ご挨拶

当科は14名の日本血液学会認定専門医をはじめとした35名の医局員が、質の高い高度な血液内科診療と先進的で活発な研究を両立するために、日々精進しております。
悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・骨髄増殖性腫瘍・造血幹細胞移植・CAR-T療法、それぞれの専門外来を開設しております。また、日本血液学会の研修指定施設、非血縁者間骨髄移植・臍帯血移植の認定施設であり、あらゆる治療法を提供することが可能です。CAR-T療法に関しては、急性白血病、悪性リンパ腫に対する「キムリア」「イエスカルタ」だけでなく、多発性骨髄腫に対する「カービクティ」の認定施設となっております。

スタッフ一同、ご紹介いただいた患者さまに、順天堂医院で診療を受けてよかったと思っていただけるよう、最良の治療を提供したいと常に心がけております。また、先生方に安心してご紹介いただけるよう、医局員一同日々努力を続けていく所存ですのでどうぞよろしくお願い申し上げます。
当院は、高度医療、先進医療を提供する病院として、他の医療機関と相互連携を図り、診療を行う厚生労働省に認定された「特定機能病院」です。受診にあたっては、紹介状(診療情報提供書)が必要です。(前回の受診日から6ヶ月以上経過した方を含む)

患者さんを紹介してくださる先生方へ

血液内科は、急性・慢性白血病、悪性リンパ腫・多発性骨髄腫といった血液腫瘍、再生不良性貧血・溶血性貧血などの貧血症、特発性血小板減少性紫斑病などの血小板減少症、多血症・骨髄線維症などの骨髄増殖性腫瘍、そして血友病などの凝固異常症といった血液疾患の診療を行なっております。 当科では骨髄移植、末梢血幹細胞移植に加え、臍帯血移植も行なっており、あらゆる移植医療を提供することが可能です。 更に当科では、再発難治急性白血病と悪性リンパ腫に対するキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法「キムリア」「イエスカルタ」の治療も可能です。  
急性骨髄性白血病の治療については、標準治療と移植治療のみならず、高齢の患者さんと標準治療に不応性の患者さんも含め、ベネトクラクスとアザシチジン併用療法も積極的に行っております。また、遺伝子パネル検査を自科で行うことにより国際基準の予後予測を行い、移植適応を決める際などに重要な情報として役立てています。 骨髄増殖性腫瘍(真性多血症、本態性血小板血症、骨髄線維症)についても臨床研究で、原因となる3つの遺伝子異常(JAK2, CALR, MPL)を調べることが可能です。

  • 血算やγ-グロブリンの検査値異常
  • 遷延するリンパ節腫脹や脾腫を伴う不明熱
  • 急速に進行する出血傾向

など、血液疾患が疑われる患者さんがいらっしゃいましたら、どうぞ当科外来にご相談ください。
患者さんご自身でご予約いただく場合
先生方にご予約いただく場合
当科では、病理や臨床病理の先生方や検査機関と連携し、最新の技術を駆使して診断に力を入れています。特に悪性リンパ腫は様々なタイプの病型に分類され疾患ごとに治療法が異なります。悪性リンパ腫の中央病理診断を用い、正確な診断をしたうえで、適切な治療を心がけております。
新規分子標的薬の開発も急速に進んでおり、治療の選択肢がますます増えております。その中から最善の治療を選択すべく、最新の報告で示されたエビデンスを参照し、現時点で最も安全で有効と思われる治療法を提供させていただきます。治療を行う際には、治療方法とその効果、合併症、副作用について患者さんやご家族の方にわかりやすく十分お話しいたします。

このように当科では、診断から造血幹細胞移植まで血液疾患のすべての治療を一貫して行うことが可能です。病気の完治を目指せる患者さんには完治を目指した治療を、現時点で完治は難しいと思われる疾患・病態の患者さんにはQOLを重視した治療を、患者さんごとによく相談しながら最善の治療を提供してまいります。

CAR-T療法

CAR-T療法適応患者さんをご紹介いただく先生へ

CAR(キメラ抗原受容体)T療法は、患者さん自身のT細胞にCARを遺伝子導入することにより、T細胞の細胞表面上にがん抗原特異的CARを発現し、発現したCAR分子は標的のがん細胞抗原を認識します。その後、CAR-T細胞内に活性化シグナルが伝達され、細胞傷害性分子(パーフォリン、グランザイムBなど)の放出等により、患者体内のがん細胞に対する細胞傷害活性を発揮します。現在日本で使用できるCAR-T細胞は、患者から採取した末梢血のT細胞にCAR遺伝子を導入し、増幅培養した後、体内に戻せるように製造された製品です。現在、順天堂大学では3種類のCAR-T細胞製品が使用できます。B細胞由来の急性白血病および悪性リンパ腫に対するCD19を標的とした“キムリア”、多発性骨髄腫に発現しているB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とする“カービクティ”、及びキムリア同様に悪性リンパ腫に対するCD19を標的とした”イエスカルタ”です。

キムリア投与対象基準

1. CD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病

再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病。
以下のいずれかであって、CD19抗原を標的としたCAR-T療法の治療歴がない。
  • 初発の患者で標準的な化学療法を2回以上施行したが寛解が得られない場合
  • 再発の患者では化学療法を1回以上施行したが寛解が得られない場合
  • 同種造血幹細胞移植の適応とならない又は同種造血幹細胞移植後に再発した場合  

2. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫。
以下のいずれかの場合であって、CD19抗原を標的としたCAR-T療法の治療歴がない、かつ、自家造血幹細胞移植の適応とならない又は自家造血幹細胞移植後に再発した場合。
  • 初発の場合は化学療法を2回以上、再発の患者では再発後に化学療法を1回以上施行し、化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合
  • 濾胞性リンパ腫が形質転換した場合、通算2回以上の化学療法を施行し、形質転換後には化学療法を1回以上施行したが、形質転換後の化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合

3. 濾胞性リンパ腫

再発又は難治性の濾胞性リンパ腫。
以下の場合であって、CD19 抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない。
  • 初発の患者では全身療法を2回以上、再発の患者では再発後に全身療法を1回以上施行し、全身療法により奏効が得られなかった又は奏効が得られたが再発した場合 
  • イエスカルタ投与対象基準

    1. 以下の再発又は難治性の大細胞型 B 細胞リンパ腫

    びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型 B 細胞リンパ腫、形質転換 濾胞性リンパ腫、高悪性度 B 細胞リンパ腫 ただし、
    CD19 抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現 T 細胞輸注療法の治療歴がない。
          

    カービクティ投与対象基準

    1. 多発性骨髄腫

    このCARが遺伝子導入された「カービクティ」は多発性骨髄腫の腫瘍細胞を強力に攻撃することができ、再発難治性の多発性骨髄腫の患者さんに97%もの寛解を得ることができたと報告されています。

CART治療の流れ

CAR-T療法は、リンパ球採取(アフェレーシス)、ブリッジング治療、リンパ球除去療法、CAR-T輸注、急性期管理などの下記プロセスを患者さんごとに行います。

CAR-T療法の治療プロセス

CAR-T療法の治療プロセス

順天堂大学医学部附属順天堂医院は、「CAR-T療法」の提供可能施設として、豊富な症例経験を有しております。当院では血液内科と細胞療法・輸血学、小児白血病の場合は小児科が連携して、アフェレーシス、ブリッジング、CAR-T輸注(キムリア、イエスカルタ、カービクティ)、急性期管理まで最善の治療計画を立てて、その後の外来経過観察まで含めた最善の治療をご提供いたします。合併症が発現した際には、麻酔科(集中治療室担当)、神経内科、耳鼻咽喉科、循環器内科、呼吸器内科など多くの科と連携して、治療にあたる協力体制を整えております。
安心して大切な患者さんをご紹介いただけるよう、しっかり主治医の先生と連絡を取りながら進めてまいります。

CAR-T療法の適応などの相談、ご紹介は、血液内科の安藤美樹(木曜午後外来)もしくは安藤純(月曜午後外来) のCAR-T相談窓口までご連絡下さい。
連絡先
安藤美樹 m-ando@juntendo.ac.jp(血液内科)
安藤 純 j-ando@juntendo.ac.jp(血液内科/細胞療法・輸血学)
CAR-T療法の適応の患者さんをご紹介いただく際は、下記の対象患者チェックリストを確認のうえ、血液内科外来(TEL:03-3813-3111(代表))もしくは地域医療連携室(Fax: 0120-03-3946 もしくは、E-mail:irenkei@juntendo.ac.jp)よりご予約をお取りいただけますようにお願い致します。
対象患者チェックリスト(患者紹介用フォーム)

診療体制

外来における診療体制について

外来受付は、月曜日から金曜日の午前、午後、土曜日の午前に行っており、紹介の患者さんも常時受け付けております(但し、水曜午後は外来がございませんので、受け付けができません)。外来患者数は、初診が月に約30~50名、再診が約1600~1800名です。
当科では専門外来を設けておりますが、外来の全ての医師があらゆる血液疾患を診療致しますので、気兼ねなくご紹介ください。
患者さんのQOL、ADLを維持するため、外来で施行可能な化学療法や輸血などの支持療法は外来化学療法室や外来処置室にて積極的に行っています。

病棟における診療体制について

入院診療は、グループ体制で行っており、グループ長が主治医となり日々の診療をそのグループに属する担当医とともに複数名で行っています。
入院患者さんについては、悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫を代表とする血液腫瘍の方が最も多く、初回の化学療法は入院で行います。また、原因不明の血球数異常、脾腫、発熱を認め、血液疾患が疑われる場合は、診断の確定や治療方針を決めるため、入院の上数多くの専門的な検査を受けていただくことが必要となります。

当科は非血縁者間骨髄移植・臍帯血移植の認定施設となっており、移植治療については専門性が高いため、専門の移植チームを設けて、治療に当たっております。
これらの患者さんの検査結果、診断、治療方針はグループ内での検討、更には、教授回診や症例検討会で綿密に話し合い、さまざまな医師の意見を取り入れ、慎重に判断するようにしております。

緊急入院が必要な場合のご依頼に際してのお願い

急性白血病が疑われる患者さんや出血傾向をともなう血小板減少症の患者さんなど、ご紹介当日の緊急入院が必要な場合は地域医療連携室を通じてご相談いただければ幸いに存じます。緊急のご用件は病棟医長、あるいは当科救急応答医にご連絡ください。可能な限り迅速に対応いたします。