順天堂医院の先進医療

先進医療01

先進医療とは

先進医療02
先進医療は、国民の安全性を確保し、患者負担の増大を防止するといった観点も踏まえつつ、国民の選択肢を拡げ、利便性を向上するという観点から、将来的な保険導入のための評価を行うものとして、保険診療との併用を認めることとされているものです。

有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準を設定し、施設基準に該当する保険医療機関は届出により保険診療との併用ができることとされています。

「先進医療に係る費用」については全額自己負担

2022年10月1日現在

先進医療を受けた時の費用は、次のように取り扱われ、患者さんは一般の保険診療の場合と比べて、「先進医療に係る費用」を多く負担することになります。

  1. 「先進医療に係る費用」は、患者さんが全額自己負担することになります。
    ※詳細な金額については「当院で実施している先進医療一覧」をご参照ください。
  2. 「先進医療に係る費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。一般保険診療と共通する部分は保険給付されるため、各健康保険制度における一部負担金を支払うこととなります。
  3. 患者さんは「先進医療に係る費用」+「各健康保険制度における一部負担金」をお支払い頂くこととなります。

当院で実施している先進医療一覧

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家族性アルツハイマー病の遺伝子診断

概要

全アルツハイマー病のうち遺伝性のものは1パーセント以下ですが、若年性アルツハイマー病の場合、遺伝子が原因である頻度は高くなります。この先進医療で遺伝子検査を行うことで、遺伝子が原因であるアルツハイマー病の約6割の診断が可能になります。これによって症状の種類や進行の程度について正確な判断や予測ができるようになり、治療に役立てることができます。また、必要に応じて検査前後に遺伝カウンセリングを行うことが可能です。

先進医療に係る費用:30,000円
担当診療科:脳神経内科

リスク

現時点では、進行抑制が主で根治治療法は研究段階であり、検査結果によって不安などの心理的影響が生じる可能性があります。
ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)

概要

ウイルスに起因する眼感染症はウイルスや細菌や原虫など様々な微生物に感染することで発症します。この先進医療で遺伝子検査を行うことで、原因ウイルスを網羅的に検査することができ、迅速な診断が可能となります。これによって、病原体診断に基づいた適切な治療が早期に開始することが出来ます。

先進医療に係る費用:29,900円
担当診療科:眼科

リスク

ウィルスが検出されない場合、複数回施行することがあり、偽陰性、偽陽性となる可能性があります。

副作用等

手技に伴う合併症(疼痛、出血、感染など)
全身性エリテマトーデスに対する初回副腎皮質ホルモン治療におけるクロピドグレル硫酸塩、ピタバスタチンカルシウム及びトコフェロール酢酸エステル併用投与の大腿骨頭壊死発症抑制療法 全身性エリテマトーデス(初回の副腎皮質ホルモン治療を行っている者に係るものに限る。)

概要

全身性エリテマトーデスの患者さんの治療経過中に高頻度に見られる、大腿骨頭壊死に対する発症抑制効果を検討する介入試験です。初めてステロイドで治療を開始する患者さんを対象に、抗血小板薬(クロピドグレル硫酸塩)、高脂血症治療剤(ピタバスタチンカルシウム)およびビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)の3剤を3か月間継続し、大腿骨頭壊死の発生を抑制しうるか否かをMRIを用いて検討します。多施設共同単群介入試験で予定組み込み症例は150例です。
 
先進医療に係る費用:0円
担当診療科:膠原病・リウマチ内科

リスク

本予防法は、トコフェロール酢酸エステル、ピタバスタチンカルシウムおよびクロピドグレル硫酸塩を使用することで、大腿骨頭壊死の発症を抑制することが期待されます。一方で、クロピドグレル硫酸塩による血小板の凝集抑制作用は、頭蓋内出血や消化管出血など、重篤な出血性病変をまねくリスクを有しています。

副作用等

クロピドグレル硫酸塩、ピタバスタチンカルシウムおよびトコフェロール酢酸エステルの投与により、出血性病変や肝機能障害、薬疹などを来すことがあります。また、ピタバスタチンカルシウムは横紋筋融解症の誘因となる可能性があります。これらの代表的な副作用以外に、吐き気や食思不振、便秘、胃部不快感、めまいなどの症状が出現することもあります。
膵臓がん(遠隔転移しておらず、かつ、腹膜転移を伴うものに限る。)に対するS-1内服投与並びにパクリタキセル静脈内及び腹腔内投与の併用療法

概要

腹膜転移を有する膵癌に対する標準的な治療法はFOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法、ゲムシタビン+アブラキサン、S(エス)-1(ワン)、ゲムシタビン単独療法など一般的な切除不能膵がんと同様の治療が行われていますが、点滴や内服で抗がん剤を投与しても、腹膜に到達しにくいことがわかっており、その治療成績は不良となっています。
本先進医療はS-1の経口投与に加え、パクリタキセルを経静脈および腹腔内に投与する治療法 (S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法)です。この試験に参加することに同意していただいた場合、「S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法」と、「ゲムシタビン+アブラキサン併用療法」のどちらかの治療を受けていただきます。どちらの治療を受けるかは、「ランダム」に五分五分の確率で決まります。今までの標準的治療に抵抗性であった腹膜転移を有する膵がん患者さんにより良い治療法が確立し、生活の質の向上を目指しております。

先進医療に係る費用:42,710円/1コース(全19コース)
担当診療科:消化器内科

リスク

現在あるほとんどの治療には、効果だけでなく「合併症」や「副作用」があります。この試験でうける治療にも、主に次のような合併症や副作用が知られています。これらはいつも出るとはかぎりません。また、ごくまれにですが重い症状になることがあります。

副作用等

(1)腹腔鏡検査の合併症

腹腔鏡検査の合併症率は0~4%、死亡率は0~0.2%と報告されています。おなかの中のがん668名(内11.5%が膵がん)の患者さんに対して腹腔鏡検査を施行した報告によると、手技に関する合併症は3.1%で、そのほとんどが創感染、創部出血、皮下気腫(皮膚の下に空気が迷入すること)であったことが報告されています。2名(0.3%)に心筋梗塞や肺塞栓症、1名(0.15%) が大腸穿孔に伴う敗血症で死亡されています。

(2)腹壁ポートによる合併症

腹壁ポートを留置する場合、ポート感染、固定不良、皮下水腫(水たまり)や血腫(血のたまり)、カテーテルのつまりや破損などが発生する可能性があり、ポートの入れ替えが必要となることがあります。

(3)抗がん剤治療の副作用

パクリタキセル治療
膵がん腹膜転移治療研究会を中心として実施された膵がん腹膜転移患者33名に対するS-1+パクリタキセル経静脈腹腔内併用療法の副作用報告は下記の図表の通りになります。
事象名 Grade1-4* Grade3 Grade4
白血球減少 21 (63%) 4 (12%) 2 (6%)
好中球減少 18 (55%) 8 (24%) 6 (18%)
ヘモグロビン減少 24 (73%) 1 (3%) 0
血小板減少 8 (24%) 1 (3%) 1 (3%)
食欲不振 17 (52%) 4 (12%) 0
発疹 5 (15%) 0 0
悪心・嘔吐 11 (33%) 3 (8%) 0
疲労 8 (24%) 1 (3%) 0
下痢 8 (24%) 2 (6%) 0
口内炎 8 (24%) 2 (6%) 0
脱毛 14 (42%) 0 0
神経障害 8 (24%) 0 0
ゲムシタビン+アブラキサン治療
膵がんの海外第Ⅲ相試験における副作用の発現率は95.7%(403/421例)であり、主な副作用は疲労226例(53.7%)、脱毛211例(50.1%)、悪心207例(49.2%)、末梢神経障害206例(48.9%)、貧血194例(46.1%)、好中球減少193例(45.8%)、下痢156例(37.1%)、血小板減少149例(35.4%)、末梢性浮腫141例(33.5%)、嘔吐133例(31.6%)でした。
重大な副作用として、好中球減少(55.9%)、白血球減少(46.2%)、リンパ球減少(3.3%)、貧血[ヘモグロビン減少(39.7%)、ヘマトクリット値減少(1.1%)、赤血球減少(1.1%)等]、血小板減少(27.6%)、汎血球減少(0.4%)、敗血症(0.8%)、しびれなどの末梢神経障害(57.4%)、麻痺(0.1%)、アナフィラキシー(0.2%)、間質性肺炎(0.8%)、呼吸不全(0.1%)、心筋梗塞(0.1%)、うっ血性心不全(0.2%)、脳卒中(0.2%)、肺塞栓(0.2%)、肺水腫(0.2%)、血栓性静脈炎(0.1%)、難聴(0.1%)、耳鳴(0.2%)、消化管出血(0.5%)、消化管潰瘍(0.1%)、腸管閉塞(0.2%)、肝機能障害(2.0%)、黄疸(0.1%)、膵炎(0.1%)、急性腎不全(0.4%)等があらわれることがあります。
ゲムシタビン静脈内投与、ナブ-パクリタキセル静脈内投与及びパクリタキセル腹腔内投与の併用療法

概要

腹膜播種を伴う膵癌症例を対象として、ゲムシタビン/ナブ-パクリタキセル点滴静注+PTX 腹腔内投与併用療法を施行し、導入相試験にて推奨投与量の決定と安全性の確認をし、探索相試験にて有効性および安全性の評価を行うことを目的とする。探索相試験の主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は抗腫瘍効果(奏効率・病勢制御率)、安全性、無増悪生存期間、投与完遂性、腹水細胞診陰性化率とし、登録症例数は導入相試験で推奨投与量に決定されたコホートを含む35例とする。

先進医療に係る費用:6,520円(投与1回につき)
担当診療科:消化器内科

リスク

腹腔内に投与されたパクリタキセルはリンパ管を介して血液中に吸収されますが、血中濃度が高くなることは少ないと言われています。しかし経静脈投与と同様に、骨髄抑制や末梢神経症状障害、アレルギー症状などの副作用を生じる可能性があります。またパクリタキセル腹腔内投与に関連する合併症としては、腹腔ポートの感染やカテーテルの閉塞などが約14%に起こりえます。その場合には、腹腔ポートを抜去したり、交換したりすることが必要となることもあります。
抗癌剤について一般的に言えることですが、体質によって副作用は大きく異なり、稀ではありますが、それまでの経験からは予想し得ない、生命に関わる重篤な副作用が発生する危険性もあります。

副作用等

転移性膵癌34例を対象に行われたゲムシタビン/ナブ-パクリタキセル併用療法の国内治験では、5%以上の頻度で生じた有害事象として、血小板減少、好中球減少、白血球減少、貧血、リンパ球減少、発熱性好中球減少、脱毛、末梢神経障害(手・足などがしびれる、ボタンをかけにくいなど、飲み込みにくい、など)、食思不振、皮疹、嘔気、倦怠感、下痢、ALT上昇、低ナトリウム血症が報告されています。このうち重症度が高い(グレード3もしくは4)の事象とその頻度は、好中球減少(70.6%)、白血球減少(55.9%)、貧血(14.7%)、血小板減少(14.7%)、リンパ球減少(14.7%)、発熱性好中球減少(5.9%)、末梢神経症状(11.8%)、下痢(5.9%)、皮疹(5.9%)、低ナトリウム血症(5.9%)、食欲不振(2.9%)、嘔気(2.9%)、ALT上昇(2.9%)でした。
周術期デュルバルマブ静脈内投与療法

概要

肺尖部胸壁浸潤癌(superior sulcus tumor:SST)に対する術前化学放射線療法後の術前後デュルバルマブ療法および手術不能例のデュルバルマブ維持療法の集学的治療の安全性と有効性を検証する。現在の標準治療では、SST の半数以上の患者において増悪が認められる。しかし、SSTが稀少な疾患であるため、積極的な治療開発が行われてこなかった。本試験では、術前後にデュルバルマブを追加することにより、治療成績の向上を期待するものである。

先進医療に係る費用:3,900円/1コース(全22コース)
担当診療科:呼吸器外科

リスク

この臨床試験に参加していただく患者さんには、下記のような副作用や合併症による健康被害が及ぶ可能性があります。私たちはそれらの可能性を低くするために、この臨床試験を慎重に計画しており、臨床試験中も患者さんの不利益が最小になるよう努力をいたします。しかし、このような不利益が起こる可能性をすべてなくすことはできません。なお、この臨床試験に参加することによる、ご自身への経済的な利益はありません。

副作用等

①急性輸注反応(インフュージョンリアクション)
  • 起こりやすい副作用
    ①疲労感、②発疹、皮膚の変化、③食欲不振・吐き気、④下痢

  • まれにしか起こらないが重い副作用
    ①間質性肺炎、②1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)、③重症筋無力症、筋炎 、④内分泌障害、⑤肝機能障害、⑥横紋筋融解症
タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養

概要

タイムラプスとは、受精卵を培養する際に培養器(インキュベーター)に内蔵されたカメラによって受精卵の発育過程を一定間隔で自動撮影するシステムです。従来より、受精卵の評価のために培養器から受精卵を取り出して顕微鏡で観察するという方法を行っていましたが、これでは受精卵に環境変化のストレスがかかるため、頻繁に観察することは困難です。受精卵の発育には一定の温度や酸素・二酸化炭素濃度を保つ必要があります。タイムラプスの導入により、受精卵に環境変化によるストレスをかけずに受精卵の観察ができる上、発育過程を連続画像として観察することで、受精卵の異常をより詳細にチェックできるようになります。

先進医療に係る費用:27,500円/1回
担当診療科:婦人科

リスク

本医療は人体に直接影響を及ぼす治療ではないため人体に対するリスクはありません。タイムラプス撮影法を用いた培養による受精卵・胚への影響については、従来法と比較して胚の発育に悪影響は及ぼさないことが示されています。

副作用等

本医療は人体に直接影響を及ぼす治療ではないため人体に対する副作用はありません。
子宮内膜擦過術

概要

子宮内膜スクラッチング(擦過)法とは、黄体期の子宮内膜を擦過することで、着床率や妊娠率の改善を促す治療法です。機械的刺激による内膜の修復過程で、サイトカインや成長因子などが放出されることで、脱落膜化が促進されたり、子宮内膜の創傷治癒過程において幹細胞を活性化する可能性があると言われています。複数回の胚移植後に着床を認めない着床不全の方に対して着床率、妊娠率の向上を目的に行います。胚移植前周期の黄体期に子宮内膜を一部擦過する処置を行います。

先進医療に係る費用:7,630円/1回
担当診療科:婦人科

リスク

子宮内膜擦過術を行うことで以下の合併症が発生する可能性があります。

①出血:子宮内腔へ機械的な刺激を与えるため少量の出血を認めることが多いですが、通常は数日で止まります。大量の出血を認めることはほとんどありませんが、その場合は止血術を行う可能性があります。
②感染:子宮内操作に伴い子宮やその周囲に感染を引き起こすおそれがありますが頻度は非常に稀です。処置後に下腹痛や発熱を認めた場合は抗菌薬治療を行うことがあります。
③子宮筋層の損傷:非常に稀ですが、擦過の刺激によって子宮筋層に傷がつくおそれがあります。出血が多い場合や筋層の損傷が大きい場合は止血術や子宮筋層の修復術を行うことがあります。

副作用等

出血や腹痛が起こることがあります。通常は数日で収まりますが、出血量が多い場合や腹痛が改善しない場合は診療科へご相談ください。
自家濃縮骨髄液局所注入療法 特発性大腿骨頭壊死症(非圧潰病期に限る。)

概要

特発性大腿骨頭壊死症は、厚生労働省により難病に指定されていて、大腿骨頭が原因不明の虚血により壊死し、壊死した大腿骨頭が圧潰した結果、痛みが生じ、日常生活動作が著しく制限される疾患です。そのため大腿骨頭の圧潰抑制が治療において重要となります。
本再生医療は自家濃縮骨髄液局所注入療法と称され、両側特発性大腿骨頭壊死症罹患患者さんのうち、片側の大腿骨頭が圧潰し人工股関節挿入予定で、対側の大腿骨頭が非圧潰の患者さんが対象となり、この非圧潰の大腿骨頭側へ本再生医療を実施します。

手術の方法としては、圧潰側の人工関節手術時に、腸骨から数ミリの皮膚切開により骨髄液を採取し、専用キットを用いた遠心分離により幹細胞を含む必要な細胞層のみに濃縮します。濃縮された骨髄液を数ミリの皮膚切開で非圧壊側の大腿骨頭の壊死範囲へ局所注入を行います。注入された濃縮骨髄液には血管・骨新生を持つ細胞群が含まれていることより注入部位で血管・骨の再生、壊死領域の縮小(骨再生)と大腿骨頭の圧潰抑制効果が期待されます。なお、2019年に日本整形外科学会と厚生労働省指定難病特発性大腿骨頭壊死症研究班により作成された診療ガイドラインにおいて、本再生医療は[推奨度2(行うことを弱く推奨する(提案する))/エビデンスの強さC(弱い)]と記載されています。

先進医療に係る費用:0円
担当診療科:整形外科・スポーツ診療科

リスク・副作用等

局所注入する細胞を生成するために、腸骨から骨髄穿刺針を用いて骨髄液を採取する行為が必要となります。そのため術中には腸骨の骨折、出血、神経損傷、術後に痛みや感染が起こる可能性があります。また、濃縮骨髄液調製時における細菌などの混入、局所注入時の神経損傷、血管損傷・出血、骨折がリスクとして挙げられます。術後においては骨折、感染症、血腫、皮下内出血、大腿周囲の痺れ(外側大腿皮神経障害)、下肢静脈血栓症、肺動脈血栓症がリスクとして考えられます。万が一、これらの事象が起きた際にはその治療に向けた最善の処置を行います。また、このような新しい医療には「未知のリスク」があるとされており、今回行う治療においても今までわかっていなかった合併症が発生することで不利益が生じる可能性があります。更に、調製した濃縮骨髄液が規格を満たさない場合は、投与による合併症も考えられるため、濃縮骨髄液の投与ができない可能性があります。

上記のようなリスクが生じる可能性はゼロではないものの、本研究代表医師が2020年に実施した安全性検証研究において、術後の疼痛や一過性の術直後の発熱が生じましたが全て重篤なものではなく、周術期の骨折や感染症、本再生医療等の提供に起因する疾病などの発生は認められず、自家濃縮骨髄液局所注入療法の手技自体の実行可能性と術後短期の安全性を報告しております。また、長期的な安全性に関しては、本研究代表医師らは、本再生医療を受けた患者さんの術後長期において、局所注入部位及び他の箇所において、腫瘍形成リスクの上昇は見られなかったことを報告しております。
アモキシシリン、ホスホマイシン及びメトロニダゾール経口投与並びに同種糞便微生物叢移植の併用療法 潰瘍性大腸炎(軽症から中等症までの左側大腸炎型又は全大腸炎型に限る。)

概要

潰瘍性大腸炎(UC)の、生涯にわたって病勢をコントロールしていく必要性に鑑みると、難治例に移行させないための治療こそ重要と考えられるが、その非難治例の左側・全大腸炎型UCに対する治療選択肢は十分とはいえず、5-ASA製剤とステロイド経口製剤の間に存在するアンメット・メディカル・ニーズを埋めることができる寛解導入療法が求められている。本研究は、軽症から中等症の左側・全大腸炎型のUC患者を対象に、多施設共同単群試験により、抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法の有効性及び安全性を検討する。                                   
方法)抗菌薬3種類(アモキシシリン、ホスホマイシン、メトロニダゾール)を2週間投与する。
アモキシシリンは、アモキシシリン水和物1,500 mg を3回/日に分割経口投与する。
ホスホマイシンは、ホスホマイシンカルシウム水和物3,000 mg を3回/日に分割経口投与する。
メトロニダゾールは、メトロニダゾール750 mg を3回/日に分割経口投与する。
抗菌薬3種類投与完了2〜7日後に、腸内細菌叢溶液200mLを1回、大腸内視鏡で投与する。患者の大腸内視鏡検査は盲腸まで挿入しFMTを実施することが望ましいが、挿入が難しい場合は無理なく挿入可能な部位にてFMTを実施する。FMT実施後、患者は1時間右側臥位で安静にする。
大腸内視鏡によるFMT実施の1週間後および2週間後に、注腸容器を用いて100mLの腸内細菌叢溶液を経肛門的に注入する。注腸実施後、患者は1時間右側臥位で安静にする。
○目標症例数:37例

先進医療に係る費用:0円
担当診療科:消化器内科

リスク・副作用等

抗菌薬投与に伴うもの
最新の添付文書に記載されている重大な副作用及びその他の副作用 ・呼吸困難、全身潮紅、蕁麻疹 [ショック、アナフィラキシー]
  • 発熱、頭痛・関節痛、皮膚や粘膜の紅斑・水疱・膿疱 [中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症]
  • 全身けん怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる [肝障害]
  • 尿量が少なくなる、むくみ、頭痛
  • 腹痛、下痢、血便
  • から咳、息切れ、発熱 [間質性肺炎、好酸球性肺炎]
FMTに伴うもの
消化管穿孔、腹膜炎、消化管症状(腹部膨満、鼓腸、おくび、腹痛、腹部不快感、便通異常、嘔気・嘔吐)、発熱、敗血症、疲労、虚脱、掻痒、紅斑