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2020.10.14 (WED)

  • スポーツ健康科学部
  • 保健医療学部

競技復帰を目指すアスリートに自宅でできるリハビリ用トレーニング動画を公開

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リハビリ初期に行う「膝伸展運動」(動画より)

膝前十字靭帯再建術後の長期にわたる運動療法をサポート

順天堂大学(学長:新井 一)は、膝前十字靭帯損傷の再建手術を受けたアスリートの競技復帰を支援するため、リハビリ期(初期~復帰準備期)に応じたセルフトレーニング動画を作成し公開しました。この動画は、スポーツ医学やアスレティックトレーニング学を専門とするスポーツ健康科学部の教員と理学療法学を専門とする保健医療学部の教員、順天堂医院整形外科・スポーツ診療科(膝スポーツ専門外来)の医師がそれぞれの知見を活かして共同で作成しています。
膝前十字靭帯損傷とは…
膝前十字靭帯損傷(ACL)は、サッカーやバスケットボールなどのコンタクトスポーツにおいて多く発生するスポーツ外傷・障害の一つです。膝を安定させるために重要な膝関節の中にある靭帯が損傷し、競技スポーツ選手の場合には、多くの症例で手術が必要となります。また、一般的にACL再建術後は、スポーツ復帰までに8-10カ月の長期リハビリテーションが必要とされ、急性期を除く多くのリハビリ期間において、運動療法によるセルフトレーニングをしっかり行っていくことが重要となります。
順天堂医院整形外科・スポーツ診療科(膝スポーツ専門外来)においても、ACL損傷による手術件数は年間約150件と非常に多く、また、これまでの症例から、術後のリハビリテーションの重要性が競技復帰に大きく影響を及ぼすことが明らかとなっています(Takazawa et al.2017, Melick et al.2016)。

動画『膝前十字靭帯再建術後リハビリテーション』“3つのポイント”

【1】リハビリ期に合わせたセルフトレーニングを紹介
膝前十字靭帯再建術後のリハビリ期を「初期(~4週)」「中期(~12週)」「後期(~20週)」「復帰準備期(~32週)」の4段階に分け、各時期に適したセルフトレーニングの内容を実演で紹介しています。手術直後は再断裂や関節の線維化を予防するため、理学療法の観点から炎症症状のコントロールや、関節可動域と筋力の回復に重きを置いた動画を収録しました。また、術後3カ月以降からは理学療法と併用して行うアスレティックトレーニングを中心に紹介しています。
【2】スポーツ外傷の応急処置を紹介
氷での冷却(アイシング)や弾性包帯・テーピングでの圧迫により、少しでも炎症を軽減させることが、関節可動域の回復や痛みの軽減、膝関節の機能回復を早めるためにも大切です。そのため、自宅でリハビリ後に行える応急処置(RICE処置)についても動画で紹介しています。

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応急処置について解説
【3】「医学」「理学療法学」「スポーツ科学」それぞれの専門的知見を活かして動画を作成
膝前十字靭帯損傷で手術が必要となった場合、順天堂医院整形外科・スポーツ診療科では、膝屈筋腱または膝蓋骨腱を用いた関節鏡視下による低侵襲再建術を実施しています。これによるスポーツ復帰率は90%以上ですが、術後は理学療法によるリハビリ介入や、スポーツ科学的知見を取り入れたアスレティックトレーニングをリハビリ期に応じて適切に実施していくことが重要になります。今回の動画では、順天堂医院整形外科・スポーツ診療科(膝スポーツ専門外来)をはじめ、理学療法の観点から保健医療学部が、スポーツ科学に基づいたアスレティックトレーニングの観点からスポーツ健康科学部が制作に関わることで、スポーツ復帰を目指すアスリートが自宅でも一貫したリハビリを行えることを目指しています。

動画の公開について

今回制作した動画『膝前十字靭帯再建術後リハビリテーション』は、下記よりご覧いただけます。
<初期(術後~4週)>
<中期(~12週)>
<後期(~20週)>
<復帰準備期(~32週)>

動画教材制作にあたって ~制作チームからのコメント~

石島 旨章(大学院医学研究科 整形外科・運動器医学講座/整形外科スポーツ診療科 主任教授)
順天堂では、過去20年以上にわたり、様々な競技のレクリエーションレベルから日本代表レベルに至るまでのスポーツを愛する膝ACL損傷患者さんの治療にあたってきました。患者さんの真のニーズに応えるには、手術のみならず、術後のリハビリテーションが手術と同様かそれ以上に重要であるとの教えのもと、それを実践してきました。今回、順天堂の発展とともに、そのノウハウを広く一般に公開できるに至りました。多くのスポーツ愛好家のお役に立てることを願っています。

池田 浩(保健医療学部理学療法学科教授・整形外科スポーツ診療科)
私達、スポーツ整形外科医は100点満点を目標に膝ACL再建術を行いますが、手術そのものは100点満点のうち50点でしかありません。あとの50点は手術後のリハビリテーションにかかっています。日本代表選手であっても、膝ACL再建術によって日本代表選手に復帰することは可能ですが、それには、リハビリ期に合わせた適切なリハビリテーションが不可欠です。

高澤 祐治(大学院スポーツ健康科学研究科教授・整形外科スポーツ診療科)
膝ACL損傷は、主にスポーツ活動が要因として発生する外傷ですが、再建手術を行っただけでは競技復帰できません。手術後は、競技復帰に向け長期にわたる適切なリハビリテーションが必要になります。競技復帰に際して最も大切なことは、診察室で行う評価や画像に医師が満足することでなく、スポーツの現場で競技者が満足することです。そのためには、適切な理学療法やトレーニング、正しいスキルの再習得など、患者さんご自身のセルフエクササイズが重要です。本動画が、その一助となるのであれば幸いです。

宮森 隆行(保健医療学部理学療法学科講師・理学療法士/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)
膝ACL損傷は、スポーツ選手のキャリアを左右する外傷・障害の一つです。そして、手術が成功したとしても、患者さん自身は、長期にわたるリハビリテーションを実施しなければならないので心理的にも不安定な状態となります。本動画には、膝ACL再建術後に、患者さんご自身で実施できるセルフエクササイズを医師・理学療法士・アスレティックトレーナーの監修のもと、段階的に紹介しています。また、エクササイズを行う上での「コツ」や「注意点」も紹介しているので、安心・安全にリハビリテーションを実施することができるでしょう。

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石島 旨章 教授

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池田 浩 教授

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高澤 祐治 教授

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宮森 隆行 講師