てんかん

てんかんとは、慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性に起こる疾患です。発作は突然に起こり、身体症状や意識、運動および感覚の変化などが生じます(てんかん診療ガイドライン2018)。
外来診察時における詳細な問診や、外来脳波検査、頭部MRI検査、終夜ビデオ脳波検査、神経心理検査などを行い、正確なてんかん発作型およびてんかん症候群分類をします。
(詳細は、検査へ)

薬剤抵抗性てんかん

適切な抗てんかん薬を、単剤あるいは2剤併用で試みても、1年以上(もしくは、治療前の最長発作間隔3倍以上の長い方) 発作を抑制できないてんかん、と定義されています。
このような患者さんは、てんかん外科治療の適応があるかを検討することが推奨されています。
また、小児では、将来の発達を促すために、さらに早期の手術が考慮されるべきである、とされています (てんかん診療ガイドライン 2018)。
当てんかんセンターにて主に行なっている手術の詳細は、こちらになります。
当てんかんセンターで扱っている代表的疾患について、説明いたします。

(1) 側頭葉てんかん

複雑部分発作 (現在の呼称は、Focal Impaired Awareness Seizure :FIAS)を特徴とするてんかんになります。前兆として、こみあげるような上腹部不快感や恐怖感が認められることがあります。その後、ある一点を見つめて(一点凝視)、動きが止まったり(動作停止)、無目的に手を動かしたり(手の自動症)、口をペチャペチャと動かしたり(口の自動症)する発作を起こします。これらは、数十秒間から数分間と比較的長時間、持続します。その間に、患者さんは意識がない状態(意識減損)です。さらに、全身性の痙攣(二次性全般化発作)へと移行することがあります。
 
最も多い原因としては、側頭葉の内側にある海馬という部位が硬く変性していること(海馬硬化)が知られています。頭部MRIにて、病変部位を指摘できることがあります(図)。
海馬硬化を伴う側頭葉てんかんでは、外科手術により約80%の発作抑制が得られるため、外科手術が推奨されている代表的なてんかんの一つになります。

1668650218087図:左海馬硬化による側頭葉てんかんを呈した頭部MRI検査
反対側の海馬と比較して、海馬は高信号を呈しており(白くなっている)、萎縮をしている

(2) 限局性皮質異形成

大脳皮質における局所的な発生異常(神経細胞の遊走障害)が原因であり、その発生部位によって、様々なてんかん発作を起こします。病理学的所見によりType IとType IIa/IIbに大きく分類されます。Typeによっては、MRIで病変を捉えることができないこともあります (Type IはMRIで捉えられません。Type IIaは30%程度、Type IIbはほぼ全例で捉えられます)。MRIを始めとする画像検査で病変を捉えることができ、かつ、切除可能な部位に病変が存在している場合には、焦点切除術の適応となります(図)。画像検査で病変が捉えられない場合や、機能的領域の近傍に病変が存在する場合には、 頭蓋内電極留置術の適応を検討することがあります。


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図:限局性皮質異形成 (左: 摘出術前、右: 摘出術後)を認める頭部MRI

(3) スタージウェーバー症候群

脳内の軟膜毛細血管奇形、顔面のポートワイン斑および緑内障(脈絡膜毛細血管奇形)を特徴とする神経皮膚症候群の一つです。50,000〜100,000出生に1人の発症率と推定されており、原因はGNAQ遺伝子のモザイク変異と報告されております(Shirley, 2013 )。
てんかん発作は、約75-90%に認められます。脳内の軟膜毛細血管奇形の分布部位によって、てんかん発作の種類や重症度は異なります。難治に経過した場合、大脳半球の萎縮を認める場合や、精神運動発達遅滞を認める場合には、半球離断術などの外科治療が検討されます。

(4) 結節性硬化症

大脳、皮膚、心臓、肺、腎臓、網膜など多くの臓器に過誤腫性病変が多発する神経皮膚症候群の一つです。6,000-7,000人に一人の発症率とされています。
てんかん発作は、約80-90%程度に認められます。抗てんかん薬に難治に経過する場合には、焦点切除術脳梁離断術、迷走神経刺激療法が検討されます。
当てんかんセンターでは、脳神経外科、小児神経科、脳神経内科、泌尿器科、放射線科、皮膚科、病理・腫瘍学教室が連携して、2016年に、結節性硬化症ボードを設立しております。多臓器にわたる疾患であることから、各科間で円滑な診療を提供できるようにしております。

てんかんと鑑別が必要な疾患

意識を失ってしまう発作には、てんかんと鑑別すべき疾患(神経調節性失神や心因性非てんかん発作、心原性など)があります。
小児科や脳神経内科、循環器内科と連携して、鑑別を行います。