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免疫学教室における研究の紹介

自己免疫の病態解明と新規治療法の開発

自己免疫の発症には、遺伝要因と環境要因の両者が重要ですが、その詳細についてはあまりわかっていません。自己免疫疾患は、自己の成分に反応するTリンパ球やBリンパ球が活性化されておこる病気と考えられています。私たちは、自己抗原反応性リンパ球にはどのような特徴があるのか、またこれらの細胞はどうして活性化されていくかについて研究しています。また、T細胞やB細胞とい獲得免疫を司る細胞のみならず、自然リンパ球も病態に関与することに注目しています。自然リンパ球とは、自然免疫のエフェクター機能を発揮するリンパ球と捉えられ、Natural Killer (NK) 細胞や、遺伝子再構成を伴う抗原受容体を有しながらも自然免疫担当細胞に類似した抗原認識、迅速な応答様式を持つinvariant NaturalKiller T (iNKT) 細胞、Mucosal Associated Invariant T (MAIT) 細胞などを含み、自然免疫と獲得免疫を橋渡しする重要な役割を果たしています。MAIT細胞は、特に人間の腸や肝臓などの組織に多く存在し、感染症や自己免疫に関与します。抗原としてビタミン合成の中間代謝産物を認識します。私たちはMAIT細胞の機能や抗原について研究し、自己免疫の病態発症との関連、治療法の開発を目指しています。
これまで免疫研究は、マウスなどの動物の解析に重点がおかれてきました。近年、生物製剤の導入により、動物モデルから一歩進んで、実際の疾患についての免疫を解析する重要性が再認識されています。私たちは、11色の多重染色によるフローサイトメトリー解析などを駆使して、多くの臨床系の教室の先生方と共同研究しながら、ヒト免疫学の理解に取り組んでいます。


MAIT細胞の特徴

腸管免疫と中枢神経

先進諸国では感染症の減少とともにアレルギーや自己免疫疾患が増加して問題となっています。その原因の一つとして、寄生虫感染の減少や幼少時の抗生剤の投与、食生活の変化などによる腸内環境の変化が免疫調節に変化をもたらしているのではないかと考えられています。腸は最大の免疫器官であり、生体の半数以上のリンパ球が存在します。数のみでなくIgA産生B細胞、Th17細胞、制御性T細胞、自然リンパ球、樹上細胞、マクロファージなど多種類の免疫細胞が存在しています。また、腸管には、1000種100兆個以上とも推定される細菌が生態系を形成し、感染防御、消化管機能の調節、食事性非消化炭水化物の分解や代謝、ビタミン類の産生及び腸管上皮に必要な栄養素の供給など生体に重要な役割を担うとともに、免疫システムの分化や機能調節にも重要納屋役割を果たしています。近年、特定のT細胞サブセットを誘導する腸内細菌として、Th17細胞を誘導するセグメント細菌や、制御性T細胞を誘導するクロスリジウムやバクテロイデスなどが報告され、さらにそれらの菌の代謝産物や菌体成分がどのように働いているか研究が進むと同時に、様々な疾患を持つ患者さんの腸内細菌の解析が進められ、様々の疾患との関連が注目されています。私たちは、T細胞が重要となる中枢神経炎症の代表的な疾患である多発性硬化症で、実際に腸内細菌叢が変化していることを発見しました。多発性硬化症では、水溶性食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を産生し、制御性T細胞の増殖を促す菌が減少していました。多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスにこれらの減少菌を投与したり、水溶性繊維を多く含む食事や短鎖脂肪酸を投与すると、制御性T細胞の増加とともに病態が抑制されることや、短鎖脂肪酸が脱髄を抑制し、再髄鞘化を促進することもわかってきました。このように、腸内環境の変化や、免疫細胞が、どのように中枢神経の環境に影響を与えるかについて研究をすすめています。


腸内環境と中枢神経

CD4 T細胞の働きをコントロールする補助シグナル分子の研究

CD4 T細胞の活性化にはT細胞抗原レセプター (TCR) による抗原の認識が必要です。この際、T細胞は抗原提示細胞上の主要組織適合抗原複合体 (MHC) クラスII分子に結合した抗原ペプチドを認識します。しかし、CD4 T細胞を活性化するためにはTCRを介した抗原認識シグナル以外に、CD28を代表とする補助シグナル分子による刺激も必要です。この両方のシグナルが伝達されて、はじめてCD4 T細胞は増殖・分化へと導かれます。私達は、これまでにB7-CD28ファミリーやTNF-TNFレセプターファミリーに属する補助シグナル分子の機能解析を通じて、自己免疫疾患やアレルギー疾患におけるこれらの分子の病理的な働きを明らかにしてきました。現在、特にTIMファミリーと呼ばれる分子の働きに注目し、自己免疫疾患や喘息・アレルギー疾患の発症メカニズムの解明や治療を目指した研究を行っています。


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