患者さんへのご挨拶

順天堂医院 輸血・細胞療法室の沿革

1965年他の医療施設に先駆けて、順天堂医院に初めて輸血室が設置されました。1980年順天堂大学医学部に輸血学研究室が開設され、初代教授として湯浅晋治が就任し、赤血球凍結保存による自己血輸血の発展に寄与しました。

2000年8月第2代教授として大坂顯通が就任した後、これまでの輸血室業務を一から見直し、最新のコンピュータ管理システムや自動輸血検査機器、そしてバーコード輸血照合システム等を導入して、ヒューマンエラーによる輸血の取り違い(過誤輸血)の防止に積極的に取り組みました。

2021年4月第3代教授として安藤純が就任し、最新のがん治療であるキメラ抗原受容体-T細胞(CAR-T)療法を導入し、細胞療法を推進し、患者の治療のサポートに取り組んでいます。輸血・細胞療法室では、輸血部門システムとバーコード輸血照合システムを使用して、安全な輸血医療の提供を目指しています。また、血液型検査、不規則抗体検査、交差適合試験など輸血検査のみならず、 自己血の細胞調製、末梢血幹細胞採取や細胞調製・保存等の移植関連業務など、幅広く輸血療法に携わっています。

部門概要

輸血・細胞療法室は、一般的な輸血検査から移植医療など幅広く輸血・細胞療法に携わっています。輸血認定医の室長をはじめ、認定輸血検査技師、細胞治療認定管理師、サイトメトリー認定技術者を含む臨床検査技師が、安心・安全な輸血・細胞療法を提供するために日々精進しております。

業務内容

輸血・細胞療法室02
  1. 輸血関連検査
    血液型検査、不規則抗体検査、交差適合試験などを行っています。
  2. 輸血用血液製剤の管理
    輸血用血液製剤の発注、保管、払い出し、副反応の調査などを行っています。
  3. 自己血業務
    採血補助、製剤の調整、保管管理などを行っています。
  4. 細胞療法業務
    末梢血幹細胞およびCAR-T製剤用白血球の採取、細胞調整・保存などを行っています。

輸血業務について

輸血関連検査

輸血業務について01
輸血業務について02
①血液型検査
輸血のために最も重要なABO式血液型を検査します。
日本人のABO式発現頻度は、A型(40%)、O型(30%)、B型(20%)、AB型(10%)となっています。
②不規則抗体スクリーニング検査
輸血歴や妊娠歴のある患者さんは、輸血用血液に対する「抗体」を作る可能性があり、その抗体の有無を検査します。
抗体を保有する場合は副反応が発生する可能性があるため、抗体と反応しない輸血用血液製剤を選択します。
③交差適合試験
輸血用血液と患者さんの血液を体の外で混ぜ合わせ、反応しないことを確認し、輸血用血液製剤を払い出しています。

これらの検査は、全自動輸血検査装置を使用することで、取り違いミスの防止に努めています。その他にも特殊な血液型や自己抗体に関する特殊検査も行っています。 また、近年では主に血液疾患の治療薬として分子標的薬が普及し、輸血検査に影響を与えることが知られています。分子標的薬をご使用の患者さんは担当医へご連絡ください。

輸血用血液製剤の保管・管理

日本赤十字社から供給された輸血用血液製剤および院内採血された自己血製剤は、 輸血・細胞療法室において適正に温度管理された輸血用血液製剤専用の保冷庫で一元的に保管・管理しています。万が一、輸血後細菌感染症が発生した場合に備え、使用後の血液製剤は全て輸血・細胞療法室に返却してもらい、一定期間保管・管理しています。
輸血・細胞療法室007

輸血室スタッフによる輸血用血液製剤の搬送

輸血室以外には輸血用血液製剤専用の保冷庫がないため、製剤種ごとに保管方法が異なる輸血用血液製剤は、患者さんの元に届いたら速やかに使用する必要があります。緊急性の高い手術室へは、輸血・細胞療法室スタッフが直接届ける「搬送」業務を行い、使用時に最小単位数を出庫することを原則としています。また、外来待ち時間短縮のため、外来部門への搬送も行っています。
輸血・細胞療法室002

バーコード輸血照合システム

順天堂医院に入院されるすべての患者さんは、バーコードが印字されたリストバンドを装着していただきます。すべての輸血は、モバイル端末を使用して、リストバンドのバーコード、輸血実施者ID番号、輸血用血液製剤バーコードを読み取って照合することにより、取違いによる過誤輸血を防止しています。
輸血・細胞療法室001

輸血副反応のモニタリング

輸血開始後5分間は医師または看護師が付き添い輸血副反応の有無を確認します。 その後も定期的に観察し、万一、輸血副反応・合併症が発生した場合には、速やかな対応と適正な処置を行います。 また、日本赤十字社と協力して原因の究明と再発の防止に努めています。

自己血輸血

当院では、全身状態が良好で手術までに時間的余裕がある患者さんに対して、自己血採血を行っております。学童から高齢者まで幅広く対応しており、専用採血室で医師、看護師と共にチーム体制で行っております。また、患者さんの状況に応じて長期保存(原則1年)も可能な凍結保存も選択することができます。
自己血輸血
輸血・細胞療法室003

小児輸血

小児(特に新生児)の輸血療法は、少量輸血(10-20 mL/hr以下)が多いためシリンジへ分注し輸血します。当院では、輸血室のクリーンベンチを使用して輸血用血液製剤を無菌的にシリンジへ分注し、払い出しています。個々のシリンジにはバーコードを印字した製剤適合票を貼付して、通常の輸血用血液製剤と同様に、バーコード輸血照合システムを使用して照合確認を行った後に輸血を行います。
輸血・細胞療法室004
小児輸血

移植関連業務

輸血・細胞療法室スタッフは末梢血からの白血球採取から細胞調製、凍結保存までの一連の作業を行っております。

移植関連業務
採取した末梢血単核球分画の測定は、フローサイトメーターを使用して、幹細胞(CD34陽性細胞)やCAR-T製剤用白血球(CD3陽性細胞)の算定を行っております。末梢血幹細胞の採取は、輸血・細胞療法室スタッフが医師や看護師と共にチームとして患者さんの全身状態の管理にあたっています。また、同種臍帯血の保管・管理、同種骨髄の赤血球・血漿除去、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(テムセルHS注)の調製も行っています。

免疫細胞療法(CAR-T療法)について

CAR-T療法(キムリア®)について

順天堂大学医学部附属順天堂医院は、2020年2月に再発または難治性の白血病とリンパ腫の治療薬である「CAR-T(キムリア)療法」の提供可能施設に認定されております。
キムリアは、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法と呼ばれ、患者さん自身の免疫細胞であるT細胞に遺伝子改変を行い、白血病細胞やリンパ腫細胞への攻撃力を高める治療法であり、「がん免疫遺伝子治療」と呼ばれます。患者さんの血液からT細胞を取り出し、レンチウイルスベクターを用いて遺伝子を導入し、CARと呼ばれる特殊なたんぱく質を発現できるT細胞(CAR-T細胞)を作ります。CARは、白血病細胞やリンパ腫細胞であるB細胞の表面に発現している「CD19」と呼ばれる抗原を特異的に認識することができ、このCARを発現したCAR-T細胞はB細胞(白血病やリンパ腫細胞)を特異的に攻撃することができます。このCAR-T細胞を体外で増やして患者さんの体内に戻せるように製造された製品がキムリアです。
 
キムリアはアフェレーシスから製剤の搬入まで6〜8週間程度かかるため、適応となり次第、リンパ球採取(アフェレーシス)を行う必要があります。細胞療法・輸血室では、製造までの一連の業務を血液内科医師と連携を取りながら、実施しております。
キムリアについてのお問い合わせ
キムリアについてのご質問は下記連絡先までご相談ください。
血液内科/細胞療法・輸血学
安藤 純
E-mail:j-ando@juntendo.ac.jp