膠原病内科学講座
特色
当科は1969年にわが国で初めて設立された膠原病内科学の講座です。現在、膠原病・リウマチ内科という診療科は多施設にありますが、設立当初は膠原病を専門と診療する科は他になく、全国から数多くの患者さんが集まってきました。その当時からの蓄積された症例とその詳細な解析が、現在に至るまで日本の膠原病学をリードする講座としての地位を築いているといえます。一般的な大規模病院でも膠原病の症例は年間数例しか経験されませんが、設立から30余年たった現在、当科の外来には月に約4,000名を超える患者さんが来院し、常時50名以上の患者さんが入院しています。また、わが国における膠原病内科学を専門とする講座としては最も多くの医局員が在籍し、国内外の医療機関から膠原病・リウマチ学を学ぶため、数多くの留学生が参集しています。
膠原病とは
膠原病という名称は1942年に病理学者のクレンペラーによって初めて提唱され、膠原線維が炎症によってフィブリノイド変性に陥る共通の病理学的所見を有する疾患群として報告されました。その後の研究で、膠原線維だけでなく結合組織全般の炎症として捉えることが正しく、その病態の形成には、種々の自己抗体(主に抗核抗体)や関節、各臓器に浸潤した自己感作リンパ球などによる自己免疫が重要な役割を担っていることが明らかにされました。臨床的には関節炎がどの疾患にも認められることから、骨・関節・筋肉などの運動器の障害を特徴とするリウマチ性疾患の一つとして分類されています。また、結合組織は皮膚、関節、筋肉、血管、神経、リンパ節など全身に分布しているため、多臓器に障害を来す全身性疾患である特徴も有しています。膠原病に含まれる疾患としては、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病(MCTD)、全身性硬化症(SSc)、多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)、シェーグレン症候群(SjS)、ベーチェット病などや、一連の血管炎症候群などが上げられます。
膠原病の臨床症状・治療
膠原病では共通してみられる症状と、個々の疾患に特徴的な症状があります。共通してみられる症状の内、全身症状としては発熱、全身倦怠感、体重減少などがあります。局所的な共通症状としては関節痛、筋肉痛、寒冷時に指先が白くなるレイノー現象などが認められます。疾患特異的な症状では、SLEの顔面の蝶型紅斑、PM/DMのヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候、SScの皮膚硬化などがあり、他にMCTDのソーセージ様手指腫脹、SjSの目や口腔の乾燥症状などが特徴的です。その他、多彩な臓器障害が認められますが、肺(主に間質性肺炎)や腎臓(主に糸球体腎炎、間質性腎炎)などが侵されやすい臓器として知られています。これらの症状を改善する膠原病の治療には2つの柱があります。ひとつは炎症の制御と、それに関与する免疫異常を是正することです。炎症を抑えるためには非ステロイド性の抗炎症薬が用いられ、異常な免疫の是正には種々の免疫抑制薬や免疫調節薬が用いられます。中でも、副腎皮質ステロイド薬は強力な抗炎症作用に加えて、免疫抑制効果を有し、種々の膠原病の主たる治療薬として用いられます。その一方、感染を誘発したり、消化性潰瘍、さらに骨粗鬆症などの副作用を認め、しばしば患者さんに著しい障害をもたらすことがあるので十分注意して用いることが必要です。最近では免疫学的研究のフィードバックから、サイトカインと呼ばれる生理活性蛋白や細胞表面の抗原分子をターゲットとした生物学的製剤と呼ばれる薬剤が登場し、種々の膠原病の治療に用いられていますが、特にRAでは高い有効性が確認されています。また、薬物療法ばかりではなく、病因に関与する抗体や白血球を取り除く血漿交換療法や白血球除去療法などの治療も行われています。
当講座での学生教育について
医学部3年生から始まる臨床講義では膠原病の主な病気の臨床症状、診断方法や治療を知ってもらい、4年生での臨床統合講義で膠原病の総論からはじまり、各疾患の病因・病態や、検査値のみかたや治療法など、さらに詳しい疾患別の講義が行われます。また、4年生の後半から5年生にかけて行われる臨床実習では、学生一人に一人の指導医がついて症例を受け持ち、膠原病診療における実態を理解してもらうとともに、それを通して内科全般の診療に応用できる力を付けるべく実習を行っています。また、この実習期間中に受け持った症例を医局会の症例カンファレンスで発表してもらうことにより、受け持った疾患の病態の理解と実際の治療法などを系統立てて学んでもらうよう、教授をはじめ医局員全員で指導にあたっています。さらに膠原病の幅広い知識と理解を得られるようプレテスト、ポストテスト、少人数でのクルズスを行っています。6年生でのプレレジデントコースでは病棟グループに配属されることにより、さらに実践的な診療を学習することが可能です。膠原病の原因や病態を形成するメカニズムについてはいまだに解明されていない点も数多くありますが、免疫学を中心とした研究により次第にその病態の解明も進みつつあります。また、臨床的には多臓器が障害されるため、内科医として幅広い分野の知識が求められ、全身を診られるgeneralistとしての素養が養われます。新しい治療法も次々に開発され、その予後も飛躍的に改善されてきています。膠原病内科学は今後、ますます発展する非常に魅力的な分野のひとつといえるでしょう。これから医学を志す受験生、すでに医学を学んでいる医学生が膠原病内科を通じ、一人の医師として成長することを医局員全員で応援しています。








