かかる世情の中、順天堂大学らしく、正道を進みつつ、これを具現できるよう幹部教職員共々熟慮しつつ、前進して行きたいと願っています。
日本は少子化が進んでおり、大学、特に私立大学の経営は今後倍旧の難事となる事が予想されます。又、医学・医療界をめぐる社会情勢は厳しく、病院経営は更に厳しさを増して来るでしょう。かかる中に於いてスポーツ健康科学部・医学部・医療看護学部、3学部から成る、伝統ある順天堂大学を正々堂々と日本有数の大学として、国際的レベルで躍進させることはかなりの難事と予測されます。
しかし乍ら、逆風、時に乱気流の中を帆裁きを工夫し、「ピンチはチャンス」の言葉を噛み締めつつ難局を乗り切るべく舵取りを行なって参りたいと思いますので、同窓生諸氏の絶大なる御支援を宜敷くお願い致します。
2004年 学校法人 順天堂 理事長
順天堂大学 学長 |
小川 秀興 |
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