転移性肺腫瘍は他臓器がん(大腸がん、食道がん、肝臓がん、膵がん、腎臓がん、前立腺がん、頭頚部がん、子宮がん、乳がんなど)が肺へ転移しているので、一般的にはIV期であり、肺病変に対する手術適応はないと考えられておりました。しかし、①肺病変が完全切除可能、②原発巣がコントロールされているなど、条件が整えば、外科的切除により予後が良好であることが報告されてきました。当科でも原発巣の状況などが整えば、転移性肺腫瘍に対しても積極的に外科的切除を行っております。

この20年間で外科的手術の技術、機器は格段に進歩しました。従来の胸腔鏡下手術、開胸手術に加え、当院ではロボット手術にも力をいれており、身体への負担を出来る限り軽減することに努めてます。呼吸器外科領域におけるロボット手術の手術件数は全国1位(2022年のデータ)です。また当院では肺の温存手術にも力を入れています。人体には一般的に、右肺には上葉、中葉、下葉、左肺には上葉、下葉が存在し、5つの肺葉があります。肺を温存する縮小手術(肺区域切除、肺部分切除)を積極的に行うことで、術後の早期快復を実現してます。腫瘍の位置、状態によっては胸腔鏡補助下手術や開胸手術が適切な場合もあります。これらの術式は一律ではなく、エビデンスに基づき、患者さんのがんの状態と全身状態、社会生活を考えて決められてます。