巨細胞性動脈炎

疾患概念・病態

巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)は膠原病に分類される疾患で、主に大型から中型の動脈に巨細胞の浸潤を呈し肉芽腫を形成する動脈炎で、しばしば側頭動脈に病変を認める。血液検査ではC-reactive protein(CRP)や血沈(erythrocyte sedimentation rate :ESR)の上昇を伴うが、rheumatoid factor(RF)を始めとした自己抗体は検出されないことが特徴である。本疾患は高齢者に好発し、視力の著しい低下や脳卒中を招くことがあり、治療として高用量のステロイドや免疫抑制薬を必要とすることが多い。

疫学

GCAは高齢者に多くみられる原因不明の自己免疫を機序とした動脈を首座とする血管炎で、その好発部位から従来は側頭動脈炎として知られていた疾患である。本邦においてはリウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica :PMR)の5-30%に併発し、主に50歳以上の高齢女性に多く見られる。血管炎による血管内腔の狭窄や閉塞による虚血性視神経症により、約20%が視力の完全又は部分性の消失を来す1)

診断・鑑別診断

実臨床においては1990年のアメリカリウマチ学会 (American college of rheumatology:ACR)による分類基準が用いられることが多く、他疾患との鑑別が重要とされており、動脈の生検による評価も一項目として採用されている(表1)。

臨床症状

頭痛(側頭部痛など)、側頭動脈の怒張、視力低下や視野障害、顎跛行(食事中に顎が疲れる)、発熱、体重減少、多関節痛(PMRを合併する場合)などを認める。 ただし、臨床症状は上記を全て満たす場合は少なく、初発症状や症状の推移は様々である。
GCAの病態は、画像診断において、大きく頭頸部病変(Cranial Type :C-GCA)と大血管病変(Large Vessel Type :LV-GCA)に分類され、両方を有する病態も有る。C-GCAに失明症例が多く、LV-GCAに動脈瘤を認めやすく、LV-GCAは再燃しやすくステロイド総投与量が多くなる傾向が有る。

検査所見

GCAの血液検査所見は、CRPやESRの上昇を認めるが、各種自己抗体が陰性であることが特徴である。
これまで、GCAの診断に側頭動脈生検が第一選択であり、画像による診断は補助的に行われてきた。しかし、生検は侵襲性が高く、診断に時間を要し、偽陰性が多いという欠点がある。またPET/CTの有用性も報告されており、本検査は非侵襲的であるが、近年までは、専門施設でないと施行できず適応も限られていた。しかし、2018年4月の改訂で高安動脈炎または巨細胞性動脈炎と診断された患者さんを対象とした場合に限り保険適用として認められた。
2018ヨーロッパリウマチ学会(EULAR) recommendationsでは、血管エコーを第一に選択して、次に、その他の画像検査を施行し、可能な限り、生検を施行しない診断法が提唱されている2)。しかし、実臨床に於いて、GCAの診断法は施設間で差が大きく統一性がないのが現状で、未だ多くの施設で生検が主な診断法の位置付けとしてある。血管エコーは、側頭動脈の血管径が細く、解剖学的にも個人差があることから、施行者間の技術差が出やすい欠点がある。一方で、侵襲性が低く、診断のみならず治療効果判定にも有用であるという利点が考えられる。
当院で実施したGCA患者の血管エコー所見を図1に示す。

治療

巨細胞性動脈炎の重症度分類を表2に示す。本疾患の確定診断を得た場合には早急な治療を要する。現在最も有用な治療としてステロイドが用いられるが、ステロイド抵抗性の症例、ステロイドの漸減に伴い再燃する症例においては、免疫抑制薬や生物学的製剤の併用を要し、メトトレキサート (methotrexate: MTX)、トシリズマブ (抗IL-6受容体抗体)、アバタセプト(CTLA4-Ig)の有用性が示されている。MTX投与はステロイド減量や再燃を予防する効果を認める3)。 過去の複数の臨床試験において、ステロイド単独投与に比べてトシリズマブ投与により、寛解維持率は高く、寛解維持期間は長い結果が示された。寛解症例において、トシリズマブを投与中止して寛解維持できるかなど、投与方法に関しての課題は残っている4),5)。 アバタセプト投与によりステロイドを減量する効果が示されているが、今後の臨床試験の結果が待たれ、現状の実臨床では投与症例は限られている6)
虚血性視神経炎を認める症例に対してステロイドパルス療法施行が失明予防に有用であるが、それ以外では通常のステロイド治療より優れるかは定かでない。失明や一過性脳虚血発作、脳梗塞などを発症しやすいので、低容量アスピリンの併用が推奨される7)

予後

多くのGCA患者はステロイド治療に奏功し、寛解に至る。一方で、ステロイド減量に伴う再燃率は高く、MTXなどの免疫抑制剤やトシリズマブなどの生物学的製剤の併用投与により、再燃率の低下が認められている。
GCAに伴う重篤な合併症として、失明や脳卒中がある。これらの合併症を防ぐためにも、早期のGCA診断の必要性が問われている。

文献

  1. Cornelia M.et al, Giant-Cell Arteritis and Polymyalgia Rheumatica. N Engl J Med. 2014; 371(1):50-57
  2. Christian Dejaco et al. EULAR recommendations for the use of imaging in large vessel vasculitis in clinical practice. Ann Rheum Dis. 2018;0:1-8
  3. Mahr et al. Arthritis Rheum 2007;56:2789
  4. Villiger PM et al. Lancet 2016;387:1921-7
  5. Stone et al. NEJM 2017;377:317
  6. Langford et al. Arthritis Rheum 2017;69:837
  7. Lee et al. Arthritis Rheum 2006;54:3006

表1

巨細胞性動脈炎の分類基準(1990年、ACR)

  1. 発症年齢が50歳以上
  2. 新たに起こった頭痛
  3. 側頭動脈の異常
  4. 赤沈の亢進
  5. 動脈生検組織の異常

分類目的には、5項目中少なくても3項目を満たす必要がある。

表2

I度 :
・巨細胞性動脈炎と診断されるが視力障害がなく、特に治療を 加える必要もなく経過観察あるいはステロイド剤を除く治療で 経過観察が可能。

II度:
・巨細胞性動脈炎と診断されるが視力障害がなく、ステロイド を含む内科療法にて軽快あるいは経過観察が可能である。

III度:
・視力障害が存在する(V度には当てはまらない)、又は大動脈瘤 あるいは大動脈弁閉鎖不全症が存在するがステロイドを含む内科治療 で経過観察が可能である。
・下肢又は上肢の虚血性病変が存在するが内科治療で経過観察が可能 である。

IV度:
・ステロイドを含む内科治療を行うも、視力障害(V度には 当てはまらない)、大動脈瘤、大動脈弁閉鎖不全症、下肢・ 上肢の虚血性病変など巨細胞性動脈炎に起因する症状の再燃を 繰り返し、薬剤の増量又は変更や追加が必要であるもの。

V度:
・視野障害・失明(両眼の視力の和が0.12 以下又は両眼の 視野がそれぞれ10 度以内のものをいう)に至ったもの。
・下肢又は上肢の虚血性病変のため壊疽になり、血行再建術 若しくは切断が必要なもの、又は行ったもの。
・本疾患による胸部・腹部大動脈瘤、大動脈閉鎖不全症が存在 し、外科的手術が必要なもの又は外科治療を行ったもの。

図1

上側がGCA患者のステロイド治療前の側頭動脈の縦断像で、下側が横断像でGCAに特徴的な所見であるhalo sign が認められている。

更新日:2020年8月4日