診療疾患
前十字靱帯損傷とその治療法の説明
けがの説明
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スポーツ外傷として頻度が高く、ジャンプ後の着地、疾走中の急激な停止、相手との衝突などで、膝関節に異常な回旋力が加わって損傷します。受傷時には「ブツッ」という断裂音や膝が外れた感じがして激しい痛みを伴ったり、徐々に膝が腫れて曲がりが悪くなりますが、急性期を過ぎると症状は無くなるため、“治った“と自己判断して病院への受診が遅れる場合もあります。損傷により靱帯に正常な緊張がなくなり緩みが生じると、関節の安定性が損なわれ、膝が容易にガクッと外れるような“膝崩れ”の症状が残ります。
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 (前から見た)正常前十字靱帯 |
 (内側から見た)正常前十字靱帯の解剖学標本 |
予後
通常切れた前十字靱帯が自然に癒合することはなく、永続的に膝の不安定性と不安感が残るため、一般的にスポーツ復帰を目標とした場合、手術以外の保存療法は無効とされています。そのまま放置した場合、頻回の“膝崩れ”によって関節内の半月・軟骨損傷(図)が多発し、近い将来、変形性膝関節症(関節軟骨がすり減って痛む高齢者に多い疾患:図)となる恐れがあります。
 軽い軟骨損傷(横にすじが入っている) |  内側半月の縦裂 |  |
 重い軟骨損傷(深くえぐれている) | | 17歳女性の前十字靱帯損傷後のX線。
前十字靱帯機能不全のまま膝崩れを繰り返すことで、関節は二次性に変形性関節症変化を呈するようになる。軟骨の隙間(矢印)が狭くなり始めている。
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治療方針と再建手術の適応
日常生活動作で“膝崩れ”を感じたり、スポーツを継続するのならば靱帯の再建手術が望ましく、また手術しないのであれば、スポーツは膝を捻ったり走ったりしない競技(水泳など)のみとされています。
再建術の方法、概略
自分の組織を用いて再建する(自家腱移植)のがベストな方法とされています。当院で20年来主に行っている膝屈筋腱(ハムストリングス)を用いた関節鏡視下膝前十字靱帯再建術は、切開は最小限で大きな合併症がなく、術後の成績も安定しているため、有効な治療方法として確立されています。我が国のサッカー、ラグビー、アメフット、バスケットボール等のトップレベルの数多くの選手が術後も復帰し、けがをする前と同様に活躍しています。
手術は膝関節を構成する大腿骨と脛骨の最適部位に関節鏡を用いて細いトンネルを作製し、そこに採取加工した腱を貫いて上端と下端を金具で固定することで膝の安定性を得ることを目的とし、全身麻酔+硬膜外持続麻酔下で行います。
尚、再建靭帯を2本にする「2重束再建」を行っている施設もありますが、私達はその方法は以下の理由で行いません。1.移植腱を2本採取する場合は、術後ハムストリングの筋力が弱くなってしまう。2.移植腱を1本だけで、2本の再建靭帯を作る場合は、1本の再建靭帯が細くて弱く、再断裂の危険性が高まる。3.骨孔(トンネル)を4本作らねばならず、その分術後の回復が遅くなる。4.以上のような代償を払ってもその結果が私達のような一束再建術の結果より良いということがない。
術後の予定
術後は膝の固定装具を特別必要とせず、手術翌日より車椅子移動、2日目より手術した足も着いて歩く訓練を開始します。7日目で歩いて退院します。その後は2週間から1ヵ月の間隔で膝専門外来に通院しながらリハビリを行って頂きます。手術後6ヵ月経ったらほぼ2ヵ月に1回の割で通院します。リハビリは退院時に詳細なリハビリノート(下図)を貰い、術後3ヵ月まではホームエクササイズとして自宅での自主トレーニングで行います。その後はスポーツジム、スポーツセンター、所属クラブなどでトレーニングマシーンを用いて行い、スポーツ復帰は術後6ヶ月を目標にしています。この方法でこれまで当院では毎年150名以上の方々に手術を行ってきており、プロスポーツ選手や日本代表クラスの選手から高校
生やママさんバレークラスのアマチュアの方までたくさんの方々に再びスポーツを行うことができる喜びを提供し続けています。過去に私たちが治療したトップアスリート80人の治療成績は、手術前と同等レベルへの競技復帰92.5%、平均復帰期間8ヶ月と良好でした (2007年日本整形外科スポーツ医学会にて発表)。
 退院時にお渡しするリハビリノート (一部抜粋)
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