順天堂大学医学部附属順天堂医院 腎・高血圧内科に関する様々な情報をご案内します。

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高血圧とは?

本態性高血圧症と二次性高血圧症とは?
@ 高血圧症には原因不明の本態性高血圧症と何らかの病気に基づく二次性高血圧症があり、後者は治療により治癒や軽快が期待できる。
A 多くの研究結果から、近年、目標血圧はより低いものへと変わってきている。
B 高血圧症は自覚症状を欠くため、病院や家庭での血圧測定が重要である。治療目的は、単に血圧を下げることではなく合併症の予防で、生活習慣の改善と内服薬による降圧を長期にわたり要することもある。

[疫学]

全世界では10人に1人、我が国では3人に1人が高血圧症であると推定されています。降圧治療率(高血圧症である人が治療を受けている割合)は1967年頃より10%を超えるようになり、1988年には25%となりましたが自覚症状を欠くためか、残りは高血圧症であっても未治療のまま放置されています。

[病態と成因]

現在では高血圧症の発症には遺伝因子と環境因子の双方が影響しているという考え方が有力です。
かつて日本に高血圧症が多く脳卒中が多発したのは、食塩の摂りすぎが原因であったといわれています。ある研究ではその根拠として食塩摂取量の多い集団では血圧が高く、また、個人の血圧と食塩摂取量でも正の相関(食塩を摂るほど血圧も上昇する)が認められています。また、食塩ばかりではなく肥満や大量飲酒、ストレスも高血圧に悪い影響を与えます。
原因が明らかでない高血圧症を本態性高血圧症、特定の原疾患(高血圧症をもたらす病気のこと、本章の後半で解説)に基づく高血圧症を二次性高血圧症といい、原疾患の治療により高血圧症の治癒、または軽快が期待できることから無視できないものになっています。二次性高血圧症の頻度は、報告により異なりますが高血圧症患者さんの15%未満から20%程度あるものと考えられています。一般に二次性高血圧症を疑うのは、若年発症、多剤併用や大量の降圧剤をもっても血圧コントロールが困難な場合や治療経過中に急激に血圧コントロールが不良となった場合、電解質異常を伴う場合などです。

[症状]

血圧が高いこと自体では自覚症状を欠く場合が多く、二次性高血圧症の場合では原疾患のそれぞれに伴う症状として浮腫(むくみ)や尿量の減少、筋力の低下、頭痛、動悸(胸のもやもや感)、発汗過多、糖尿病、中心性肥満(腹部を中心に肥満がみられる)、満月様顔貌(丸顔)、多毛等が見られることもあります。以下に、二次性高血圧症を来す代表的疾患()についてご説明いたします。
  1. 腎実質性高血圧:
    二次性高血圧症の原因として最も多く見られるものです。腎炎、嚢胞腎(嚢胞と呼ばれる水分を含む部屋が腎臓に多発して正常な腎臓の組織を破壊してしまう)、糖尿病や膠原病(関節リウマチなどの自己免疫疾患)による腎障害で認められます。腎臓は単純に尿量によって体の水分調節を行うだけではなくレニン・アンギオテンシン系というホルモン調節系を介して血管の収縮も行うことで血圧の調節にも関与しています。腎臓が障害されて、ネフロン(腎臓の機能単位、腎臓はネフロンが無数に集まって構成されています)が減少していくことで、レニン・アンギオテンシン系が亢進して血管が収縮したり、過剰な水分が体内に残ること、交感神経の活性化など多くの因子によって血圧が上昇します。尿の異常(タンパク尿、血尿)や浮腫が見られることがあります。
  2. 腎血管性高血圧:
    腎臓に流入する血管が狭窄(狭くなること)で腎臓は血圧が下がったと錯覚し、レニン・アンギオテンシン系が亢進して血圧を上昇させてしまいます。腎不全が進行するまで自覚症状はありませんが、病院受診時のホルモン検査や各種画像検査[超音波検査、X線検査、CT検査 ()、MRI検査など]で見つかることがあります。
  3. 原発性アルドステロン症:
    副腎(腎臓の上に隣接する腎臓とは異なる臓器で様々なホルモンの産生を行う)からのアルドステロン、デオキシコルチコステロンのいずれか、或いは双方の過剰に伴い低レニン血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症となり口渇、多尿、四肢の脱力感が認められます。放置しておくと合併症は重篤で脳卒中、腎不全などを来たすこともあります。
  4. クッシング症候群:
    通常、前述の副腎から産生されるホルモン(グルココルチコイド)の過剰により中心性肥満、満月様顔貌、耐糖能異常(いわゆる糖尿病)を認めます。副腎の腫瘍が原因のこともありますが脳腫瘍やその他の悪性腫瘍が原因であることもあります。
  5. 褐色細胞腫:
    カテコラミン(血圧上昇ホルモン)産生腫瘍によるもので、高血圧は発作性に上昇するものと継続的に上昇しているタイプがあります。自覚症状としては、動悸、発汗過多、めまい、嘔吐、頭痛、振戦(ふるえ)が認められることがあります。褐色細胞腫は、別名10%病とも言われ、悪性腫瘍、両側性、副腎外、家族内発生、小児発症が10%の頻度で認められます。外科的切除が困難な例では治療に難渋します
  6. 甲状腺疾患:
    甲状腺機能亢進症、低下症で高血圧が認められることがあります。亢進症では動悸、頻脈、発汗過多、眼球突出など、低下症では活動性の低下、耐寒性の低下(寒がり)、便秘症、下肢の浮腫(腎性のものとは異なり押しても凹まないむくみ)などが認められることもあります。
  7. 副甲状腺機能亢進症:
    高カルシウム血症による倦怠感、易疲労感、多尿、腎結石が認められることもあります。
  8. 薬剤誘発性
    NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)、甘草(肝臓病治療薬や漢方薬に含まれている)、グルココルチコイド(いわゆるステロイド剤)、サイクロスポリン(臓器移植や膠原病、腎臓病、血液疾患の治療薬)、エリスロポエリン(慢性腎不全や血液疾患で用いる造血剤)などが知られています。病気の治療により中止できない場合などでは、降圧剤を併用します。
(表): 二次性高血圧表
原因疾患 示唆される症状と検査所見など
腎実質性高血圧 タンパク尿、血尿、尿沈渣異常、血清クレアチニン上昇、高尿酸血症
腎血管性高血圧 高齢者の急激な高血圧発症や増悪、若年者の高血圧、腹部血管雑音
糖尿病腎症 長期の糖尿病罹患歴、尿糖、タンパク尿、浮腫、糖尿病性網膜症
原発性アルドステロン症 四肢の脱力、一過性麻痺の既往、夜間頻尿、低カリウム血症
クッシング症候群 中心性肥満、満月様顔貌、皮膚線条、耐糖能異常、低カリウム血症
褐色細胞腫 発作性頭痛、動悸、発汗、動揺性高血圧、起立性低血圧
甲状腺機能亢進症 体重減少、発汗、頻脈、コレステロール低下
甲状腺機能低下症 徐脈、浮腫、心嚢液貯留、総コレステロール上昇、CK上昇、LDH上昇
副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症
薬剤誘発性 薬物使用歴、治療抵抗性や難治性高血圧、低カリウム血症

(図)腎血管性高血圧のCT画像
腎血管性高血圧のCT画像
矢印は腎動脈の狭窄部分を示す。

[診断]

血圧は、そのときの心身状態により著しく変動するため推奨される正しい測定法を行い、再現性(何度計測しても高血圧症であること)があることが大切です。一度の計測だけでは診断できません。病院の診察室で計測する場合には、一過性に血圧を上昇させてしまうカフェインを含む食品やタバコは控えなければなりません。少なくとも5分間安静座位状態の後に上腕部で測定するようにし、始めは両側で測定して高いほうがあればそちらを採用します。
正常血圧は収縮期130mmHg以下、拡張期85mmHg以下
であり、両方の血圧が基準以下であるものが正常でどちらかでも高ければ高血圧症であることになります。様々な研究の結果から、推奨される血圧は低くなる傾向にあり最新の高血圧症ガイドライン(2004年度版)では至適血圧(高血圧症ではないが、推奨される血圧)は、収縮期120mmHg以下、拡張期80mmHg以下とされています。
最初に触れたように、血圧は著しく変動することから最近では家庭血圧を重んじるようになりました。腕に巻くタイプの血圧計を購入して頂き、朝は起床後1時間以内、排尿後、座位1-2分後、降圧剤の服用前、朝食前に測定、晩は就寝前、座位1-2分の安静後にそれぞれ測定することが推奨されています。家庭血圧の明確な基準は決まっておりませんが、日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2000年度版では135/85mmHg以上を高血圧とし、125/80mmHg未満を正常血圧の基準として採用しています。家庭血圧の記録や24時間携帯型血圧計を診ることで診察室以外での血圧も評価することが可能となり、より確実な血圧管理ができるようになりました。

[検査]

一般血球検査、一般生化学検査、尿検査、胸部X線、心電図など
二次性高血圧症の検査として:血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度、コルチゾール、カテコラミン測定、腎臓と副腎の超音波検査及びCT検査
臓器障害の精密検査として:眼底検査、頭部CT検査、頭部MRI検査、心臓超音波検査、尿中微量アルブミン排泄量、頚動脈超音波検査、上下肢血圧比、高感度CRPなど

[合併症]

高血圧症を放置することにより、様々な合併症が生じます。大血管系である脳や心臓では、脳出血、脳梗塞(いわゆる脳卒中)や狭心症、心筋梗塞、心不全、閉塞性動脈硬化症(重症となれば、いわゆる壊疽)などを来たします。細小血管系である腎臓や眼では腎機能障害、腎不全、高血圧性網膜症(視力障害)を来たします。

[治療]

  1. 先ずは生活習慣の改善(薬を使うばかりが治療ではありません)

    食塩制限は、1日に6g以下が目標です。現在の日本人の平均食塩摂取量は1日に10-12gと言われています。

    野菜、果物の積極的な摂取とコレステロール・飽和脂肪酸の制限を同時に行うことで降圧降下が期待できます。ただし、腎機能障害、腎不全のある患者さんでは、野菜、果物を過剰摂取するとカリウムが多く含まれているため危険です。また糖尿病のある患者さんでも、果物の過剰摂取は、カロリー摂取過多となります。主治医と相談しましょう。

    適正体重の維持
    肥満を是正することで血圧は降下します。BMI 体重(Kg)÷〔身長(m)〕2は25以下を目標に減量します。急激なダイエットは体を壊しますので、現在体重過多の場合はゆっくりと体重をコントロールしましょう。

    運動療法
    心血管病変(狭心症、心筋梗塞、血管病変)のない方が対象です。有酸素運動(うっすら汗をかく程度の軽い運動)を1日に30分程度行うことが効果的です。心血管病変、重い腎障害のある方は主治医と御相談ください。

    アルコール制限
    お酒に含まれるアルコール濃度で男性では1日に20-30ml以下、女性では10-20ml以下に抑えましょう。

    禁煙
    タバコは血圧ばかりでなく肺や心臓、血管にも悪い影響があり世界的にも禁煙運動は高まっています。

    その他
    ストレスなども血圧に影響すると考えられますが、その評価は大変難しいものと思われます。避けることが可能なストレスは回避し、ストレス発散に心がけましょう。 住宅環境の整備により、浴室やトイレでの冬の脳血管障害が減少することが言われています。また、極端に暑い風呂やサウナ、冷水浴は急激な血圧の変化をもたらします。

  2. 降圧薬

    現在、日本では降圧薬にはその作用機序の違いから大きく分けて6種類の薬剤を使い分けることができます。@血管拡張をもたらすカルシウム拮抗剤、AアンギオテンシンU(前述のレニン・アンギオテンシン系の反応を阻害する)の産生を抑えるACE阻害薬、BアンギオテンシンUの作用を受容体部分で抑えるARB、C腎臓からの水分とナトリウムの排泄を促進する利尿剤、D交感神経系を抑制する交感神経抑制薬、E末梢血管に直接作用して血管を拡張させる血管拡張薬などです。それぞれの薬剤には特有の長所と短所があり、これらのことから積極的な適応(薬を使ったほうが良い)と禁忌(薬を使ってはいけないこと)が決まっています。それぞれの患者さんの状態にあわせて、原則は1種類の薬を少量から開始し、問題のないことを確かめながら、また、外来での血圧や家庭血圧、24時間携帯型血圧計の結果を見ながら増量や減量をしていくことになります。 また、患者さん方からよく受ける質問で、一度服用を始めると一生涯、薬を服用しなければならないのか?ということがありますが、これに対して私たちは「一生涯、服用しなければならないとは決まってはいませんが、そうなることが多い」と説明します。高血圧の治療の目的は、血圧を下げることだけが目的ではなく、先に述べた自覚症状のないうちに進行してしまう合併症が生じないように、または合併症の進行を遅らせることが目的なのです。従いまして、一度内服薬が開始された患者さんが生活習慣の改善により血圧が下がり、もしくは二次性高血圧症の原疾患の治療により血圧が正常化されれば内服薬が減量されたり、中止されることもあります。