05 活動報告

2017.03.06

平成28年度韓国UNIST春期研究短期留学に2年生の久保誠君が参加しました

基礎研究医養成プログラムでは、平成25年度より生化学第一講座横溝岳彦教授の紹介により、韓国UNIST(Ulsan National Institute of Science and Technology)への春期研究短期留学を実施しています。平成28年度は、平成 29年2月27日~3月24日の26日間、2年生の久保誠君が参加しました。

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2017.05.16

久保 誠君 平成28年度韓国UNIST春期研究短期留学体験記を追加

短期留学体験記

久保 誠君

私は2017年2月27日から2017年3月24日までの26日間、韓国の蔚山市にあるUlsan National Institute of Science and Technology (UNIST)に短期留学いたしました。UNISTはその名前の通り、理系の学部のみで構成されており、世界中の留学生を受け入れている国際的な教育及び研究機関です。緑豊かで、巨大な池を有するほど広大なキャンパスは私にとって新鮮で、東京の真ん中にある順天堂大学とはまた違った魅力を持っていると感じました。

私が所属したProfessor Kwonの研究室のキーワードはTonicity-responsive enhancer binding protein (TonEBP)です。TonEBPは転写因子の一つで、osmoprotectiveに働く遺伝子を制御しています。TonEBPは腎臓で発現しており、細胞を高浸透圧から保護するために極めて多彩かつ重要な機能を果たしています。しかし、興味深いことに、TonEBPは腎臓だけでなく、ニューロンやマクロファージなどにも発現していることが知られています。実はTonEBPの別名はNFAT5(nuclear factor of activated T cells)で、その名の示す通りT細胞にも発現しており、TNF-αなどのサイトカインを制御しています。今回私がUNISTで行った実験は、TonEBPと免疫の関係を調べるためのものでした。Cre/loxpシステムによりミエロイド細胞でのみTonEBPがノックアウトされたトランスジェニックマウスの腹腔からマクロファージを回収することから実験は始まります。この作業は非常に難しく、腹膜に穴が開かないように細心の注意を払わなければなりません。一つでも穴が開くとマクロファージの回収はできないのですが、私も一度穴を開けてしまい、大変焦りました。続いて回収したマクロファージをTLRを刺激する物質(LPSやR-848)を加えて培養した後マクロファージを回収し、トータルRNAを抽出、逆転写後、リアルタイムPCRによりいくつかのサイトカインのmRNAの発現量を調べました。最初の内は慣れない作業ばかりで大変でしたが、mentorの方の丁寧かつ親切な指導に助けられ、すぐに慣れることができました。

今回の留学を通して気付いたことが一つあります。それは英語の重要性です。先輩方から英語の重要性はよく聞かされていましたが、今回は身をもってそれを痛感いたしました。英語ができなければ、海外で研究をすることはできません。周りとコミュニケーションを取ることができないからです。私も今回の留学中、知らない単語に出くわしたり、話したい言葉が出て来なかったりなど、大変苦労いたしました。研究者と聞くと、一人でラボに閉じこもり、誰とも会話せず黙々と実験に取り組んでいる姿を連想する方もいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。研究は臨床と同じようにチームワークが非常に重要です。周りとの意見の交換も研究の醍醐味の一つです。周りと意思の疎通を図ることは研究を行ううえでは必要不可欠であり、そのため海外で研究を行うならば英語の習得は避けては通れないでしょう。例え日本国内で研究をするにしても、英語は必須といえます。最先端の情報を得るためには論文を読む必要がありますし、自分で論文を書くときも英語が必要です。UNISTの学生や職員はみな英語が堪能で舌を巻きました。UNISTの学生はなんでもかんでも英語で勉強するらしく、英語に対する意識の高さを感じました。私も彼らを見習い、英語の勉強を頑張りたいと思います。

UNISTと連絡を取り今回の留学を実現してくださった横溝岳彦先生、貴重なアドバイスをたくさんくださった松崎紘佑先輩、全面的にサポートしてくださった基礎研究医養成プログラムの方々、UNISTで私の面倒を見てくださった韓国の皆様、そして関係者の皆様に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。