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2017.9.1 プレスリリース プレスリリース 大学・大学院

国際的な産学連携による創薬研究開発を開始 難治性創傷の新規治療薬開発へ期待 ~順天堂大学とHeptares社~

順天堂大学大学院医学研究科生化学・細胞機能制御学の横溝岳彦教授の研究グループは、英国の創薬会社Heptares Therapeutics, Ltd.(以下、「Heptares社」)と共同で、創傷治癒に関与するGタンパク質共役型受容体*1の1種であるBLT2を標的とした新規創薬研究開発プログラムを本年10月より開始します。

背景
日本をはじめとした先進国は超高齢社会を迎えつつあり、糖尿病患者や長期臥床を余儀なくされる患者は増加の一途をたどっています。糖尿病性皮膚潰瘍や、長期臥床で生じる(じょく)(そう)(床ずれ)に対しては有効な治療薬が存在せず、壊死や感染によって四肢の切断に至る症例も多数存在します。
そのような中、順天堂大学大学院医学研究科生化学・細胞機能制御学では、生理活性脂質受容体の単離やリガンド同定を推し進め、遺伝子改変マウスや受容体拮抗薬を用いて新規創薬標的分子とその対象疾患を見いだしてきました。今回の標的となるBLT2受容体が皮膚のケラチノサイト*2に発現し、BLT2を活性化する化合物がマウスの皮膚創傷治癒を促進することを明らかにすると共に、BLT2作働薬が難治性皮膚潰瘍の新規治療薬となることを示しました(Liu, J. Exp. Med. 211, 1063-78 (2014))。
一方のHeptares社は、さまざまなGタンパク質共役型受容体に対する創薬研究において、受容体結晶構造解析と独自アルゴリズムであるStaR®テクノロジーを用いた分子モデリングという斬新な手法で取り組み、様々な疾患の新規創薬標的とその候補薬剤の設計に成功しています。この度、Heptares社のアカデミアからのシーズ発掘の過程で、順天堂大学で行われているBLT2研究が発掘され、1年に及ぶ予備的検討と討論を経て、共同研究を行う事となりました。

研究内容について
本共同研究では、順天堂大学で横溝教授研究グループが発見した生理活性脂質受容体BLT2の作働薬候補を、Heptares社がStaR®テクノロジーを用いて分子モデリングし、数百種類の候補化合物を選定します。それらの活性を順天堂大学が測定し、in vitroとin vivo*3で皮膚創傷治癒に対する治療効果を判定します。この共同研究を通して、現在は難治性である褥瘡や糖尿病性皮膚潰瘍に対する新規治療薬の開発が期待されます。また、これらの開発は、ケラチノサイトに作用する初めての皮膚潰瘍治療薬の開発につながるのみならず、Gタンパク質共役型受容体の立体構造を分子モデリングして薬剤を開発するという新しい創薬アプローチにつながる可能性を秘めています。
代表者らのコメント
順天堂大学大学院医学研究科 生化学・細胞機能制御学 教授 横溝岳彦
「Heptares社は、Gタンパク質共役型受容体を標的とする創薬技術では世界的に非常に高い評価を得ています。BLT2受容体と疾患との関連性に関する我々の知識を大いに前進させ、当領域におけるドラッグデザイン・ストラテジーを発展させていく可能性を持つこの新プロジェクトにおいて、同社と共同研究できることを楽しみにしております。」

Heptares社チーフ・サイエンティック・オフィサー Fiona Marshall
「順天堂大学の横溝教授と彼の研究チームの方々と共同研究ができることを嬉しく思います。研究チームのロイコトリエン受容体BLT2に関する豊富な経験・知識と当社独自の受容体構造を基本とした創薬のノウハウを組み合わせることで、難治性創傷の治療を可能にする選択的な新規低分子を生み出すための強力な基盤を作ることが出来ます。順天堂大学と生産的な関係が構築されることに期待しています。」
用語解説
*1 Gタンパク質共役型受容体
GPCRとも称され、細胞膜を7回貫通する複雑な構造を有する細胞膜タンパク質である。ヒトゲノムには約1,000種類のGPCRがコードされている。それぞれの受容体は、特異的なリガンドによって活性化されると考えられているが、リガンドが同定されている受容体は約300程度である。重要な創薬標的とされており、現在、臨床医学の現場で使用されている薬剤の約半数は、何らかのGPCRを標的とした薬剤である。
 
*2 ケラチノサイト
皮膚の最も外側に位置する表皮を構成する主な細胞であり、角化細胞とも呼ばれる。互いに強く結合するとともに、水分をはじく性質をもつセラミド脂質を分泌し、生体のバリアとして機能する細胞である。皮膚損傷時にはケラチノサイトが速やかに増殖・移動して傷をふさぐが、難治性皮膚潰瘍ではケラチノサイトの増殖や移動が障害されている。
 
*3  in vitro、in vivo
in vitroは、「ガラスの中で」を意味するラテン語であり、試験管や培養器などを用いて作成した人工的な環境で行われる実験を指す。in vivoは、「生体内で」を意味し、主にマウス等の実験動物を用いた実験を指す。本研究では、BLT2受容体を人工的に発現させた遺伝子組換え細胞を用いたin vitro実験で、多数の候補化合物からBLT2作働活性を有する化合物を選定し、絞り込まれた少数の化合物を用いて、マウス創傷治癒モデルを用いたin vivo実験を行い、最終化合物を決定する。
■順天堂大学について
順天堂は、1838(天保9)年、学祖・佐藤泰然が江戸・薬研堀(現在の東日本橋2-6-8)に設立したオランダ医学塾・和田塾に端を発し、今につながる日本最古の西洋医学塾です。医学部をはじめとした5学部、3大学院研究科、6医学部附属病院からなる「健康総合大学・大学院大学」として教育・研究・医療を通じた国際レベルでの社会貢献と人材育成を行っています。詳細はhttp://www.juntendo.ac.jp/をご覧ください。
 
Heptares 社について
Heptares社は、広範囲のヒト疾患に関連する375個の受容体のスーパーファミリーであるGタンパク質共役受容体(GPCR)を標的とした創薬を行う医薬品開発企業です。同社独自の構造ベースドラッグデザイン技術を利用することにより、臨床的な有用性は証明されているもののこれまで創薬が困難であったGPCRを標的とした医薬品の創出が可能となります。このアプローチを使用して、同社はアルツハイマー病、統合失調症、がん免疫療法、片頭痛、依存症、代謝疾患等の治療法を革新する可能性を有する、画期的なパイプラインを構築しています。詳細はwww.heptares.comをご覧ください。
Heptares社は、日本発のバイオ医薬品企業そーせいグループ株式会社の子会社です。

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