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医学部生理学第一講座
 
- Uka Takanori -
 
宇賀 貴紀 先生

 
Vol.10 2016.3

宇賀貴紀先生

今回は医学部生理学第一講座で神経生理学の研究をしている宇賀貴紀先生にインタビューさせていただきました。

研究の道へ

宇賀先生

私は高校では水泳部で平泳ぎを、大学では個人メドレーをやっていました。高校時代、「どうして泳ぐとだんだん上手になるんだろう」、「どうして勉強すると解るようになるんだろう」と思ったり、普段の生活の中で「なぜ判らないことがあるんだろう」と、いろいろと疑問に思うことがありました。こうした疑問が、次第に今の研究分野でもある脳の機能への興味に繋がっていったのだと思います。
また、その時から「将来は研究がしたい」とも思っていたので、講談社ブルーバックス(新書)等で遺伝子のことを読んで、「もっと『人』について知りたい」、「人体にはまだ解っていないことがたくさんある」と思い、医学部に入れば身体の仕組みに関する研究もたくさんあるだろうから、将来はそこで何か研究できればと思って医学部に進学しました。

医学部3年生の時に、脳の研究をしている研究室に出入りするようになりました。最初は研究自体を継続させるのが難しかったのですが、教えて下さった先生が非常に面倒見の良い先生で。抄読会で教科書や論文を読んだり、簡単な研究のお手伝いをさせてもらううちに、「この分野で研究者としてやっていくのも良いな」と思って、脳の研究をスタートさせました。

研究の面白み

学生時代にお手伝いをしていた3つ目くらいの研究で「この結果をまとめれば、学会発表できる」という結果が出た時、「研究とはこういうものなんだ」ということが解りました。その時は自分では論文にしませんでしたが、学生時代の実験2本は論文化されました。研究で「面白い結果が出たな」という時や、論文になった時、そういう成功体験があると「研究をやっていて良かった」という気持ちになりますね。

宇賀先生

私が医学部5、6年生の時、部活の終わった後に同級生たちを研究室に被験者として連れて行き、心理実験のようなものをしていました。実験中に「これは面白い結果が出そうだ」というのが判ったり、実験データで「これは!」というのが出てきたりすると、とても面白くて楽しかったです。さらに実験後のデータの統計解析などをやらせてもらうと、更に面白さがきて。もちろん、研究ではすべてが成功するわけではないので失敗もたくさんしました。なかなかうまく行かない実験もたくさんありましたが、その経験があったからこそ、成功した時の喜びも大きかったのだと思います。

卒業後に大学院に進んで実験をしていましたが、予想外の結果ばかりでなかなか自分の思ったような結果は出ませんでした。でも、自分が予想すらしていなかった結果というのは、自分の考え方がどこか間違っていたということで、必ず意味があるんです。失敗の原因を突き詰めて、正しい真理を追究するのが研究者の醍醐味かもしれないですね。

アメリカ留学

海外の学会に参加すると「アメリカはレベルが違うな」と思うことがよくありました。日本で「このまま残って研究してくれないか」というお誘いも受けましたが、そのころ私は30歳になる前で「今もう少しレベルを高めておかないと、今後60歳過ぎまで研究者として続けていくのは大変だ」と思い、海外留学を決意しました。大学院修了当時はまだ自分の技術に不安があったため、そういう部分を確実に学べる、世界の最先端を目指して留学しました。

私が留学したのはアメリカの中部で、わりとのんびりとした雰囲気でした。研究室にいる時間はもの凄く集中してバリバリ研究しますが、夜は遅くまで行わず、早く帰って家族との時間を大事にする、メリハリのある働き方でした。私はそこで3年半研究していました。

当時、同じ研究室にいた人の中には現在医者として活躍している人もいると思いますし、研究者として元気に活躍している人も多くいます。隣で研究していた人の研究が、私が帰国した後に論文として発表されたことがありました。思い返すと、私が今ほとんど同じような研究をやっています。そういう意味で、似たような研究をしている人がすぐ近くにいて、研究について話したり聞いたりすることができる良い環境だったなと思います。

これからの研究

宇賀先生

医学の研究にもいろいろな分野がありますが、大きく2つに分けると「基礎研究」と「臨床研究」があります。私の専門の神経生理学は「基礎研究」と呼ばれる分野で、脳のどのような働きによって、私達は物を見たり聞いたり考えたりするのかといった、脳の働きについての研究をしています。日々我々が生活する中で脳はとても大きな役割を果たしていますが、その働きについてはまだ解明されていないことが多くあるため、非常に大事な研究分野だと考えています。

これから取り組んでいこうとしている研究内容としては、興味があってやりたい研究はたくさんあるので一言では言えませんが、主に2つあります。1つは「柔軟な判断のメカニズム」の研究です。私達は日々の生活の中でいろいろと判断していますが、同じ状況でも場合によって違う判断をすることもありますよね。下等動物、例えばカエルは視野に入ってきた「動くもの」を捕まえるだけで、反射的に反応しますが、もう少し行動が多様化してくると、選択肢もたくさん出てきて、その中から選択するということになるわけです。「どれを選ぶか」というメカニズムについては少しずつ解ってきていますが、時間とともに変化したり、状況によって左右されたりします。「いつもならこれを選ぶけれど、今日はこの人が見ているからこっちにしておこう」というような柔軟性のある判断の基となっているのが何なのかを調べるのが1つ目です。
もう1つは精神疾患の統合失調症に関する研究で、共同研究をしています。統合失調症には幻覚や妄想、意欲の低下などの症状があって、100人に1人患者がいると言われていますので割と多い病気と言えると思います。現在の治療薬は部分的にしか効かず、全般的に効くような新しい治療薬が必要なので、メカニズムを研究して創薬のスクリーニングをするプロジェクトにも絡んでいます。

教員として/「感覚のメカニズム」を教える

医学部の学生に教えるのは脳の機能の一番基本的な部分で、我々がどのように物を見たり聞いたりしているのかという「感覚のメカニズム」について講義をすることが多いです。大雑把に言うと、我々の脳は感覚を介して「外の世界」を受容して、それに対して環境に作用し直すことで環境に働きかけることができているのですが、その感覚刺激を受容するメカニズム、感覚がどのように、どんな細胞を介して脳に伝えることができているのかということを主に教えています。

医学部の学生は最初に解剖学で身体の構造について学び、どういう風に身体が動くのかという仕組みを学びます。身体や脳の働きについては、色々な要素を組み合わせて理解する必要があり、少し複雑で難しく感じる部分があるので、それをできるだけ学生さんに解り易く講義するように心がけています。

実習の面白さ

2、3年の実習では脳波の測定等をしています。脳波とは「脳が出す電気活動」で、頭皮の上からそれを測定する技術の実習です。臨床でも睡眠の測定、てんかんの診断、脳死の判定をする時などに脳波を使います。実際の臨床の現場では、医師は技師が測定したデータを判読したり、判読されたレポートを読んだりしますが、どのように測定して、それがどういう意味を持つのかということを理解するのは大事なので、脳波の測定の仕方については医学部の教育課程の早い段階で学びます。

実習では学生同士で実際に脳波を測定し、出てきた波形を解析してレポートを提出してもらいます。大体2、3人に1人が被験者になり、頭の何か所かに電極を貼って計測器に繋ぎます。目を閉じるだけで規則正しい波、アルファ波がすぐに波形として出るのですが、それがかなり衝撃的なようで、学生が楽しんで取り組んでいます。これはなかなか体験できることではありませんので体験していただくのが一番だと思います。

大学生になったら研究してみよう

医学のほとんど全てが研究を基にして、現在の治療法や薬がありますので、研究を進めることは非常に大事です。基礎でも臨床でもどちらでも良いので、学生には研究について興味を持ってもらいたいですし、実際に研究に取り組んでもらいたいと思っています。
本学医学部の卒業生の約半数がそのまま大学院医学研究科に進学しています。多くは臨床系ですが、大学院に行くということは研究をして論文を発表するということです。もちろん、順天堂以外の大学院に進学する人もいますので、実際にはかなり多くの人が医学部卒業後に研究をしていると思います。

宇賀先生

大学院で研究するのは良いことですが、できればもっと若い大学生の頃から少しでも研究に携わっておく方が理想的です。学生時代に一通りのプロセスを踏んでおくと、実験で何をすれば良いのかというのがだいたい解った上で本格的な実験が始められますし、大学院に入ってからの進展も速くなり、研究もかなり質の高い良い研究ができます。若い時にしておいた経験は、将来必ず活かされると思います。

本学では医学部1年生から研究に少しでも加わってほしいと考え、そういうシステムを立ち上げています。1年生は1年間さくらキャンパスで寮生活ですが、さくらキャンパスの先生方も研究なさっているので、その先生方の研究を見学させてもらったり、少し手伝わせてもらったりして体験することができます。

2年生からは本郷・お茶の水キャンパスに移りますが、こちらはどこに行けば良いのか悩むくらいたくさんの医学の研究室がありますので、興味のある研究室に入らせてもらい、自分に合った研究を見つけてほしいです。体験してみて合わなければ研究室を変わっても良いと思います。学生のうちにいろんな体験をして、実験して、意欲があれば実験結果をまとめて学会で発表したり、論文も書いたりしてほしいです。順天堂ではそういうことができる体制になっていますので、是非チャレンジしてください!
医学部生理学第一講座 宇賀 貴紀  先生 経歴
1995年 東京大学医学部医学科卒業
1999年 大阪大学大学院医学研究科修了
2000年 米国ワシントン大学(セントルイス)神経生物学科 留学
2009年 順天堂大学医学部生理学第一講座先任准教授(2016年より客員准教授)

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