概要・病因

関節リウマチは、本来は細菌やウイルスなどの外敵から身を守るための免疫機能が、何らかの原因で不具合をおこし、結果として関節が炎症を起こし、関節の腫れや疼痛をきたしてしまう疾患です。治療が適切に行われず炎症が持続すると軟骨や骨をいため破壊や変形をきたし機能障害を伴います。抗リウマチ薬や生物学的製剤と呼ばれる薬を用いた治療を専門医の元で行っていくことが大切です。

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図:正常な関節と、関節リウマチを発症した関節

症状

手指、手首、足趾、肘、肩、膝などの関節の数カ所にこわばり、痛み、腫れを認めます。症状は数日の安静のみでは軽快せず、一ヶ月以上も症状が続き徐々に悪化することが多く見られます。起床時に症状が特に強く見られ、時間経過とともに軽快すること、関節は熱を持ち、赤く腫れて痛むのが特徴です。

検査

血液検査

リウマトイド因子、抗CCP抗体を測定し、関節リウマチの診断の際に参考にします。自覚症状、診察所見、症状の経過、レントゲンなどの画像検査等とあわせ総合的に関節リウマチか否かの判断をします。
CRP、赤沈、マトリックス・メタプロテイナーゼ3(MMP-3)の測定は、関節リウマチにおける関節炎の活動性を判断するときに行います。ヘモグロビン値、血小板数、アルブミン値なども、病勢判断の際に参考になります。

画像検査

レントゲン検査

骨・軟骨の形態の変化、変形・破壊の有無を確認できます。発症早期には異常は見られないことが多く、発症後、治療経過中に定期的に行い、進行の有無を評価することが主目的の検査です。

関節エコー(超音波)検査

関節の腫脹や炎症の有無、骨・軟骨の変形・破壊の有無を観察できます。診察や血液検査よりも鋭敏に病変部の異常を検出することができるため、発症して間もない時期の、早期診断・鑑別診断にも有用です。近年、使用できる施設が増えています。
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当院における関節超音波検査

MRI

関節エコー検査と同様に、関節の腫脹や炎症の有無、骨・軟骨の変形・破壊の有無を観察できます。造影剤を用いることで、より有用な画像情報を得ることができます。早期・鑑別診断に有用です。

治療

近年、関節リウマチの治療法は飛躍的に進歩し、寛解状態(病気の勢いがおさまった状態)にまで到達することが実現可能になりました。抗リウマチ薬を代表するメトトレキサートや生物学的製剤など、治療効果の高い薬物が登場し種類も豊富となり選択肢も広がりました。専門医のもとで病状をしっかりと評価した上で、状態に合った薬物と用量を選択し適切に用いる事が大切です。
診断後早期にメトトレキサートを第一選択とした抗リウマチ薬を開始し、3~6ヶ月以内に寛解あるいは低疾患活動性(病気の勢いが弱い状態)に達することを目指します。目標に達しない場合には、生物学的製剤を含めた他剤への変更あるいは追加を考慮します。

1.抗リウマチ薬

メトトレキサート(MTX:リウマトレックスR 、メトレートR )

関節リウマチ患者の約70~80%に用いられ、中心的役割を担うお薬(アンカードラッグ)です。一般に抗リウマチ薬は効果がでてくるまで1~2ヶ月を要し遅効性ですが、メトトレキサートは2~3週で効果がみられます。1週間に1~2日間のみ内服し、それ以外の5~6日間は休薬する飲み方をします。副作用軽減のためにメトトレキサート内服日から1日あけて葉酸(フォリアミンR)を内服することが一般的です。
出現しうる副作用として口内炎、倦怠感、肝機能異常、貧血、感染症、間質性肺炎、リンパ腫などが報告されているため、定期的に外来受診し注意深く経過観察を行います。

MTX以外の抗リウマチ薬

副作用などでメトトレキサートを使用できないとき、他の抗リウマチ薬を使用します。また、メトトレキサートのみで効果不十分な場合に、他の抗リウマチ薬を追加併用することがあります。主な薬剤を列挙します。
 
・サラゾスルファピリジン(アザルフィジンENR)
世界的に広く使用されており、低~中等度の疾患活動性の場合に用いられます。MTXとの併用も有効です。副作用として、皮疹や掻痒感、胃腸障害、肝障害を認めることがあります。
 
・ブシラミン(リマチルR)
我が国で開発された薬剤です。低から中等度の疾患活動性の場合に用いられます。副作用として嘔気、嘔吐、下痢、味覚異常、皮疹、肝障害、黄色爪などがみられます。注意すべき副作用としては蛋白尿や間質性肺炎があるため、定期的な尿検査とレントゲン検査が必要です。蛋白尿は薬剤中止により改善しますが、ときに副腎皮質ステロイドを用いた治療が必要となる場合があります。
 
・タクロリムス(プログラフR)
我が国で開発された薬剤で、関節リウマチ以外の膠原病でも用いられることのある、免疫抑制剤の一種です。副作用として、腎機能障害、感染症、耐糖能異常、胃腸障害が報告されています。一部の抗生剤、グレープフルーツとの併用で、薬物の血中濃度が上昇するため注意を要します。
 
・イグラチモド(ケアラムR)
日本で開発された、比較的新しい薬剤です。副作用として、肝機能障害や胃腸障害が多いとされています。

2.生物学的製剤

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・TNFα阻害薬(レミケードR、エンブレルR、ヒュミラR、シンポニーR、シムジアR)
関節リウマチの病態を形成している代表的な炎症性物質(炎症性サイトカイン)であるTNFαの作用を中和し、抗炎症作用を発揮します。臨床症状の改善だけでなく、骨破壊進行の抑制、身体機能の改善も得られます。メトトレキサートとの併用により作用の増強効果が得られます。
TNFαは感染防御に重要な役割を果たしており、TNFα阻害薬の使用による感染症の増加が報告されています。特に結核感染症のリスクを回避するために、投与前にスクリーニング検査を行い、必要に応じて抗結核薬投与を要する場合があります。B型肝炎の再活性化も問題となりうるため、スクリーニング検査を投与前に行います。
 
・IL-6阻害薬 トシリズマブ(アクテムラR)
炎症性サイトカインであるIL-6の作用を抑え作用を発揮します。TNFα阻害薬と同等の臨床症状の改善、骨破壊抑制効果、身体機能改善効果が示されています。TNFα阻害薬と異なり、メトトレキサートを併用しなくても高い有効性が得られます。薬物の作用特性のため、発熱や倦怠感、検査値のCRPの上昇が現れにくくなるため、感染症などの副作用の徴候を見逃さないように注意する必要があります。
 
・T細胞活性化阻害薬 アバタセプト(オレンシアR)
T細胞の活性化を抑制して、TNFα、IL-6などの炎症性サイトカインの産生を抑制し効果を発現します。TNF-α阻害薬に比べ効果発現が遅い傾向がありますが、臨床症状の改善効果、骨破壊進行の抑制効果は,TNF-α阻害薬とほぼ同等です。アバタセプトはTNF-α阻害薬に比して重篤な感染症のリスクが低いことが示されています。

3.低分子化合物

・トファシチニブ(ゼルヤンツR)
新しいタイプの薬剤として、2013年7月に発売されました。前述の生物学的製剤は単一の物質の作用を抑制していますが,トファシチニブが標的とするJAKは各種の炎症性サイトカインに作用し、生物学的製剤と同等の有効性を示します。

4.抗炎症薬

副腎皮質ステロイド:

・プレドニゾロンR、リンデロンRなど
痛みや炎症を抑える目的で古くから使用されている薬剤ですが、現在ではその使用頻度は減少しています。それは、長期間にわたり使用すると、骨粗鬆症や感染症などの副作用のリスクとなること、メトトレキサートや生物学的製剤などの近代の治療薬の有効性が非常に高いからです。
発症早期に高い疾患活動性のコントロールを目的に短期間のみ使用しその後に減量中止する場合、あるいは炎症の強い関節部位に対してのみ関節注射を施行する場合などに用いられます。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

・ロキソニンR、ボルタレンRなど
鎮痛目的に使用されますが、治療の主軸である抗リウマチ薬による活動性コントロールに基づいた除痛を心掛け、抗リウマチ薬の有効性が得られるまでの期間のみ使用し、できれば漫然と使用せず可能な限り減量・中止したい薬剤です。長期使用により胃腸や腎機能への影響があるため、特に高齢者においては使用継続の際は注意が必要です。

5.その他の治療

・リンパ球除去療法(LCAP)
血液中の白血球を特殊なフィルターで吸着、除去することにより、関節リウマチの活動性をおさえる治療です。根本的な治療とはなりえませんが、副作用などで薬剤治療が困難な場合や、治療効果が不十分な場合の補助的な治療として用いられます。週1回一時間の治療を、5週間連続で行います。継続する場合は、数ヶ月毎に治療を行うことになります。
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生活における留意点

関節リウマチの治療で大切なのは薬物療法だけではありません。日々の生活での運動、関節保護、食事、感染症予防などにも工夫や注意が必要です。種類は問いませんが、ウォーキングや体操などの運動習慣を持つことで筋萎縮の予防、関節可動域・関節安定性の維持や改善、疼痛軽減が期待できます。運動にて痛みを伴う場合や翌日に関節痛が悪化するような運動は避けましょう。運動の基本は、筋の持久力を向上させ、かつ関節に負担の少ない曲げ伸ばしを行わない等尺性運動です。筋力の衰えやすい下肢筋力の維持・向上には、膝を伸ばした状態で太ももに力を入れる運動を行うだけでも効果を実感できます。

関節リウマチでは貧血傾向になります。また副腎皮質ステロイドを用いた治療では骨粗鬆症になりやすくなります。これらの貧血や骨量の減少を予防・改善するため、鉄・カルシウム・ビタミンDの補給に心がけ、定期的に検査を行う事が大切です。また、喫煙は関節リウマチを悪化させる要因となりますので、禁煙が理想的です。
感染症予防のため、うがいや手洗いの習慣をもちましょう。冬場はインフルエンザワクチン接種、さらに高齢者の方は肺炎球菌ワクチンの接種も推奨されます。

また、薬の減量や中止により病状が悪化することがありますので、自己判断で減量・中止することなく継続し、そのような希望がある場合は、主治医と十分に相談しましょう。関節への負担を避けることを心がけ、十分な睡眠と短時間のお昼寝などでストレスや疲れをためないように生活することをお勧めします。