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保健看護学部看護学科
 
- Kondo Fusae -
 
近藤 ふさえ 先生
Vol.16 2017.3

近藤ふさえ先生

今回は保健看護学部の近藤ふさえ先生にインタビューさせていただきました。

成人看護学・慢性期の看護

私は成人期(18歳頃~65歳くらい)の中でも「壮年期・中年期」(40代~60代前半)の「慢性期」の患者さんの看護をテーマに研究し、教えています。
「成人看護学」は「急性期」と「慢性期」の大きく2つで、「急性期」は救急救命的な分野と手術を受ける患者さんの看護という分野、「慢性期」は慢性的な疾患を抱える患者さんの看護と、がん患者さんの緩和ケアです。
 慢性期の病気にも色々あり、糖尿病のように上手くコントロールできれば健康的な生活を送れる病気もあれば、徐々に悪化するような病気や、ちょっとした乱れで急に増悪し、良くなったり悪くなったりを繰り返すような病気もあります。
慢性疾患を持つ人には長年培ってきた生活習慣があります。病状を悪化させないためには生活習慣の中に病気回復に必要な療養行動を組み入れ「セルフ・マネージメント(自己管理)」できるようになってもらう必要がありますが、患者さんご本人の意思を尊重し、生活習慣を大切にしなければなりません。看護師は患者さんの話を聞いて相談しながら、患者さんがセルフ・マネージメントできるように関わっていきます。

看護師から教員へ/教えることから研究へ

私は看護師になりたての2年半は人工透析室、次に整形外科病棟に半年ほど勤務した後、教員になりたいと思い教員養成コースで1年間学びました。再び整形外科病棟に戻って1年半勤務していたところ、母校で教員募集を聞いて教員になりました。ですから臨床の経験は合わせても4年半です。
専門学校で10年ほど教えた後、大学教員になって改めて研究の大切さに気づき、教授の指導を受けたり、周りの人たちに研究的なサポートを受けたりしながら研究を始めました。前任校で14年、順天堂大学に着任し7年ですので、研究歴は21年になりました。研究テーマは、慢性期の病気を持った患者さんの看護の臨床指導に関わることが多かったので自然とそうなりました。
研究や指導をするうちに、この看護分野の面白みや奥深さが判ってきたのですが、慢性期の患者さんの看護というのは、その人の人生や生活にじっくりゆっくり関わっていけるのが魅力ですね。

患者さんを理解すること/聞く力

近藤ふさえ先生

「『聴く力』とは『話を聴く』だけではなく、相手の立場を理解する力でもあると思います。医療現場で看護師の存在はとても大きいと思うんですよ。看護師自身もその事をもっと自負して良いんじゃないかな。」
成人期の患者さんは「私」というアイデンティティが確立していて、その人なりの考えや価値観、長年の生活パターンがありますので、看護師は、まず患者さんのそういう事を理解するところから始まると思います。

看護師は患者さんが何を望み、何を目指しているのか、どのような生活を送りたいのか、その人なりの考えをうまく聞き出しながら、医学的なサポートやアドバイスをしていく必要があります。
患者さんの考えや生活を理解しないまま、セルフ・マネージメントのアドバイスをしても、患者さんには実行してもらえないと思います。ですから、セルフ・マネージメントを上手くできるように患者さんを導くためには、看護師の「聞く力」が非常に大切だと思います。

例えば、病気を悪化させないために食事制限が必要でも、大好物を我慢するのは辛いですよね。毎日実行するのは患者さんなので、患者さんと一緒に考えることが必要です。その為には患者さんの考えや本心を聞き出さなければならないので、看護師に求められるコミュニケーション能力の中でも「聞く力」が非常に大事だと思います。

「成人看護学」のカリキュラム

「成人看護学」の授業は1年生の後期、入門編の「成人看護学概論」から始まります。成人期の発達の特徴や課題、成人期の人たちを理解するための理論、それから例えばセルフ・マネージメントに関連して、成人の学習理論やセルフ・ケアについての授業です。

2年生の前期の「成人保健活動論」では、統計の図表を用いながら成人期の病気や健康問題等についての授業で、グループワークを取り入れています。静岡県は3地域(東部・中部・西部)に分けられ、食べ物や習慣、かかり易い病気などに地域差があるので『静岡県下の人たちの健康問題』というテーマで、7~8名のグループで調べ、発表と意見交換する授業を行っています。

近藤ふさえ先生

レポートはA4用紙2ページにまとめて授業前に提出してもらいますが、たくさん調べた内容を2ページにまとめる作業は大変でしょうね。全てのレポートに目を通し、授業では2、3グループに発表してもらい、他のグループのレポートについては私が補足説明しています。
毎年この授業を続けていますが、毎回新しい発見があります。例えば『子宮がん予防のワクチン接種』というテーマでも、1~3期生くらいまでは実際に接種を受けた学年、4期生からはワクチンの副反応が社会的に問題となり接種を受けていない学年、というように学年の背景が異なると同じテーマでもまるで違うレポートになったりします。
最近は例えば “食育”や「運動習慣を身に付けよう」、「がん検診を受けよう」という三島市のキャンペーンなど『地域の保健活動』が活発ですが、レポートを通して毎年の変化が判りますし、私も学生の目を通して最新状況を知ることができています。
 
2年生の後期からは系統別な病気に対する看護の授業が始まります。系統別とは、例えば「呼吸器系」「循環器系」「消化器系」という分類で、“身体の機能の低下している人たちへの看護”という具体的で難しい内容になります。慢性呼吸性の肺疾患や心筋梗塞や心不全などの患者さんを「どう看護するのか」という学習が3年生の前期まで続きます。
 
臨地実習(病院での実習)に行く前の3年生の前期は「看護過程」「看護診断」の授業を集中的に行います。例えば、心筋梗塞の患者さんの事例を用いて、どのような看護的な問題があるかということをアセスメント(分析)し、必要な看護のケアプランを立てる、という一連の思考の勉強で学生にとっては結構ハードな授業だと思います。
3年生の後期からは病院実習が始まります。成人期は急性期・慢性期3週間ずつ6週間、主に順天堂静岡病院と静岡県立静岡がんセンター、伊東市民病院で実習します。実習ではいろいろな疾患の患者さんを受け持たせていただき、必要な看護を考えて、その一部を現場の看護師さんと一緒にケアさせてもらいます。
臨地実習先の静岡病院には素敵な看護師がいっぱいいますので、臨地実習では看護職の凄さを感じたり、先輩看護師に接して「私もこういう看護師になりたい」と思うような理想の看護師に出会ったりできると良いですね。

心の成長に必要な葛藤の時期/教員ができるのは道を見つける手助け

毎年、臨地実習の前後で、「私に看護師が務まるのかしら」と悩む学生がいます。あと数日で実習が終わるという時に「私、もう辞めたいです」と言ってきた事もありましたが、「ちゃんと最後まで実習に出なさい」とは言わず「少し考える時間が必要ね」と対応しました。
臨床現場で看護師さんたちがテキパキとケアしたり、患者さんたちと適切なコミュニケーションを取っていたりするのを見た学生たちが圧倒され、自分に置き換えて不安に思う事もあると思いますが、それは当然だと思います。そして、それは仕事に慣れればできるようになることだと思います。

学生は皆、看護学部を受験する時に、「将来は医療関係の仕事に就く」という認識はあるのでしょうが、実際の看護師の仕事を知ると自分の未熟さを痛感して大きなギャップや、看護師に求められていることの重圧を感じ、悩んで相談に来るんです。
青年期は自分自身について思い悩み、多くの人のサポートを受けながら最終的に自分で将来を決めていく時期です。そういう意味では本学で学ぶ間にいろいろと悩むと思いますが、その悩むということを大事にしてほしいと思っています。私は学生が看護師の適正について悩むことは悪いことではなく、非常に大切なことで、自分をきちんと見つめている証だと思っていますので、学生には大いに悩み、考えていただきたいと思っています。そして友人、保護者、そして教員、いろいろな立場の人に相談して意見を聞くことで、解決への糸口、自分の道が少しずつ見えてくるのではないかなと思います。

教員ができるのはサポートで、最終的に結論を出すのは学生本人です。迷子になった時に「こっちに行きなさい」と示すのではなく、一度立ち止まらせて「どうしたいの?」と聞いてあげるのが教員だと思います。ですから、私のところに相談に来た学生には「あなたはどう考えるの?」「あなたはどういうことがやりたいの?」「どういう自分になりたいの?」「そのためには、あなたは今は何をしなければいけないかしら?」と言います。このやり取りで、学生は自分の考えを少しずつ明確に自覚できるのではないかと思いますが、学生からみたら「先生に相談しても答えを教えてくれない」と思っているかもしれませんね。
残念ながら、最終的に他の進路を選んだ人たちもいますが、「先生に相談したあの時、大学を辞めなくてよかった」と言ってくれる看護師もたくさんいます。むしろ学生時代に悩み、自分なりの答えを出した人たちの方が、臨床に出て現場で頑張ってくれているような気がします。

毎日の大学生活を練習の場に/TPOに合わせた言葉遣いができるように

今は核家族が多くなり、目上の人と敬語や丁寧語で話をする機会が少ないので、臨地実習で高齢の方とお話をすること自体が学生にとっては難しいようです。目上の方への言葉遣いが身についていない学生は、教員から「言葉遣いに気を付けなさい」と当たり前のことを注意されると思いますが、いざ患者さんと対面すると、極度の緊張と慣れない言葉遣いで非常にぎこちなくなってしまうんですね。
そうすると学生たちは「丁寧語で話すと患者さんと親近感が湧かず、信頼関係が保てない」「もっとフレンドリーに対応した方が良い」と誤解してしまう場合があるので、「それはあなたが丁寧な言葉遣いに慣れていないからで、患者さんにとってはそれが普通のコミュニケーションよ」と誤解を解いています。
そういう意味では、学生は日頃から敬語に慣れる必要があると思いますので、例えば教員に対してきちんとした言葉遣いができるように意識してほしいと思っていますし、教員自身にもそういう意識を持って学生に接してもらいたいと思っています。学内で敬語や丁寧語を使い慣れていれば、実習先でも自信をもって患者さんに話しかけられると思うからです。
保健看護学部はとても教員と学生の距離が近く、フレンドリーな大学であると評価されていて、それはとても良いことだと思います。ですが、「親しき仲にも礼儀あり」という言葉や、順天堂大学の学是「仁」のように、「相手に対しての思いやり」を日頃の言葉遣いや、TPOに合わせた適切な対応として自然にできる社会人になって欲しい、そのための訓練の場として、大いに大学と教員を利用してほしいと思います。

富士山を見ながら仕事がしたい!/保健看護学部の学生たち

私は富士山が好きで、「富士山を見ながら仕事ができたら良いな」と思っていたところ、三島に保健看護学部ができると聞いて応募しました。出身は新潟の長岡市です。三島にはめったに雪は降りませんが、長岡は豪雪地帯で、朝起きたらまず雪かきをしないと車が出せません。「雪国の人は辛抱強い」と言われますが、環境がそうさせていますよね。自分で行動しないと雪に埋もれて死んでしまいます!静岡県は温暖ですし、この辺の子たちは雪かきの苦労は知らないで育ちますよね。(笑)

近藤ふさえ先生

保健看護学部の学生は、静岡県出身者が7~8割を占めていますので、静岡県の県民性というか、いかにも静岡県の温暖で豊かな環境の中で育ったような、穏やか、おっとり、マイペース、優しい、真面目、というのが私の印象です。この広々としたキャンパスで富士山を見ながら学んでいますし、学生やキャンパスの雰囲気がのどかでほのぼのとしていると思います。

苦手な人との距離感の取り方を上手に

近藤ふさえ先生

現代の学生の特徴の1つかなと思うのですが、程よい関係性の距離感を保つことが苦手な印象があります。スマホなどのツールの影響もあるのかもしれませんが、べったりと親しくなりすぎたり、一度なにかでこじれると水に流すことができなかったり、関係の修復が難しいという印象があります。

社会に出ると、自分とフィーリングの合わない人はたくさんいますよね、厳しい人もいっぱいいます。そんな社会の中でも組織の一員として、いろいろな個性の人との関係性を巧く保ちながら仕事していかなければならないわけです。だから、「ちょっとフィーリングが合わない」と感じる人とでも、うまく割り切って良好な関係を築けるようになってもらいたいと思います。それこそ看護師という仕事はチームワークが大切な仕事ですから。

「君がいてくれて良かった」と言える教員になりたい

ユーミンのAnniversaryという曲に「かけがえのないあなたの」「かけがえのない私になるの」という一節があるんですが、私は “かけがえのない一人の存在”という言葉がとても好きです。毎日いろいろなことがある中で、学生一人ひとりを“一人の大切な存在”だと思いながら大事にしていきたいと思うんです。
また、そう思うようになったきっかけの1つが『スラムダンク』というマンガです。ゼミの授業で使うこともあるんですが、登場人物の一人、安西先生が私の理想の教師で、生徒への関わり方が非常に素晴らしいんです。
『スラムダンク』をざっと説明すると、不良学生がバスケを通じて成長していく話です。主人公の桜木花道君は中学時代から不良学生でしたが、好きな女の子のためにバスケットボールに興味を持ち、バスケでインターハイにいくストーリーです。安西先生はそんな問題児の彼を温かく見守り、信じて良いところを引き出そうするんです。
それから、中学時代にバスケのスーパーエースだった三井君という登場人物ですが、高校に入ってからの怪我が原因で挫折し不良になるけれど、3年生の時に「やっぱりバスケがしたい」と戻ってくるんです。三井君自身もブランクを感じながら試合に出て、いよいよ限界という時に得意のスリーポイントシュートを決めて倒れます。ベンチに戻った彼に安西先生が「君がいてくれて良かった」と声をかけるんです。その、思いやりというか、生徒を信じる心というか。私も「君がいてくれて良かった」と言える教員になりたいなと思っています。その根本にあるのは“人を信じる”ということかな、と思うんですけれどね。

34年後が楽しみ/一番身近なロールモデルに

長登先生

この3月で4期生が卒業、1クール終わります。これからどうなっていくんでしょうね。何もないところから作り上げていく最初の年は大変でしたけれど、静岡病院のスタッフの皆さんとも意思疎通ができるようになりましたし、あっという間の7年でした。
願わくば3~4年後に、卒業した1~2期生が臨地実習の指導者になっていたり、大学院を修了して教員として戻ってきてくれたりすると良いですね。
実習の指導者や教員がOBだと、学生にとっては最も身近なロールモデルですよね。前任校も新設校で、開学して10年目くらいから徐々に臨地実習の指導者や教員として卒業生が戻ってきて、卒業生も「自分たちの母校を育てていく」という意識が出てきていました。だから保健看護学部もあと何年か後にそうなるかな。その時を楽しみにしているんです!
保健看護学部看護学科 近藤 ふさえ 先生 経歴
 日本医科大学丸子看護専門学校卒業、 神奈川県立看護教育大学校看護教育課程修了
 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療学専攻(博士後期課程)、杏林大学にて博士号(保健学)取得 

看護師として4年半、日本医科大学看護専門学校教員、杏林大学保健学部看護学科を経て、2010年順天堂大学保健看護学部教授就任

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