一般的にいわれる高血圧とは、生活習慣・食生活・遺伝的素因など様々な要因により発症するものを指すことが多く、このような高血圧を本態性高血圧といいます。多くの高血圧患者さんはこれにあたります。一方、高血圧全体の10%以上を占める二次性高血圧は、下記に示すような特定の原因により発症します。二次性高血圧は、原因を明らかにし適切な治療介入をすることで、治癒が期待できる高血圧です。

二次性高血圧の原因

内分泌に関するもの 原発性アルドステロン症・クッシング症候群・褐色細胞腫
 ・甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症・副甲状腺機能亢進症など
腎臓に関するもの 腎血管性・腎実質性
その他 睡眠時無呼吸症候群・薬剤・大動脈縮窄症など

二次性高血圧を疑う病態

若年で発症する高血圧、急速に発症した高血圧、治療抵抗性の高血圧、臓器障害が強い場合、夜間高血圧、低カリウム血症などの電解質異常を伴う高血圧など (すべての高血圧は、二次性高血圧の可能性がありますが上記のような場合に特に可能性が高くなります)

原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症は、高血圧患者さんの5-10%を占めているといわれており、代表的な二次性高血圧です。腎臓の上に位置する副腎から、アルドステロンという血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌されることにより、高血圧を呈します。その結果、腎臓で産生されるレニンというホルモンの分泌が抑制されて低値になります。

スクリーニング検査として採血を行い、アルドステロンの数値やアルドステロン/レニン比を評価します。スクリーニング検査が陽性である場合は、入院のうえ負荷試験を行います。
当院での入院負荷試験スケジュール
1日目 入院時検査 心電図・X線検査など
2日目 フロセミド
立位試験
朝排尿後、ベッドで安静・採血・点滴を挿入のうえフロセミド(利尿剤)を投与し2時間立位で過ごします。途中と終了時にも採血を行います。
3日目 生理食塩水
負荷試験
朝排尿後、ベッドで安静の上、生理食塩水を4時間点滴します。
 1時間おきに血圧・脈拍を測定、適時採血を行うます。
4日目 カプトプリル
負荷試験
採血後カプトプリル(降圧薬)を内服し、1時間・1時間半後に採血を行います。
※(検査後朝食・内服)病態により順番や内容が変更することがあります

また原発性アルドステロン症は、腹腔鏡手術により副腎摘出が可能な片側病変(副腎皮質腺腫)と薬物治療が適応となる両側副腎過形成に大きく分けられます。負荷試験が陽性であり、手術の適応や希望がある際には、副腎静脈サンプリング試験と呼ばれるカテーテルを用いた検査を入院にて行い局在を明らかにします。

腎血管性高血圧

腎動脈が狭窄や閉塞することにより生じる高血圧です。高血圧患者さんの約1%にみられるといわれており、この疾患が疑われた際には、超音波検査やMRA検査などを行い診断します。明らかな狭窄があり治療適応があれば、カテーテルにより狭窄部位を広げることもあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時に呼吸が浅くなったり、停止することにより生じる高血圧です。いびきや肥満、日中の眠気などを伴いこの疾患が疑われた際には、簡易モニターや睡眠ポリグラフィーの分析により診断します。重度であればマウスピースの使用や持続性陽圧換気(CPAP)を用いた治療を行います。 その他の二次性高血圧に関しても、採血・尿検査、生理機能・画像検査により診断治療を行っております。二次性高血圧が診断され、適切な加療が行われると臓器障害の進行が抑制できる可能性があります。
 
参考)高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会)