肥満外来

肥満治療と減量・代謝改善手術治療について

近年、世界中で生活習慣病による重症糖尿病・肥満の患者さんは増加しており、世界中で20億人もの人が肥満傾向にあると推定されています。本邦でも食生活の欧米化にともない肥満人口は増加しており、厚生労働省の令和元年(2019)「国民健康・栄養調査」身体状況及等に関わる調査結果によると、日本人の肥満(肥満の指標であるBMI≧25 kg/m2の人)の割合は、男性33%、女性22.3%に上ります。
肥満症とは、糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群など、肥満とそれに関わる複合的な健康障害を抱えている状態です。中でも高度肥満症の方は、医学的に減量が必要な状態であるとされ、長引く健康被害によるQOLの低下や生涯医療費の高騰も心配されます。

肥満症の治療はまず内科治療が原則となります。しかし、長期に渡るコントロールがうまくいかなかったり、リバウンドに悩んだりすることがあります。このような内科治療に抵抗性がある高度肥満症に対して、減量・代謝改善手術治療を検討する場合があります。

肥満症に対する減量手術は、アメリカで1950年代に開始され、日本国内では1982年に初めて開腹の手術が行われました。現在は西側先進国で年間約70万件近くの手術が行われ、日本国内でも近年の低侵襲による手術の広まりもあって徐々に増加してきました。2020年度には748件(日本肥満治療学会アンケートによる)の腹腔鏡下肥満外科手術が行われています。

順天堂大学附属病院では2019年、糖尿病・内分泌内科 綿田裕孝教授と同消化器・低侵襲外科 福永哲教授を中心として「減量・糖尿病外科治療チーム※」が結成されました。肥満症や、それに伴う病気に苦しむ患者さんの治療に対し、包括的に取り組むことを目的としています。チームは両科医師をはじめ、麻酔科、メンタルクリニック科、循環器・呼吸器内科(睡眠時無呼吸症)、看護部、薬剤部、栄養部、医療福祉相談室など、多領域の専門家で構成されています。術前評価から術後管理まで、チームで連携して総合的に治療を行います。

当院は、2020年2月に第1例目の腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行い、2021年4月からは保険診療にも対応しています。高難度新規医療技術申請も行い、さらに患者さんに安心して治療を受けていただける環境づくりを目指しています。

※2021年4月から、治療名が「減量・代謝改善手術治療」に変更となり、チーム名も「減量・代謝改善手術治療チーム」へ変更しました。

本治療の特徴

高度肥満症の診療は、まず糖尿病・内分泌内科に2泊3日程度の入院をしていただき、体重増加の原因となるホルモン異常がないかどうか、また合併症について内科的診断と治療を行います。これと並行して、管理栄養士による食事指導を受け、食事内容や運動量など、生活習慣を見直します。
内科治療に抵抗性がある場合には、消化器・低侵襲外科の医師と相談しながら、手術の適応を検討します。適応になった場合は減量・代謝改善手術治療チームで各領域の専門家が連携し、安全に手術を行う準備を進めます。

減量・代謝改善手術にはいくつかの方法がありますが、保険収載されているのは「スリーブ状胃切除術」です。
スリーブ状胃切除術は、胃の外側に膨らんだ大彎部を切り取って袖(スリーブ状)のように形成します。胃を小さくすることで食事量の制限がしやすくなり、食欲に関わるホルモンの分泌を減らします。切除した胃は元には戻らないので、術後も生活習慣や栄養状態について注意が必要です。定期的に通院していただきながら減量の経過をみていきます。

スリーブ状胃切除術とは

保険診療適応

18歳から65歳までの方で、①もしくは②に該当する方。

  • ① BMI35以上の原発性(一次性)肥満
  • 6か月以上の内科的治療を行っても十分に効果が得られない
    かつ下記のうち1つ以上を合併した肥満症

    • Ⅰ.糖尿病
    • Ⅱ.高血圧
    • Ⅲ.脂質異常症
    • Ⅳ.閉鎖性睡眠時無呼吸症候群
  • ② BMI 32.5~34.9
  • 6か月以上の内科的治療を行っても十分に効果が得られない
    ヘモグロビンA1cが8.4%以上の糖尿病がある。
    かつ下記のうち1つ以上を合併している。

    • Ⅰ.高血圧(収縮期血圧160㎜Hg以上)
    • Ⅱ.脂質異常症 (LDL 140㎎/dl以上又は、Non HDL 170mg/dl以上)
    • Ⅲ.閉鎖性睡眠時無呼吸症候群(AHI≧30の重症のもの)

2021年3月、第41回日本肥満学会および第38回日本肥満症治療学会合同シンポジウムにおいて、日本人の肥満2型糖尿病患者の手術適応基準に関するコンセンサスステートメントが発表されました。
今後は肥満2型糖尿病患者に対する外科治療の適応拡大も見込まれ、この治療を受けられる患者さんが増加すると考えらます。高度肥満症でお悩みの方はまず当院糖尿病・内分泌内科にご相談ください。

臨床研究

  • 糖尿病・内分泌内科では、糖負荷による人体への影響や糖尿病のメカニズムに関する研究を行っており、手術により得られた情報を用いてさらなる研究を行います。
  • 消化器・低侵襲外科 折田創准教授はFASgen(Johns Hopkins大学内Biopark) との共同研究で肥満治療薬の開発歴もあり、新規薬物の開発を目指します。

減量・代謝改善手術治療チーム紹介動画