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国際教養学部国際教養学科

石黒 武人 先生
Vol.03 2016.1

石黒先生

今回は国際教養学部の石黒武人准教授に、専門の「異文化コミュニケーション学」について伺いました。

異文化コミュニケーション学とは

「異文化コミュニケーション学」は日本では1980年代に普及し始めた新しい学問分野です。「英語で外国の方と交流」することが異文化コミュニケーションだと思われがちですが、日本人同士の間にも異文化コミュニケーションは起こり得ます。例えば病院では、医者の説明が患者にスムーズに伝わらないことがあります。これは医者と患者、それぞれの考え方や文化の違いに原因があります。同じようなことは教員と生徒、男女間でも起こります。こういう意思疎通(コミュニケーション)の問題をより多面的に捉えようとするのが「異文化コミュニケーション学」です。

私達の物事の捉え方、思考様式やコミュニケーション様式は歴史・宗教・民族・環境など実に様々なものから影響を受けています。そのため、当然、思考や価値 観といった精神文化やコミュニケーションのとり方といった行動文化に違いが出てくるわけです。したがって、異文化コミュニケーションにおける問題は、ある 文化の「常識」ともう1つの文化の「常識」が違うことで生じる「すれ違い」が原因で発生します。

石黒先生

「異文化コミュニケーション学」は、お互いの立場や考え方 の違いを分析した上で異質な他者とその背景にある文化を理解し、どうすればコミュニケーションにおける問題を解決できるかを考えていく学問です。もともと、現代社会において様々なシーンで生じてきた社会問題や民族間の問題を解決するために生まれた学問なので、これから社会に出ていく学生にとって有益で実践的な学問だと思います。異文化コミュニケーションに関する知識とスキルを身につけ、多種多様な考え方や異なる文化を持つ人々と、粘り強く、建設的に相互理解を進め、一緒に問題を乗り越え、グローバル化した社会で活躍することを目指します。

国際教養学部

国際教養学部それ自体がまさに異文化コミュニケーションの場ですね。医学系の教員もいればスポーツ科学系の教員もいる。理系・文系の教員が混在していて、いろんな意見があります。学生も理系の学生もいれば文系の学生もいるので、それぞれ違った視点から意見が発せられ、それに対する意味の確認が行われ、お互いの視点を自分の中に取り入れていく。結果として学生は多面的な物の見方ができるようになり、物事への対応が柔軟にできるようになったり、相手のことを尊重した上で自分の意見が言えるようになっていきます。

授業風景

2015年4月に開設した国際教養学部の授業風景
ちなみに国際教養学部では、英語・中国語・スペイン語・フランス語などの外国語の授業でも意見の交換に重点を置いた授業を展開しています。その背景には、 国際教養学部には多面的かつ批判的な思考をもって他者と意見を交換し、多様性を尊重しながら共存できる社会を創っていこうという発想を持った教職員が集まっていることがあります。
これまでの話からおわかりのように、国際教養学部では、今まさに求められている「グローバル市民」の養成を目指したカリキュラムが編成されており、また、教員も日々同じ思いを胸に「もっとこういう授業にした方がいいのではないか」などとさらなる高みを目指し議論しており、私自身も働いていてとても面白いです。新しい学部ゆえの難しさもありますが、同時に新しいものが生み出されている勢いがあります。学生には新しく何かが生み出されている状況を感じ取って欲しいと思います。

異文化コミュニケーションから生まれる異文化シナジー

文化と文化が出会うことで問題が起きる場合がある一方で、新たな組み合わせが生じることで何か創造的な物や新しい考え方が生まれることもあります。これを「異文化シナジー(=相乗効果)」と言います。それぞれ違う価値観を持ったA文化とB文化が出会った時に新しいCというものが生まれる。企業では今この仕組みを利用して、商品開発やビジネスモデルなどの構築が行われています。例えば、車のデザインを検討するために中国人、イギリス人、そして日本人が協働する「多文化チーム」を作り、3つの文化の視点からいろんなアイディアが出るようにするんです。こういった「異文化シナジー」も、実は異文化コミュニケーション学の研究テーマのひとつです。異文化コミュニケーションを用いて創造的なアイディアや新しい物を生み出し、より良い社会の実現を目指すこともこの学問のテーマであり、グローバル化が進む今の日本でこれからますます必要になっていく学問なのではないかと思います。

社会で役に立つ「ファシリテーション」授業

私が受け持っている基礎演習(ファシリテーション)の授業では、簡単に言うと「グループ・集団で知的活動を円滑に行い、活性化するための考え方や技法」を学びます。大学においても社会においても、グループやチームで一つの課題に取り組む場面はたくさんあります。グループワークにおいては、構成員同士の価値観やコミュニケーション様式が異なるゆえに上手くいかないことがありますが、ファシリテーションの考え方・技法を身につけると、相手や自分の良いところを引き出す力やアイディアをたくさん出してそれをまとめ問題解決に結びつける力がつくので、結果としてグループワークが上手くいくようになります。

国際教養学部では、この授業科目を1年目に履修します。ファシリテーションの考え方・技法を1年目に修得すると2年目以降の授業が非常に活性化していきますし、グループワークも面白くなっていきます。今盛んに言われているアクティヴ・ラーニングに積極的に参加できるようになります。4年間この実践を繰り返すことで、就職していろんな人と仕事をする時には、学んだことが自然と実践できるようになると思います。

石黒先生

私が学生に伝えていることは、グループワークのプロセスにおいて上手くいかないことがある時こそ、その時に自分が何をできるか考えることが大事だということです。そういう視点をもち、様々な場面で問題が起こった時に解決の一翼を担うことができる人材を育てていきたいと思っています。学生たちが将来社会に出ていけば、外国の方や年齢がかなり上の方と一緒に働く場合もあるでしょう。どんな状況でもお互いが気持ちよく働けるような場を主導的に作っていける人をたくさん輩出できると嬉しいですね。

この授業を始めてまだ6回目ですが、学生が活発かつ主体的に自分達で話を進めていく姿が見られます。ホワイトボードを使って情報を共有しアイディアをまとめ、最後に結論・理由という順番で発表をします。学生たちが堂々と発表している姿を見ると、4年後の卒業時にはどういう人になっているのか、今から非常に楽しみです。企業社会においても地域社会においても多種多様な人たちと共存が必要不可欠な今の時代において、価値観の違う人と意見を擦り合わせていく力は重要なスキルです。ファシリテーションの能力を身につけることで、企業社会や地域社会に貢献できるような人になってほしいと思います。

「グローバル市民」に必要な能力とは

国際教養学部の学生には「常に物事を批判的に見ること」を教えています。当たり前だと思っていることを当たり前と考えずに、「本当にそうかな?」と自分に問いながら物事を深く考えていく、そうすると必然的に物事をいろいろな角度から、多面的に見るようになります。自分の中にある材料とその中で特に自分が大事にしている価値観をちゃんと見定め、自分をよく知り、さらにいろいろな視点や考え方があることを理解した上で自分なりの意見を出していく。このような「主体的思考」がグローバル社会で活躍する上で身に付けるべき素養です。

石黒先生3

日本人の多くは、異なる文化で育った人に対して自分のことを明確に説明する技術が不足しています。日本には「察しの文化」があるため言葉での説明が不要とされがちですが、グローバル社会で活躍できる人になるためには、自分のことを言葉で上手く説明できなければなりません。「この行動の背景にはこのような考え方や事情があるんです」ときちんと説明でき、相手の考え方もちゃんと受け入れて、粘り強く相互理解を図り、相互協力を目指していく、それが今求められている「異文化コミュニケーション」ではないでしょうか。常識を疑い、自分が「当たり前」と思っていることも批判的に見て、自文化をよく知った上で、違う文化を持つ人にきちんと自分の言葉で自文化を説明できる人、これが国際教養学部で大事にしている「グローバル市民」という考え方に含まれています。 

国際教養学部では、多面的かつ主体的に思考し、建設的な異文化コミュニケーションを実践するグローバル市民になりたいと思っている人を待っています。
国際教養学部国際教養学科 石黒 武人 先生 経歴
1996〜1997年ロータリー財団マルチイヤー国際親善奨学生、1999年オレゴン大学大学院修士課程・国際学プログラム修了、2004年立教大学大学院・異文化コミュニケーション研究科修士課程修了、2008年同博士課程修了。
2015年より順天堂大学国際教養学部国際教養学科准教授。

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