症状と経過

肩の表面は三角筋という大きな筋肉で覆われています。その下の層には、体幹から上腕骨頭を取り囲む腱の複合体がみられ、これを腱板といいます。"ばんざい"で手を挙げる時には三角筋と腱板の協調運動が必要となります。

転んで肩を打ったり、加齢などで腱板が劣化することによって、これが切れることがあります。腱板損傷は痛みが強く、夜寝ているときに痛みで起きてしまうこともあります。また、時に自力では腕が挙がらず、支えられた手を離すと上腕が落ちてしまうこともあります。
肩腱板損傷

保存治療と検査

初めに保存療法として筋力増強と可動域訓練を指導します。痛みの強さによってはヒアルロン酸や副腎皮質ステロイド薬の関節内注射が有効なこともあります。
精密検査としてはMRIや関節造影検査によって損傷範囲を確認します。ある程度以上の損傷で、長く除痛が得られないか、腕が挙がらないことで生活に不自由の多い例では手術を検討します。

手術

軽症例には関節鏡視下にデブリドマン(創面清掃)だけを行うこともあります。これによって炎症が起きている滑膜を切除したり、関節内の骨の棘を取り除くことで痛みの軽減が期待できます。 中等度以上の損傷には腱板の修復術を行っています。多くの例では関節鏡下に手術が可能で、肩の周囲に約1cmの創を4、5カ所作るだけで済みます。手術侵襲を最小限に抑えることで、その後の腫れを抑え、リハビリをスムーズに行える利点があります。

断裂部は時間が経って変性していることが多く、手術の際には、その部分を切除し健常部を引き寄せて縫合します。断裂が大きく、腱板の欠損が広範囲にみられる場合には、まれに太ももの筋膜を代用したり、肩周囲の筋肉を移行して断裂部を覆うなど、大がかりな手術が必要になることもあります。