第26回市民公開講座 質疑応答:講演2

質問内容は、皆様にわかりやすいよう一部内容修正しています

講演2:「思春期・若年成人世代のがんと妊娠 〜将来の妊娠に備えて出来ること〜」

2か月前に乳がんの手術をして今放射線療法をしている。乳がんの場合は、放射線療法で妊孕性が低下することはありませんか。放射線の回数も25回と16回から選べたのですが、放射線の回数によって妊孕性の低下に違いはありますか。

一般的に乳がん治療のうち妊孕性に影響を及ぼすのは薬物療法です。手術の前後に施行される化学療法やホルモン療法により妊孕性の低下や喪失が危惧され、化学療法では薬剤の種類により卵巣毒性が懸念されます。
放射線については、腹部や骨盤部に照射が行われた場合は卵子への影響があり、照射される放射線の量が増えるほど卵巣へのダメージは大きくなります。しかし乳房への照射については一般的には妊孕性への影響はないと考えられます。
乳房温存術後照射後の、照射側乳房からの授乳は照射による組織変化により不可能となる場合もありますが、対側乳房からは安全に授乳ができるとの報告があります。
放射線照射は回数だけでなく照射量も考える必要があり、具体的な回数に関するコメントは控えさせていただきます。

具体的な症例と金銭負担について教えてください。

具体的な症例につきまして、妊孕性温存施設により採卵費用、受精卵凍結費用などが異なります。また誘発方法などによっても大きく異なります。各妊孕性温存施設にお問い合わせください。ご参考までに、2017年にまとめられた若年がん患者に対するがん・生殖医療(妊孕性温存治療)の有効性に関する調査研究の報告書によれば採卵周期当たりの費用は未受精卵子凍結で20万~30万円、卵巣組織凍結で60万~70万円の施設が最も多かったですが、施設によるばらつきが大きいです。受精卵凍結については不妊治療目的の採卵から受精卵凍結にかかる費用の中央値が東京都で約55万円とのデータがありますが、これも誘発方法や施設によりばらつきが大きいです。費用負担については症例により大きく異なりますので、実際の負担が平均とは大きく異なる可能性があります。
経済的負担に対して、厚生労働省の「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」が行われており、43歳未満かつ対象となる方では一回当たり胚凍結35万円、未受精卵子凍結20万円、卵巣組織凍結40万円、精子凍結2.5万円、精子凍結(精巣内精子採取)35万円。(各2回まで)の助成があります。詳しくは妊孕性温存施設にお問い合わせください。

治療の必要はないが、経過観察中の人の妊娠について詳しく教えてください。

がん治療医による、妊娠可能かどうかの判断が最も重要になります。妊娠可能であればがん治療医と生殖専門医、妊娠後は産科医とで連携を計りながら治療を行っていきます。

卵巣を体外に保存する技術はいつ頃一般化されるのでしょうか。

世界では、欧米を中心として約4000例以上もの若年がん患者さんの卵巣組織が凍結保存されている現状があります。日本でも複数の実施可能施設(施設内倫理委員会承認)があります。しかしがんの種類によって卵巣に転移する可能性のあるがんなどは対象になりませんので注意が必要です。
卵巣組織凍結保存可能施設については日本産科婦人科学会のホームページより検索できます。(https://www.jsog.or.jp/facility_program/search_facility.php
(2022年1月アクセス)