学校法人順天堂 順天堂大学理事長・学長室

 
平成18年度順天堂大学大学院入学式
 平成18年4月15日(土)、有山登記念館講堂において、順天堂大学大学院の入学式が挙行されました。これまで別々に入学式を行っていた医学研究科とスポーツ健康科学研究科がともに本郷の地に集った初めての合同入学式です。本郷キャンパスに大学院を集中・整備する総合大学院構想に向けた第一歩ともいえる、節目の入学式での小川理事長・学長の式辞をお送りします。
 
小川秀興理事長・学長式辞
 
小川秀興理事長・学長  平成18年度順天堂大学大学院に入学された皆さん、おめでとう御座居ます。
 一番初めに、「仁」と称するDVDをご覧戴きましたが、どうでしたか。
 順天堂大学は天保9年に創立されたというのは、あまりピンとこなかったのではないでしょうか。平成にできると平成大学、昭和にできると昭和大学、明治にできると明治大学・・・これは解り易いですね。慶應は明治の前、慶應年間にできたので慶應義塾といいます。そして順天堂は慶應大学創立より30年前に創立されました。世界の趨勢からしますとベルリン大学創立の28年後、ニューヨーク大学より7年後に順天堂はできました。
 学祖、佐藤泰然が江戸の薬研堀という所に医学塾を開いたのが169年前です。順天堂よりも前に開塾した医学塾は結構ありましたが、大体が3、4代目迄で潰れてしまいました。現代に至るまで脈々と、医学を中心とし、医療看護学、病気にならない健康な心身作りをコンセプトにした体育大学(現在ではスポーツ健康科学部と改称)の3学部からなる"健康総合大学"として発展的に継承されてきました。西洋医学を初めて導入した現存する大学としては、順天堂大学が日本最古ということになります。
 今回は医学研究科博士課程93名と、スポーツ健康科学研究科の博士前期課程64名と博士後期課程7名、計71名(内、社会人対象で入学された方は24名)の全てが一同に会して、合同でこの有山講堂で行なう初めての大学院合同入学式であります。加うるに入学者の半数以上は順天堂以外の出身の方たちですので、若干、順天堂の歴史をご紹介致します。
 順天堂の初代堂主、佐藤泰然が江戸の薬研堀に開塾したのは、幕末騒乱の時代でした。洋学を学ぶ人間が尊重されたり、或いは迫害を受けたりした物騒な時勢でしたので、門下生を率いて江戸の隣、千葉の佐倉藩領に医学塾の拠点を移しました。佐倉藩主の堀田公は「西洋堀田」とあだ名される程、西洋の近代文化が好きな開明的な人でした。そして老中で幕閣を支えた人物でもあった、この方の勧めで順天堂グループは江戸から佐倉へと移った訳です。そうする内に全国から「佐倉へ行けば蘭方医学が学べる」「臨床医学を学べる」「門閥も身分も問わない」と順天堂に多くの人が集まるようになりました。その様子は「日新の医学、佐倉の林中より生ず」として現代にまで残されています。
 この伝統は現在も続き、順天堂大学には一切の学閥、男女の差別、国籍の差別はありません。どこの大学、どこの出身であろうと今ここにひとたび参集したその日から皆さんは"順天堂人"です。世の為、人の為、そして地球規模での学問の進歩の為に共に研鑽してほしいと思います。医学研究科に入学された方は殆どが医学部の卒業生ですが、医学部卒業生の方は既に研修医を2年間以上終えていますから、3年目以上の経験を、ということになります。その皆さんは医学博士号と同時に専門医も取得するという2つの目標をもってこの4年間を研鑽して戴きたいと思います。学位については素晴らしい研究成果が上がれば3年でも修了できますので、是非3年修了を目指して努力してほしいと思います。
 スポーツ健康科学部のマスターコースの方、そしてドクターコースの方も、厳しい学問の道が待っていると思いますが、優しい先生方の心のこもった指導が受けられる大学ですので、どうか自主性をもって、志を高くもって、学問を愉しみながら、1ミリでも1センチでも学問の進歩の為に邁進して戴きたいと願っています。
 順天堂大学大学院のコンセプトは、教育・研究、そして医学研究科の医師の方には加うるに診療・臨床も入りますがその各々に励んでください。医学研究科には医学部出身でない人も大幅に入学しております。これは世界の趨勢でもありますし、日本の最近の傾向でもあります。例えば、耳鼻咽喉科学、眼科学を勉強するのは医学部の卒業生だけに限らず、物理工学、理学部等を卒業した人がそれを学び、研究しても良い。文学部や心理学科(部)を学んだ人が精神医学を学んでも当然のこと乍ら良いのではないか・・・という考え方です。スポーツ健康科学部も多種多様な専門を持つ人達が健康科学、或いは学問の進歩の為にスポーツを、心身の健康をサイエンスして戴きたい。それぞれの立場から異なった角度から真理解明に向けて、各専門分野の人々が協力・協調して問題解明に向かってアプローチする、というのが順天堂大学の大学院です。
 DVDの最初に「仁」の文字が出ました。この校旗にも刺繍されていますが順天堂大学の校章は、江戸時代にデザイン化された「仁」の文字です。「仁」という漢字は人ヘンに二で、1人ではなく2人を指しています。人ありて我あり。他を慈しむ心、これ即ち「仁」です。自分のことばかりを考えるのではなく、他人の立場になって考えることです。この人が何をどう考え、どう悩んでいるかを考えること。なぜこの人はこのような言い方をするのだろうかという事を考えつつ行動しよう、というのが順天堂大学の学是です。
 「医は仁術」という言葉がありますから「仁=医学」と考えがちですが、これは間違いでして、「仁」というのは人として兼ね備えるべき徳目の中で最も重要な、最高の徳目として揚げられているものです。他人のことも考えなさい、ということです。ですからスポーツ健康科学部の人にとっても関係深い言葉であります。他人と申しましたが、対象は人に限らず、動植物、生きとし生けるもの、ひいては地球環境のことも考えて行動する・・・このような大きな意味でこの「仁」という言葉を捉えて戴きたいと思います。
 さて、大学と大学院とはどう違うのでしょうか。大学は「これを勉強しなさい」と指導されつつ、しかし自らの意思で勉強してくる所ですが、大学院というのは自らテーマを選び、多方面からなる考え方、アプローチを理解して、学問する。新しきところを自ら学びとる場です。パッシブ(受動的)ではなくてアクティブ(能動的)に、自らの学びたいことを探求する、自ら新しき分野を、例え1ミリでも切り拓いていく、学問の場所です。
 大学、或いは大学院の価値は働いている教員の質による部分もありますが、最も確かな指標となるのは大学院生の質と志です。これが学問の進歩、その大学院の発展の根幹であります。院生の顔つきを見て、院生が出している論文のレベルを見れば、その大学院大学のレベル・評価が世界的にどの程度なのかということが判るとも言われています。  皆さんはこれから幾多の困難に遭遇すると思いますが、今一歩の努力、今一歩の強い気持ちを持って知的能力を展開させて戴きたいと思います。特に日本は、平和国家を揚げております。文化文明の中において、スポーツの与える心身への健全さを保つ為の効用を研究する、そして病める人の為に如何なる治療をしていくかを研究する。自分が順天堂大学大学院で学んだ研究結果を、知的財産として、例え僅かでも後世に残して戴きたいと思います。簡単に諦めることなく、夢を持って一歩一歩前進して欲しいと願っています。
 本日、私が皆さんに贈る言葉として、「私共は若者に大いに期待している」という言葉を贈りたいと思います。「最近の若者はけしからん」と言う人も居ますが、私はそうは思いません。先ほどのDVDにあった金メダリストの冨田、鹿島、米田の3選手は3人とも本学スポーツ健康科学部の卒業生で、2人は順天堂大学大学院に進みました。医学研究科からはたくさんの素晴らしい医学者が、ここに育ち、ここから全国に巣立っていきました。本学は古い歴史を持つ大学でありますが、この歴史に基づいて新しい1ページを加えていくのは諸君たちです。志を高く揚げ、夢を持ち、その達成を目指して頑張って戴きたいと期待します。
 以前より申し上げておりますが、学問は何歳から始めても良いのです。順天堂の大学院は全ての世代に、年齢制限無く、学ばんとする人、我々生きとし生けるものの為に少しでも学問を学ぼうとする、意欲ある人達の為に門戸を開いています。年齢を重ねてこられた方々、その豊富な経験もまた、若者と共に影響しあい、研鑽して、互いにその足らざるところを補完しつつ、支え合って戴きたいとの思いを込めて社会人入学制度を作りました。働きながら、夜間や土・日曜日に本学に参集し、自分の生活の範囲の中で、日々の前進を果たして戴きたいと期待しております。
 順天堂のもう一つの学是に「不断前進」があります。絶えず前進する、弛まぬ努力を積まれたし。これは多彩はバックグラウンドを持ってここに集まった皆さん全てに申し上げることです。順天堂では年齢による差別、出身校・出身科による差別、性差別、出身国による差別、総てありません。どうかしっかり「仁」の心を持って勉強して、そして自ら学び、楽しい院生生活を送ってください。皆さんの将来に大いに期待しております。
「順天堂だより」247号(2006.7)より

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