Behçet病

疾患概念・病態

ベーチェット病は、1937年、トルコの医師ベーチェットにより提唱された疾患である。口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍の4症状を主とし、急性炎症発作を繰り返すことを特徴とする。
まれに多臓器侵襲性(消化管、中枢神経、大血管)の難治性病態をたどることがあるので注意を要する。他の膠原病と違い、特異的自己抗体や免疫学的検査の特徴があまりないため、症状のみで診断に苦慮する場面も多い。

活動期のベーチェット病では急性炎症病変部への好中球中心の細胞浸潤が認められ、好中球の機能亢進が病態形成に関与しているものと考えられている1)。ベーチェット病患者の好中球では遊走能の亢進、活性酸素および炎症性サイトカイン産生能の亢進が認められている。しかし、寛解期にはこの傾向が認められなくなるため、好中球そのものの機能異常ではなく、リンパ球やサイトカインが関与して活性化が惹起されるものと考えられている。当疾患で高頻度に認められるHLA-B51抗原は、好中球の機能制御に関与している可能性が示唆されている2)。
ベーチェット病の20~50%はHLA-B51抗原陰性であり、これ以外の疾患感受性遺伝子が関与している可能性もある。近年では、ICAM-1、Factor V、eNOS、IL10遺伝子およびIL23R、またはIL23RB2遺伝子が関与している可能性が指摘されている。

疫学

2014年時点での特定疾患医療受給者数は20,035人である。男女差はほとんどなく、30歳代に発症のピークがある。
ぶどう膜炎の原因疾患として第1位であったが、現在その頻度は減少し、サルコイドーシス、原田氏病に次ぐものとなっている。地域的な分布をみると、世界的には地中海沿岸から中近東、東アジアに至る北緯30~45度付近のシルクロードに沿った帯状の地域に偏っており、日本では北高南低の分布を示す。
4つの主症状がすべてそろった完全型ベーチェット病が占める割合は疫学調査開始のころは50%弱であったが、近年では30%弱と減少傾向が認められる。また、眼病変は男性に多く、陰部潰瘍は女性に多い傾向がある。

診断・鑑別診断

ベーチェット病に特異的な自己抗体はいまのところはっきりせず、検査所見のみで診断に至るのは難しい。参考となる検査所見としては、
 
  1. 末梢白血球数の増加や血清CRP値の上昇、赤沈亢進などの炎症所見
  2. 免疫グロブリンの増加(特にIgDの増加が特徴的とされる)
  3. 血清補体価の上昇
  4. HLA-B51陽性
  5. 皮膚の針反応

などが挙げられるが、あくまでも参考所見である。
下記の主症状や副症状などがそろい、診断基準(表1)に準じて診断を行う。厚生労働省が提示した鑑別診断も参考とする(表2)。また、参考のためにベーチェット病の国際診断基準を示す(表3)。

表1:ベーチェット病の臨床診断基準

1.主要項目

  1. 主症状
    ①口腔粘膜のアフタ性潰瘍
    ②皮膚症状
    (a)結節性紅斑、(b)皮化の血栓性静脈炎、(c)毛嚢炎様皮疹、(d)座創様皮疹
     参考所見:皮膚の被刺激性亢進
    ③眼症状
    (a)虹彩毛様体炎、(b)網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)、(c)以下の所見があれば(a)(b)に準じる
    (a)(b)を経過したと思われる虹彩後癒着、水晶体上皮色素沈着、網脈絡膜萎縮、視神経萎縮、併発白内障、続発緑内障、眼球癆
    ④外陰部潰瘍
  2. 副症状
    ①変形や硬直を伴わない関節炎
    ②副睾丸炎
    ③回盲部潰瘍で代表される消化管病変
    ④血管病変
    ⑤中等度以上の中枢神経病変
  3. 病型診断の基準
    ①完全型
    経過中に4主症状が出現したもの
    ②不全型
     (a)経過中に3主症状、あるいは2主症状と2副症状が出現したもの
     (b)経過中に典型的眼症状とその他の1主症状、あるいは2副症状が出現したもの
    ③疑い
    主症状の一部が出没するが、不全型の条件を満たさないもの、および定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの
    ④特殊病型
     (a)腸管(型)ベーチェット病:腹痛、潜血反応の有無を確認する
     (b)血管(型)ベーチェット病:大動脈、小動脈、大小静脈障害の別を確認する
     (c)神経(型)ベーチェット病:頭痛、麻痺、脳脊髄症型、精神症状などの有無を確認する

表2:鑑別診断

  1. ベーチェット病の主症状の一つをもつ疾患
    口腔粘膜症状:慢性再発性アフタ症、Lipschutz陰部潰瘍
    皮膚症状:化膿性毛嚢炎、尋常性挫創、遊走性血栓性静脈炎、単発性血栓性静脈炎、Sweet病
    眼症状:転移性眼内炎、敗血症性網膜炎、レプトスピローシス、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、中心性網膜炎、青年再発性網膜硝子体出血、網膜静脈血栓症
  2. ベーチェット病の主症状および副症状とまぎらわしい疾患
    口腔粘膜症状:ヘルペス口唇・口内炎、単純ヘルペス2型感染症(陰部)
    結節性紅斑様皮疹:結節性紅斑、バザン硬結性紅斑、サルコイドーシス、Sweet病
    関節炎症状:関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症などの膠原病、痛風、乾癬性関節炎
    消化器症状:急性虫垂炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎
    副睾丸炎:結核
    血管系症状:高安動脈炎、バージャー病、動脈硬化性動脈瘤、深部静脈血栓症
    中枢神経症状:髄膜・脳・脊髄炎、全身性エリテマトーデス、脳・脊髄腫瘍、血管障害、梅毒、多発性硬化症、精神疾患、サルコイドーシス

表3:ベーチェット病の国際診断基準

  1. ベーチェット病の主症状の一つをもつ疾患
    口腔粘膜症状:慢性再発性アフタ症、Lipschutz陰部潰瘍
    皮膚症状:化膿性毛嚢炎、尋常性挫創、遊走性血栓性静脈炎、単発性血栓性静脈炎、Sweet病
    眼症状:転移性眼内炎、敗血症性網膜炎、レプトスピローシス、サルコイドーシス、強直性脊椎炎、中心性網膜炎、青年再発性網膜硝子体出血、網膜静脈血栓症
  2. ベーチェット病の主症状および副症状とまぎらわしい疾患
  3. 再発性口腔潰瘍形成 医師または患者の観察による小アフタ性、大アフタ性、またはヘルペス状の潰瘍形成が12ヶ月間に少なくとも3度出没すること  再発性口腔内潰瘍形成があり、さらに次の②~⑤の4項目のうち2項目が存在するときに、その患者はベーチェット病であるといえる。
  4. 再発性外陰部潰瘍形成
    医師または患者の観察によるアフタ性潰瘍形成、または瘢痕形成
  5. 眼病変
    前部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎、または細隙灯顕微鏡検査で硝子体内に細胞の証明あるいは眼科医の観察による網膜血管炎
  6. 皮膚病変
    医師または患者の観察による結節性紅斑、毛嚢炎様皮疹または丘膿疹病変あるいは副腎皮質ステロイド治療を行っていない思春期以後の患者で、医師により観察される痤瘡様結節
  7. パサジーテスト(針反応)陽性
    24~48時間後に医師により観察されたもの

注意)これらの項目は他疾患を除外できたときのみ適用とする。

臨床症状

主症状

  1. 口腔粘膜のアフタ性潰瘍
    境界鮮明な浅い有痛性潰瘍で、口唇粘膜、頬粘膜、舌、さらに歯肉などの口腔粘膜に出現する。黄白色の偽膜で覆われることがある。ほぼ必発で初発症状のことが多い。個々の潰瘍はそのほとんどが10日以内に瘢痕を残さずに治癒するが、再発を繰り返すことが多い。
  2. 皮膚症状
    下腿に後発する発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。結節性紅斑は拡大、自壊し難治性潰瘍を来たすことがある。
    皮膚の被刺激性亢進を反映する所見として針反応が認められ、24~48時間の経過で出現することもあり、採血などの静脈穿刺により皮膚潰瘍、膿瘍形成、血栓性静脈炎などを誘発することがある。日常生活においては、虫さされの跡が大きく腫れ上がったり、剃刀まけなどが生じやすくなる。
  3. 眼症状
    男性の7割前後にみられるが、女性では5割弱にとどまる。ぶどう膜炎が主体で、約90%が両眼性に発症する3)。炎症が前眼部のみに起こる虹彩毛様体炎型と、後眼部に及ぶ網膜ぶどう膜炎型(眼底型)がある。発作性に結膜充血、眼痛、視力低下、視野障害、飛蚊症などの症状を来たす。再発性前房蓄膿性虹彩炎は、ベーチェット病に特徴的な所見である。
    若年発症の男性、HLA-B51陽性患者で重篤化しやすいとされる。また、経過中に繰り返す炎症やステロイド療法による二次的な白内障、緑内障を併発することもある。
  4. 外陰部潰瘍
    男性では4割前後、女性では6割前後に認められる。有痛性の境界明瞭なアフタ性潰瘍で、男性では陰嚢や陰茎、女性では大小陰唇に好発する。外見は口腔アフタ性潰瘍に類似するが、口内炎ほどの反復はなく、瘢痕を残すことがある。女性の場合は性周期に一致して増悪することがある。
  5. 副症状

  6. 関節炎
     小関節よりも大関節に多くみられ、腫脹、疼痛、発赤を伴う。変形や硬直を認めることはない。
  7. 副睾丸炎
     一過性、再発性の睾丸部の腫脹、圧痛を認める。3~4週間の経過で消退する。
  8. 消化器病変
     15~20%前後にみられ、腹痛、下痢、下血などを主症状とする。食道から直腸に至るまでいずれの場所にも来しうるが、好発部位は回盲部末端から盲腸である。下掘れ型(punched-out type)潰瘍性病変を特徴とし、多発することが多い。クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患との鑑別が重要になる。まれに腸管穿孔を伴い、外科的治療を要することもある。
  9. 血管病変
     中型から大型の動脈に血栓性閉塞や動脈瘤を来たすことがある。静脈病変として深部静脈血栓症の併発もありえる。
  10. 中枢神経病変
     髄膜炎、脳幹脳炎などの急性型と、片麻痺、小脳症状、錐体路症状など神経症に認知症などの精神症状を来たす慢性進行型に大別される。診断には髄液検査が必要であり、急性型では細胞数が6.2/mm3以上、慢性進行型ではIL−6が17pg/ml以上の増加が認められる。画像所見としては、急性型、慢性進行型ともに、頭部MRIで脳幹部、大脳皮質などのT2強調像/FLAIR像で高信号を呈する病変を認めることがある。しかし、これらの画像所見に関しては、無症候性中枢神経病変であることも多く、病的意義は必ずしも伴わない。一方で脳幹の萎縮に関しては慢性進行型に特徴的な所見であり、診断に有用である。

検査所見

前述のとおり、ベーチェット病に特異的な検査所見はなく、特徴的な臨床症状の組み合わせにより診断される。血液検査では白血球増多(好中球)、赤血球沈降速度の亢進、CRPなど炎症反応の上昇、血清γグロブリンの相対的高値、免疫グロブリン(IgG、IgA、IgD)の上昇、血清補体価高値、HLA-B51陽性などが参考所見となる。
皮膚の針反応は、滅菌した注射針の刺入により、皮膚の過敏反応として発赤、硬結、小膿胞形成を来たすもので、22~18Gの針を用い、48時間後に判定する。問診で、血液検査後反応の既往を確認することが参考となる。
また、口腔内連鎖球菌に強い過敏反応を起こすことが知られ、連鎖球菌死菌抗原を用いたプリックテストによって20~40時間後に強い紅斑を認める。
結節性紅斑などの皮疹部の病理では、細菌やウイルスは検出されず、好中球浸潤を主体とした非特異的な炎症像を示す。リンパ球主体の小静脈病変を伴うこともある。

治療

眼症状

虹彩毛様体炎など前眼部に病変がとどまる場合は、発作時にステロイド点眼薬と虹彩癒着防止のための散瞳薬が用いられる。視力予後に直接関わる脈絡網膜炎では、急性眼底発作時に副腎皮質ステロイドのテノン嚢下注射あるいは全身投与を行う。
発作の抑制としては、コルヒチン0.5~1.5mg/日の内服投与を行う。コルヒチンは白血球の遊走能を抑える作用をもち、約60%の症例に奏功するといわれている4)。副作用としては軟便や下痢を生じる事が多いが、一週間前後で軽快することが多い。低頻度であるが催奇形性があるため、男女ともに避妊を要する。肝障害や横紋筋融解症の報告もあり、定期的な血液検査による経過観察が望ましい。
コルヒチン抵抗例で、視機能低下リスクが低い症例では、シクロスポリンやアザチオプリンなどの免疫抑制剤を併用する。視機能低下リスクが高い症例、あるいはコルヒチンと免疫抑制薬で効果不十分な症例では、TNFα阻害薬であるインフリキシマブやアダリムマブを使用する。
副腎皮質ステロイドの全身投与に関しては、TNFα阻害薬の導入が困難である場合に併用薬として、追加を考慮するが、眼発作予防に対する効果に関しては限定的であり、副作用の観点からも、他の治療法が困難な場合に限定される。
また、炎症性腸疾患などに用いられる顆粒球除去療法に関しても有効性の報告があり、多剤抵抗例、副作用発現例では有効な手段と考えられる5)。
硝子体出血、網膜上膜、黄斑円孔、網膜はく離などが発症した場合には、硝子体手術が必要なことがある。術後の眼炎症発作が誘発される可能性があり、急性期を避け、半年以上発作がみられない期間に手術をすることが推奨されている。併発白内障に対する手術の際も、同様の注意が必要である。

皮膚粘膜症状

皮膚粘膜病変に対しては、軽症であれば、ステロイド外用薬を使用する。症状が中等症から重症であれば、全身療法として、コルヒチン内服や、症状に応じて、副腎皮質ステロイド全身投与を検討する。近年口腔内アフタ性潰瘍に対しては、アプレミラストの有効性が報告され、2019年9月より局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍に対して、適応が承認されている。6)
また難治性の皮膚粘膜病変に対しては、TNFα阻害薬が選択肢の一つとして挙げられる。しかし現時点では腸管・神経・血管病変・眼発作を伴う場合に対してしか保険適応がないことから、その適応を慎重に考慮する必要がある。

関節炎

関節炎の急性期には対症的には非ステロイド系抗炎症薬を用い、鎮痛効果が弱い場合にはステロイドの少量内服投与を行う場合もある。発作予防に対してはコルヒチンが有効であるとされている。不十分である場合は、アザチオプリンやメトトレキサートなどの免疫抑制剤を併用する。これらの免疫抑制剤を併用しても、効果不十分であり、副腎皮質ステロイドを減量できない場合には、皮膚粘膜病変と同様に保険適応はないが、TNFα製剤の追加を慎重に検討する。

血管病変

血管病変は、動脈瘤・動脈閉塞などの動脈病変と、深部静脈血栓症などの静脈病変とに分類される。動脈病変に対しては、中等量~高用量の副腎皮質ステロイド全身投与と、シクロフォスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制薬の併用を主体とする。静脈病変に関しては、下肢深部静脈血栓症の場合、中等量の副腎皮質ステロイド全身投与とアザチオプリンを併用するプロトコールなどがあり、他の免疫抑制薬として、メトトレキサートやシクロフォスファミドなどが使用される。効果不十分な場合やバッド・キアリ症候群などの重症例では高用量の副腎皮質ステロイド(必要に応じて、ステロイドパルス療法を併用)を用いる。また静脈病変を有する症例では、出血リスクが高く、深部静脈血栓症を併発することが多い肺動脈瘤が除外できれば、抗凝固薬として、ワルファリンの内服を追加してもよい。ただしXa阻害薬や直接経口抗凝固薬(DOAC)に関してはベーチェット病での使用経験は限られており、それらの使用を考慮する場合は十分な検討が必要である。難治例においては、動脈病変、静脈病変共に、TNFα阻害薬(保険適応:インフリキシマブ)の使用を考慮する。

腸管病変

病変の重症度に応じて、治療内容を検討する。軽症例ではサラゾスルファピリジンなどの5--ASA製剤を使用し、無効例や中等症以上の症例では、中等量~高用量の副腎皮質ステロイド全身投与を行い、ステロイド抵抗例や、腸管穿孔が懸念されるなどステロイド投与を回避せざるを得ない症例では、TNFα阻害薬(インフリキシマブおよびアダリムマブ)を投与する。それらの加療に対し無効もしくは効果不十分である場合はアザチオプリンの併用を行う。またメトトレキサートも選択肢として挙がるが、単独での使用効果は不明である。
食事療法に関しては、十分なエビデンスは乏しいものの、成分栄養剤を用いた経腸栄養療法の有効性が報告されている。ただし筋層の露出した巨大潰瘍・高度狭窄・出血・穿孔の危険性があるものなど重症度が高い症例においては、絶食の上、中心静脈栄養管理が必要となる。

中枢神経病変

病態として、発熱・頭痛・片麻痺や脳神経麻痺などの局所神経症状を呈する急性型と精神症状・人格変化・体幹失調などを呈する慢性進行型とに分かれ、それぞれ治療法が異なる。
急性型の場合には、まず中等量以上の副腎皮質ステロイドの全身投与を行い、効果不十分な場合はステロイドパルスを含む大量投与を行う。あるいはTNFα阻害薬として、インフリキシマブの併用を考慮する。発作予防としては、コルヒチンの有効性が報告されており、少なくとも5年間は継続することが望ましいと考えられている。メトトレキサート、シクロフォスファミド、アザチオプリンは急性期の治療や発作の予防に有効であることを示すエビデンスはなく、使用は限定的である。またシクロスポリンに関しては眼発作の抑制には有用であるが、同薬剤により、急性型神経ベーチェット病の発作が誘発されうる為、急性型神経ベーチェット病においては、内服中止するべきである。
慢性進行型では、まずメトトレキサートを最大で16mg/週まで使用する。神経症状の改善が乏しく、脳脊髄液IL−6が17pg/ml以下にならない場合は速やかにインフリキシマブを導入する。  

予後

眼症状や特殊病型が無い場合は、慢性的に繰り返し症状が出現するものの、一般的に予後は悪くない。眼病変は、特に眼底型の網膜ぶどう膜炎の視力予後が不良であり、かつては症状発現後2年で視力0.1以下になる可能性が約40%とされていたが、インフリキシマブが使用されるようになり、大きく改善している。消化管病変、血管病変、中枢神経病変などの特殊型ベーチェット病に対しても、TNFα阻害薬が保険適応となり、今後治療成績の向上が期待される。  

参考文献

  1. Carletto A, Pacor ML, Biasi D, et al: Changes of neutrophil migration without modification of in vitro metabolism and adhesion in Behçet's disease. J Rheumatol 24: 1332-1336, 1997
  2. Takeno M, Kariyone A, Yamashita N, et al: Excessive function of peripheral blood neutrophils from patients with Behçet's disease from HLA-B51 transgenic mice. Arthritis Rheum 38: 426-433, 1995
  3. Mishima S, Masuda K, Izawa Y, et al: Behçet's Disease in Japan: ophthalmologic aspects. Trans Am Ophthalmol Soc 77: 255-279, 1979
  4. Matsumura N, Mizushima Y: Leucocyte movement and colchicine treatment in Behçet's disease. Lancet 2: 813, 1975
  5. Namba K, Sonoda KH, Kitami H, et al: Granulosytapheresis in patients with refractory ocular Behçet's disease. J Clin Apher 21: 121-128, 2006
  6. Hatemi G,et al.:Apremilast for Behcet`s syndrome:Abstract from EULAR Annual European Congress of Rheumatology,2018
  7. 水木伸久ら,ほか:ベーチェット病診療ガイドライン2020.厚生労働省 難治性疾患政策研究事業 ベーチェット病に関する調査研究班

更新日:2020年7月27日