混合性結合組織病mixed connective tissue disease, MCTD

概念

混合性結合組織病(mixed connective tissue disease: MCTD)は、全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus: SLE)、強皮症 (systemic sclerosis: SSc)および多発性筋炎 (polymyositis: PM)の一部に類似した症状を有し、その血清からは抗U1-ribonucleoprotein(U1-RNP)抗体が検出される疾患として、1972年に米国のSharpらにより報告された1)。臨床的には手指の腫脹やレイノー現象を呈し、難治性の腎症や脳症が併発せず、抗Sm抗体は陰性でステロイドに対する治療反応性が良好であることを特徴とする。MCTDは現在の欧米においてはSScの一亜型または他の膠原病との重複、もしくは未分化結合組織病(undifferentiated connective tissue disease: UCTD)と認識される傾向にある。しかし本疾患は抗U1-RNP抗体に関連してレイノー現象や手指の腫脹が出現し、肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)の合併が他の膠原病に比し高率に見られることや、三叉神経に病変を呈するなど、典型的なSLEやSSc、PMなどとは異なる特徴的な臨床像を示すことが多い。したがって本邦では一つの疾患単位としてとらえることが妥当とされ、指定難病医療費助成制度の対象疾患の一つに独立した疾患として指定されている。

疫学

本疾患の有病率は人口10万に対し9人前後で、厚生労働省の行っている臨床調査個人票を基にした集計では、2015年には約11,000人がMCTDと認定されている。男女比は約1:13から16程度と女性に多く見られ、好発年齢は30歳台から40歳台にピークが認められるが、小児や高齢での発症例も散見される。

診断

本邦では厚生労働省混合性結合組織病研究班によって提唱および改訂された診断基準が広く用いられている。表1に示したように本診断基準は3つの大きなカテゴリーに分類されており、2004年の改定で共通所見にレイノー現象および指ないし手背の腫脹に加え、肺高血圧症(pulmonary hypertension: PH)が追加された。免疫学的所見として抗U1-RNP抗体の存在は必須項目であるが、本抗体はMCTDに特異的ではなくSLEやSScを始めとした他の膠原病からも検出される。したがって本抗体が陽性のみではMCTDと診断できない点に留意する必要がある。さらに本診断基準にはSLEに特異性の高い抗二本鎖DNA抗体や抗Sm抗体、SSc患者から特異的に検出される抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)、PM患者で見られる抗Jo-1抗体が検出される症例では診断を慎重に行う必要性があることが付記されている。混合所見の項目としてSLE様所見やSSc様所見、PM様所見が挙げられているが、本診断基準ではSLEやPM、SScなどのオーバーラップ症候群もMCTDとして分類されうるため、患者の病態を確実に把握し、実際の臨床症状に即した適切な対応を行うことが重要である 2)3)。

症状と治療

1.レイノー現象

レイノー現象は、冷水や低下した外気温などの寒冷刺激により、主に手指の小動脈が一過性の攣縮を起こし、同部位の血流低下を来す現象である。発作時は虚血により蒼白色を呈し、次いで暗紫色、その後は血管の拡張による血液の再環流で赤色を示す三相性の色調変化となることが特徴である。発作部位の境界は明瞭であり、冷感やしびれ、疼痛を伴うこともある。SScでは高度な血流不全から皮膚潰瘍や壊疽に至る重症例も見られるが、MCTDでは稀である。レイノー現象は寒冷暴露以外に精神的な緊張やストレスが誘因となることも知られており、MCTDの初発症状としても高率である。受診時には発作が見られないこともあり、発作時の画像所見や冷水負荷による指尖容積脈波、サーモグラフィーなどが診断の補助となる。予防として重要なことは、寒冷および極端な温度差への暴露、精神的なストレスを可能な限り避けることである。薬物療法としてはカルシウム拮抗薬やアンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、プロスタグランジン製剤、セロトニン受容体拮抗薬などの血管拡張薬が使用される。薬物療法以外では交感神経ブロックなどが考慮されることもある4)5)。


2.指ないし手背の腫脹

手指の腫脹はレイノー現象とともに発症早期から出現することが多い。腫脹により手指から手背の皺が減少し、手のこわばりや指輪が抜けにくいなどの症状を訴えることもある。SScでは手指から始まる腫脹は四肢および体幹の皮膚硬化へと進展し、指尖潰瘍や指尖の陥凹性瘢痕などを示すことが多いが、MCTDでは硬化には至らず、特徴的な腫脹が長期に持続する例がほとんどである。


3.PH

PHは肺動脈圧が上昇する疾患の総称で、自然経過では右心への負荷から心不全を招く極めて予後不良な疾患である。PHは様々な要因で発症するが、肺動脈自体の攣縮および狭窄が原因となるPHは、PAHとしてニース分類のI群に位置付けられている(表2)。PAHは基礎疾患がなくとも発症しうるが、膠原病患者でのその頻度は高率で、特にMCTDおよびSScでは顕著である。ニースの分類において膠原病に併発したPAHは1群に分類されているが、第3群に分類される肺疾患や低酸素血症を原因としたPHや、第4群の肺動脈の閉塞を原因としたPHなどの病態が混在する症例も多く存在する。さらにI群と判断されても肺静脈閉塞症(pulmonary veno-occlusive disease: PVOD)が主たる病態であることも低頻度ながら存在し、これらの症例に漫然と肺血管拡張薬を使用すると病態の急激な悪化を招くこともあるため、診断および治療法の選択には慎重な検討を要する。
PAHの確定診断には右心カテーテル検査が必須であり、本検査により肺動脈圧のみならず肺血管抵抗やその他の循環動態が明確となる。しかし侵襲度などの観点から全例に無作為に行うことは現実的ではないため、右心カテーテルの適応となる症例を的確に選択する必要がある。PAHのスクリーニングに有用な方法としては、労作時呼吸苦や胸痛などの自覚症状、肺性II音の亢進や三尖弁逆流音などの聴診所見、BNPやpro-BNPなどの心負荷を鋭敏に反映する血液検査、心臓超音波、呼吸機能検査、心電図、胸部レントゲンなどが挙げられる。なかでも心臓超音波での三尖弁逆流ピーク血流速はPAHの合併を予測する有用な指標となる。PAHの治療の主軸はプロスタサイクリンやエンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬などの肺血管拡張薬となる。また、一部の症例に対しては、ステロイド大量療法や免疫抑制薬などの有効性も示されているが、その適応に関しては十分な検討が必要である6)。


4.混合所見

i) SLE様所見
SLE様所見として多発関節炎やリンパ節腫脹、顔面紅斑、心膜炎や胸膜炎などの漿膜炎、血球異常を認めることがある。関節炎は約70-80%と高頻度に見られ、移動性であることが多いが、関節リウマチの様に滑膜炎を主体とする病変とは異なり、変形を来すことは稀である。また、顔面紅斑や四肢、体幹に皮疹が出現することもあるが、SLEで見られる典型的な蝶形紅斑は少ない。漿膜炎は約20%前後の症例に見られ、中等量のステロイドで寛解する症例がほとんどである。腎症は膜性糸球体腎炎が多く、中等量のステロイドに良好な反応を示し、免疫抑制薬を必要とすることは稀で、慢性腎不全に至る症例も少ない。また自己抗体に関しては、抗U1-RNP抗体は全例で陽性であるが、SLEに特異的な抗Sm抗体や抗二本鎖DNA抗体が検出されることは少なく、低補体血症を示すことも低率である。経過中にこれらの抗体が出現した場合には、SLEの併発も考慮すべきである。

ii) SSc様所見
MCTDではレイノー現象とともに手指の腫脹を持続的に認めることが多いが、SScとは異なり皮膚硬化や難治性の指尖潰瘍を合併することは少ない。またSScと同様、間質性肺炎(interstitial pneumonia: IP)はMCTDにおける重篤な合併症の一つであり、呼吸機能検査で%VCが80以下もしくは%DLCOが70%未満であれば診断基準の一項目が充足される。臨床的には急性の経過をたどる例は少なく、多くは亜急性もしくは慢性に経過し、病理所見はusual interstitial pneumonia(UIP)であることが多い。消化器病変として、食道蠕動低下や拡張も挙げられているが、SScより軽症で、難治性逆流性食道炎や腸管嚢腫様気腫症、吸収不良症候群に至る例は少ない。

iii) PM様所見
四肢の近位筋や頚筋の筋力低下、嚥下困難、筋肉痛などの筋症状がPM様所見として出現することがある。しかし歩行困難に至るような重症例は少なく、血液検査でクレアチニンキナーゼ(creatine kinase: CK)などの筋原酵素の上昇のみを示すことが多い。筋生検や筋電図、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging: MRI)などを用いて診断を行う。治療には中等量のステロイドを用いることが多く、免疫抑制薬を必要とすることは少ない。なお、PMで検出される抗Jo-1抗体を始めとしたアミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase: ARS)に対する抗体や抗Mi-2抗体など、PMに特異性が高い自己抗体がMCTD検出されることは稀である。


5.その他

前述した以外でMCTDに特徴的な合併症として、無菌性髄膜炎や三叉神経障害などがあげられる。無菌性髄膜炎は他の膠原病に比して高率にMCTDに合併し、抗U1-RNP抗体との関連が示唆されている。その一部はイブプロフェンを始めとした非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs) の使用が誘因となることが知られている。したがってMCTDに対するNSAIDsの投与は慎重に行う必要がある。さらに三叉神経障害も膠原病の中ではMCTDに特異的で、片側または両側の中枢側もしくは末梢側の第1枝から第III枝のいずれの領域にも起こりうる。自覚症状としては知覚過敏や感覚鈍麻、味覚障害、咬筋麻痺や角膜反射の低下などが見られるが、障害の受ける領域により異なる。治療にはいずれもステロイドを用いることが基本となるが、ウィルスや細菌をはじめとした感染症を鑑別することが重要である。

おわりに

本邦においてMCTDが独立した疾患として認識されている背景には、前述した如くPAHの合併が他の膠原病に比し高率であることや、SScと異なり手指の腫脹が長期に継続するものの、強度の皮膚硬化に至る例は低率であること、さらに腎症が少なく、ネフローゼ症候群や腎不全に至ることが低頻度であること、他の膠原病では稀である三叉神経障害などの合併症が本疾患には多く見られることなどが挙げられる。さらに典型的なSLEやSSc、PMに比し、全般的にステロイドに対する反応が良好であることもMCTDの特徴である。
我々の施設においてもMCTDと診断された症例のほとんどは特徴的な臨床経過をたどり、ステロイドに対する反応性が全般的に良好である印象を受ける。MCTDは抗U1-RNP抗体が検出されることを免疫学的な特徴とするが、この他にMCTDに特異的な自己抗体の発見など、病態がさらに詳細に解明され、より病態の根本に迫った新たな治療法が確立されることが望まれる。

参考文献

  1. Sharp GC et al. Mixed connective tissue disease-an apparently distinct rheumatic disease syndrome associated with a specific antibody to an extractable nuclear antigen (ENA). Am J Med. 1972;52(2):148-59.
  2. 祖川禮司. MCTD診断基準作成前夜. Frontiers in Rheumatology & Clinical lmmunology. 2011; Vol.5 No.2:58-59.
  3. Venables PJ. Mixed Connective Tissue Disease. Lupus. 2006;15(3):132-7.
  4. Beth Goundry et al. Diagnosis and management of Raynaud's phenomenon. BMJ. 2012 Feb 7;344:e289.
  5. 松下雅和. Raynaud現象. 内科 2009; 12 Vol.14 No.16:1170-1175.
  6. Galiè N et al. ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension. Eur Heart J. 2016 Jan 1;37(1):67-119.

表1 混合性結合組織病診断の手引き(厚生労働省混合性結合組織病研究班 2004年改訂)

混合性結合組織病の概念
全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎などにみられる症状や所見が混在し、 血清中に抗U1-RNP抗体がみられる疾患である。

I.中核所見
1.Raynaud 現象  2.指ないし手背の腫脹  3.肺高血圧症

II.免疫学的所見
抗U1-RNP 抗体陽性

III.混合所見
A.全身性エリテマトーデス様所見
1.多発関節炎  2.リンパ節腫脹  3.顔面紅斑  4.心膜炎または胸膜炎
5.白血球減少(4,000/μL以下)または血小板減少(10万/μL以下)

B.強皮症様所見
1.手指に限局した皮膚硬化
2.肺線維症、拘束性換気障害(%VC=80%以下)または肺拡散能力低下(%DLco=70%以下)
3.食道蠕動低下または拡張

C.多発性筋炎様所見
1.筋力低下  2.筋原性酵素(CK)上昇  3.筋電図における筋原性異常所見


診断  以下の3 項を満たす場合を混合性結合組織病と診断する。
1.I の1 所見以上が陽性 2.II の所見が陽性
3.III のA、B、C 項のうち、2 項以上につきそれぞれ1 所見以上が陽性


付記
1.抗U1-RNP 抗体の検出は二重免疫拡散法あるいは酵素免疫測定法(ELISA)のいずれでもよい。ただし、二重免疫拡散法が陽性でELISA の結果と一致しない場合には二重免疫拡散法を優先する。
2.以下の疾患標識抗体が陽性の場合は混合性結合組織病の診断は慎重に行う。
①抗Sm 抗体 ②高力価の抗二本鎖DNA 抗体 ③抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70 抗体)④抗Jo-1抗体
3.肺高血圧症を伴う抗U1-RNP 抗体陽性例は,臨床所見が十分にそろわなくとも、混合性結合組織病に分類される可能性が高い。

表2 肺高血圧症のニース分類

Simonneau G et al. Eur Respir J. 2019 Jan; 53(1): 1801913.より改変し引用

更新日:2020年6月22日