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2024.04.18 (THU)

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若年者心臓突然死を招く遺伝性不整脈の新規モデルマウスを樹立

順天堂大学医学部薬理学講座の呉林なごみ 客員准教授、村山 尚 先任准教授と国立大学法人筑波大学、東京医科大学の研究グループは、ランダムに遺伝子変異を導入したマウスから、遺伝性心室性不整脈による突然死を発症するマウスを見いだし、リアノジン受容体2の新規ミスセンス変異が原因であることを突き止めました。本研究成果により心室性不整脈および心臓突然死の病態の解明と新たな治療法の開発が進むことが期待されます。

遺伝性不整脈は、心臓の電気的活動をつかさどっているイオンチャネルやその関連分子の遺伝子異常が原因です。致死的不整脈を引き起こし、心臓突然死に至る可能性のある重篤な病気です。原因分子やメカニズムの特定が進み、抗不整脈薬や高周波カテーテルアブレーション、植込み型除細動器などさまざまな治療法が行われていますが、いまだ根本治療法がなく、さらに効果的な治療法・予防法の開発およびそれに貢献できる疾患モデルの開発が望まれています。

本研究では、若年者の心臓突然死の主要な原因である遺伝性不整脈の病態解明を目的として、ランダムに遺伝子変異を導入した大規模マウスライブラリの心電図スクリーニングを行いました。その結果、自然発生的に致死的不整脈を呈する遺伝性不整脈モデルマウスの血統を樹立することに成功しました。遺伝学的な解析を行うことで、原因遺伝子は、心筋細胞の収縮に重要な細胞内カルシウムを制御しているリアノジン受容体2の新規ミスセンス変異(RyR2: p.I4093V)であることを突き止めました。加齢に伴う心機能低下や生後1年以内に心臓突然死するという、今までにない重篤な症状を呈するこのモデルマウスは、遺伝性不整脈の病態解明や薬効評価へ貢献することが期待されます。

■参考図

   

呉林先生

図:本研究で行なった実験の概要図

化学変異原によってランダム点突然変異を来したマウス群の心電図スクリーニングを行い、二方向性心室頻拍などの心室性不整脈を発症するマウスを見いだしました。順遺伝学手法によって、心筋リアノジン受容体をコードするRyr2遺伝子にc.12277A>G (p.I4093V)という変異があり、原因遺伝子であることを明らかにしました。このマウスは生後1年以内に突然死を来たし、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍に類似したモデルと考えられ、病態の解明や薬物治療の開発などに有効であることが示されました。

■掲載論文

【題 名】  A inherited life-threatening arrhythmia model established by screening randomly mutagenized mice.

                   (ランダム変異マウススクリーニングにより樹立した遺伝性致死性不整脈モデル)

【著者名】  Yuta Okabe, Nobuyuki Murakoshi, Nagomi Kurebayashi, Hana Inoue, Yoko Ito, Takashi Murayama, Chika Miyoshi, Hiromasa Funato, Koichiro Ishii, Dongzhu Xu, Kazuko Tajiri, Rujie Qin, Kazuhiro Aonuma, Yoshiko Murakata, Zonghu Song, Shigeharu Wakana, Utako Yokoyama, Takashi Sakurai, Kazutaka Aonuma, Masaki Ieda, and Masashi Yanagisawa*
(岡部雄太a、村越伸行a、呉林なごみb、井上華c、井藤葉子a、村山尚b、三好千香d、船戸弘正d、石井光一郎b、許東洙a、田尻和子a、秦如潔a、青沼和宏a、村方好子a、宋宗虎a、若菜茂晴e,f、横山詩子c、櫻井隆b、青沼和隆a、家田真樹g、柳沢正史d
a
:筑波大学医学医療系循環器内科、b:順天堂大学医学部薬理学講座、c:東京医科大学細胞生理学分野、d:筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)、e:理研バイオリソースセンター、f:神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター動物実験飼育施設、g:慶応義塾大学医学部循環器内科)

【掲載誌】  Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)

                   (米国科学アカデミー紀要)

【掲載日】  2024415

DOI      10.1073/pnas.2218204121

   

プレスリリース本文(PDF)