学校法人順天堂 順天堂大学理事長・学長室

 
理事長・学長トピックス
2004年10月1日 理事長就任にあたり同窓会に望むこと 『ゆしま』JNC.第16号

1.はじめに

 本年3月31日定例理事会に於いて石井前理事長が正式に辞任され、翌4月1日に開催されました臨時理事会に於いて理事長併任を仰せつかりました。
 石井先生は学長職8年、理事長職は12年間に亘りその間4年間は学長職と理事長職を併任されたとの前例があり、それに従うことに致しました。同窓会諸氏の絶大なる御協力と御支援の程、お願い申し上げます。
 日本の看護学史上初の婦長は順天堂に学んだ杉本かね氏であり、正に誇るべき歴史を有しております。順天堂での体系化された看護教育は、正式には1896年(明治29年)から開始されております。その後順天堂大学に於いては、講習所、看護学院、准看護学院、高等看護学校、看護専門学校、医療短期大学と名前を変えながら、看護師教育が行なわれていきますが、卒業した当時の名前は変わっていても順天堂看護学教育機関卒業生・同窓生は全て同じ一筋の道を歩んだのであります。異なった名称での機関を卒業した先輩諸氏が互いにその差を論じたり、互いを差別したり卑下したりする必要は一切ありません。これは夜間、昼間の全ての卒業生を含めて、正に順天堂における看護の道は一筋なのであります。
 私は学長そして理事長として、看護師の方々が互いに手を携え、順天堂の本分とする医療人、特に看護師の本分とする「人の気持ちが判る、病む人の立場に立って考える」との心映えに立ち、「日本一優しい、心技共に優れた看護師の育成」という順天堂看護学史を貫く一筋の道の下に学ばれたことを誇りに思って戴きたいと願っています。そして、それを力一杯に支えて行きたいと思います。
 今回、本学の3番目の学部として医療看護学部(四年制)を開設致しましたが、本学に於ける看護教育の4大化は全国118校中106番目であり、随分と遅れていたと思います。誠に残念であります。この気持ちが学長就任をお引き受けした原点の1つです。

2.医療看護学部設立

 設立が遅れた原因は本法人の抱える大きな負債にありました。文部科学省には医療短大を4年制の学部に昇格させるには、学校法人の抱える負債率が33%を超えていないこと、という申請条件があります。本法人には1号館改築にあたり負債が異常に膨らみ、その後も収益を上げながらもその負債は一向に軽減しませんでした。1996年に医学部長に就任して以来、順天堂大学医学部に於ける学事(研究・教育・診療)の姿勢を正し、特に医学部附属5病院に於いて、また、医学部に於いて負債を減らすべく最大限の努力をしてまいりました。
 2000年に学長職に就任したのを契機に、『学長特別プロジェクト20』を立ち上げ、教職員が一丸となって順天堂全般の活動に於ける効率性を討議し、実行し、その結果、財政の改善を急速に進めることが出来、2003年に文部科学省に学部設置認可の申請をし、無事に医療看護学部を今春4月に開設することができました。2003年の申請直前に計算した数値は、32.8%という正に薄氷を踏む思いでしたが、タッチの差で認可に漕ぎ着けました。医学部、そして病院に働く医師、看護師、技師、事務職員等からなる協力は正に必死の覚悟でありまして、不退転の決意でこの兄弟学部である看護短大を何とか4年制にしたい、という思いで協力戴きました。これは我々の仲間である看護師の方々に対する順天堂人、殆ど全ての人々の誇りと尊厳を賭けた戦いでもありました。リップ・サービスはもう良い。今はただ実行あるのみ。殆どの人が快い汗を流しました。順天堂大学に於いては「節約・倹約等はしなくても良い、但し、無駄な浪費だけはしないで欲しい」「身体を使わなくて良い、頭を使って欲しい」というキャッチフレーズが稔ったものであります。御協力戴きました関係諸氏に心より御礼申し上げます。また、私共の進めた運動の真の意味を深く理解し、支援されました林会長を始めとする同窓会役員諸氏、そして出身校を問わず、現在の順天堂に働いている現役の看護師諸氏に心からエールを贈りたいと思います。御協力、有難う御座居ました。

3.医療看護学部の課題

 今回開設された医療看護学部は、人的に於いても、研究施設的に於いても、その環境が充分に整備されております。教育人では、全国の大学等から新たな教員が参集されております。@お互いの良いところを活かし、自己主張を出来るだけ慎み、とりあえずは新学部に集った人々の和を築きつつ、学是「仁」を尊び、学生教育に当たって戴きたいと思います。A学生に対して、決して彼らを見下す(look downする)ことなく、学生に誇りを持たせ、素晴らしい事を褒め、足らざるところは遠慮せすに愛をもって諭すことを心掛けて欲しいと思います。そして若者の意見にも耳を傾けて戴きたいと思います。
 B各領域に於ける、一般教養教育あるいは専門教育をするに当たり、専門的な知識を伝授すると同時に、教員の持つ幅広い教養・教育・センス・感性・心映えをも伝授して欲しいと思います。
 C若者が、自らの進路・職業に誇りと自尊心を持てるような教育をして戴きたいと教職員諸氏にお願いしております。過剰な自尊心は困りますが、ある程度の自尊心を持つ事は大切です。問題は、自尊心を持つに相応しい、それを裏打ちする正確な技量と素晴らしい感性を持たせてあげることでありまして、その様な看護師・保健師・助産師が育つ教育を強く望んでおります。
 Dまた、研究面では、至近の浦安病院に(性差)環境医学研究所を、文部科学省助成を受けて設立致しました。これは順天堂大学の教育の1つのコアである、環境によって如何なる病気が起こるか、性差によって起こる病気の違いは何か、等を研究するものであります。看護師・保健師、助産師の研究教育テーマに相応しい物であると思います。平たく申し上げますと、リウマチ・膠原病・骨粗鬆症がなぜ女性に多いのか、案外わかっているようでわかっていないのであります。この研究所長は私が兼任しておりますので、医学部・スポーツ健康科学部、そして何よりも医療看護学部の3学部の教職員・大学院生がここに於いて共同研究できることを心から望み、これを推進して行きたいと思っております。

4.今後の展望

 さて、現在100を超える4年制看護大学は、4年制への昇格を果たすと同時に大学院を設置しています。その大学の数は72校(修士課程72校、博士課程24校)に及び、日本最古の歴史を誇る順天堂は遥か彼方に置き去られています。
 本学に於いては教職員の、ファカルティ・デベロップメント(FD)を急速に整備し、先行する大学を一挙に抜き去る位の勢いで、邁進して戴きたいと望んでおります。同窓諸氏に当たっては、これを物心共に声援して戴きたいと思います。本学の医学部は既に大学院大学への昇格を果たし、スポーツ健康科学部は大学院大学への基準をほぼ満たしております。遅れて出来た医療看護学部を、一挙にこの大学院大学まで昇格させたいものと、私は心より望んでおりますし、これを推進していきたいと思います。

5.まとめ

 充実した研究環境が整えて、学長特別研究費などFDを推進させ教員の教育面と教育実績の向上を支援していく所存ですので、教職員諸氏には大いに頑張って戴きたいと期待しております。医学部そしてスポーツ健康科学部との連携を強めながら、看護系の大学院大学として、日本のみならす国際的に医療看護学界をリーディングする教育・研究そして実践・実学の医療教育機関として、近未来的にはアジア・太平洋地域の拠点大学として発展することが出来ることと期待しております。これからの私立大学は、少子化や国立大学の独立法人化などの影響を受けて、経営的にも難しい局面に入ります。本学としてもこれを切り開く先見性・決断力、そして実行力が問われます。教職員一同で順天堂らしく、学是「仁」の道を「不断前進」して行く所存で御座いますので、同窓会の方々も何卒宜敷く御支援、御協力の程、お願い致します。

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