中皮腫とは、胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜等に起こる悪性の病気で、その原因の多くは、アスベスト(石綿)です。アスベスト(石綿)は、天然にある鉱物繊維で、鉱山より採れます。1本の繊維の太さは髪の毛の1/5000くらいです。燃えず、腐らず、酸やアルカリに強く、引っ張りにも強く、保温性にも優れた性質を持っているため、「奇跡の鉱物」と呼ばれ、発がん性が指摘されるまで、数え切れないほどさまざまな用途に使われてきました(建造物材料、床タイル、ブレーキ等の摩擦材、アスファルト混合、断熱材、保温材、紡織品、パッキング・ガスケット等)。

中皮腫は、アスベストの曝露(吸入)から平均30~40年前後して発症することが多いため、60歳代の人に多く、また、喫煙によって発症率が増加します。組織型は、構成比率により、上皮型、肉腫型、二相型、その他に分けられ、上皮型が50~70%を占めます。また、上皮型は、肺腺がんとの鑑別が難しい場合がありますが、予後は他の組織型に比べ、よいとされています。中皮腫は、これまでは、進行した状態で見つかることが多く、症状としては、胸痛、息切れ、咳等が多く認められます。私たちは少しでも疑われる患者さんに積極的に胸腔鏡診断を行っています。中皮腫の診断は難しく、胸腔鏡下生検による組織診断が最も有効であると言われています。中皮腫の治療は、手術、抗がん剤が中心になりますので、当院では呼吸器内科と連携することで、患者さんへ適切な治療を提供するように努めてます。