2017年6月1日
教員・学生・卒業生の活躍

スポーツの舞台で輝く ~佐倉アスリート倶楽部 小出義雄さん ~

小出義雄先生

小出義雄先生・仲村明先生

順天堂大学体育学部(現 スポーツ健康科学部)の卒業生(昭和40年卒)であり、有森裕子さんや高橋尚子さん、鈴木博美さんなどトップアスリートを育成した指導者としても有名な小出義雄さん。指導者としての思いや、これからの順天堂に期待することなどについて、高校教師時代の教え子であり順大の後輩でもある仲村 明スポーツ健康科学部准教授(前 駅伝監督)と対談していただきました。


※写真は対談する小出義雄先生(左)と仲村 明先生

箱根駅伝出場を夢見て順天堂に入学

(仲村):順天堂大学の大先輩の小出義雄さんですが、私からすると高校の恩師となりますので、「小出先生」とお呼びしてお話をうかがえればと思います。
小出先生は、なぜ順天堂大学を進学先に選ばれたのですか?
 
(小出):僕の家は農家で、僕は男一人の長男だったから、農家を継ぐために農学校も卒業していてね。でも、かけっこは速かったし、大学からも誘いがあり、農家を継ぐつもりいたけど、そんな言葉を聞いてしまったら、行きたいなって思ってしまうものなんだよね。やっぱり自分の人生だから、自分が満足できるように送りたい、箱根駅伝に出たいと思って、順天堂大学に入学したんだ。何もない時代だったけど、大学では仲間みんなと夢をもって一生懸命トレーニングをしていたな。僕自身、在学中に箱根駅伝を走ることもできた。人間には「運」っていうものもあるから、そのチャンスをしっかり掴み取ることが大切だよね。

小出義雄先生

在学時は3度、箱根駅伝に出場した

選手も人間だから、その日ごとにコンディションは違う。
その日の選手の表情を見ながら練習メニューは柔軟に対応していた。

小出義雄先生

小出先生「練習をこなさなきゃならない生徒は大変だったよな」
(仲村):私自身は、中学時代に順天堂大学から来た教育実習生に影響を受けたことがきっかけで、順大への入学を志すようになったんです。順大に行くためには足が速くならないといけないと考えていた時に、相談した先輩から「小出義雄先生っていう素晴らしい指導者がいるから佐倉高校に来い。そこでトレーニングすれば間違いなく強くなる」と言われて、佐倉高校を目指して一生懸命勉強していましたが、翌年、小出先生が市立船橋高校に転勤するという噂を耳にし、戸惑ったことを覚えています。その後、進路を市立船橋高校に変え、希望していた小出先生の指導を受けることができるようになりました。練習はハードでしたが、先生は選手のことをよく見て練習させていましたよね。
 
(小出):僕は選手の顔を見て「この子は、今日はこの練習は無理だな」と思うと、練習メニューを変えてあげるの。何があってもスケジュール通りに進めようとする監督もいるけど、人間だから、その日その日でコンディションも違うでしょ。選手の顔を見ていればわかることだし、そこを見ながらやっていかないといけないよね。でも「全国優勝するための練習」をしていたから、生徒は大変だったよな。
 
(仲村):実際に私が入学する前の市立船橋高校は、県で40位ほどだったと思うのですが、1年目で県10位くらいになり、翌年2位に、3年目には県駅伝を制し、全国高校駅伝でも4位とあっという間に全国レベルまで駆け上がり、遂に私が卒業した年には全国優勝を果たしたことに周りもびっくりしていました。

“勝つ”には“勝つため”のトレーニングをするだけ

(小出):出場して2~3回のうちに高校新記録で全国優勝するにはどうしたらいいか、それを考えてトレーニングを組んだだけなの。選手がいないからできないとか、何がないから無理だとか、そういうことではないんだよ。そのためのトレーニングをすればいいだけで、何も難しいことはないけど、実際にトレーニングをしなきゃならない方はきつかったよな。
 
(仲村):「全国優勝を目指す学校としては日本一少ない練習だからな」って、ずっと言い聞かされてきて、ライバルたちはもっと練習しているんだと思っていました。インターハイで優勝した時に表彰台で隣り合った選手たちと練習について聞きあったら、自分の練習量は彼らの倍以上でした(笑)。でも、それを知ったらなおさら「自分が負けることはない」っていう自信が生まれて、その積み重ねで強くなっていったんだと思います。それに先生は選手の気分を乗せるのも、とにかく上手かった(笑)。調子が悪いなって思って走っていても、「調子いいな、調子いいな」って言って、調子が良くなるまでそばから離れなくて。そのうち「もしかしたら調子がいいのかな」って本当に思えてくるんです。

仲村明先生

仲村先生「小出先生の練習のおかげで自分は負けないという自信がつきました」

小出義雄先生

現在は佐倉アスリート倶楽部で指導をしている
(小出):「Qちゃん(高橋尚子さん)」の時にも、辛そうにしていた時にこんな言葉を掛けたの。「Qちゃん、今日は疲れている顔をしているけど、今日もしこのトレーニングができたら、金メダルが獲れるかもしれないよ。それで世界記録が出るかもしれないよ」ってね。そうすると、一瞬考えるんだよ。考えた時には、もうこっちの勝ちでね。そうすると必ずやるものなんだよ。これ1本やれば、世界記録が出るのかなって思ってね。そういう時の言葉って大事なんだよ。金メダルだって、金メダルが獲れるトレーニングをすれば、必ず獲れるものなんだよ。
 
(仲村):「やらされている」のと、「やる」のとの違いですね。やらされていると7~8割しかできないものも、やろうとすると100%が出るんですよね。
 
(小出):それに、選手との巡り会いも大事だよ。いい選手と出会うことに比べたら、指導なんて1~2割。いい選手と巡り会えるかどうかが、とても大きいんだ。今は「佐倉アスリート倶楽部」で選手の指導をしているけれど、倶楽部のコーチたちには「自分が選手を指導してあげているっていう気持ちになっては駄目だって」教えていてね。選手がいるから、監督もコーチもできる。それをありがたいって思う気持ちがないとね。

20年後、30年後を先取りしたトレーニングが大切

(仲村):最後にひとつ、これからの順天堂に期待することをお聞かせください。
 
(小出):今は、僕らの時代と違って学生の質もすごく上がっている。学生の質が上がれば、教員の質も上がるし、すべてのレベルが上がるよね。その中でトレーニングをしているわけだから、技術だって進歩する。例えば、今の大学新記録は、50年前なら世界大会(オリンピック)で金メダルを獲得しているレベル。でも、今、学生たちがその記録を出していることに対して喜ぶのではなくて、20年後、30年後にどういう記録が出ているかを考えてほしい。そしてその20年後の記録を目指して挑戦し、実際にその記録を出させるようにすることが必要なんじゃないかな。30年後、50年後のトレーニングがどうなっているかを想定し、それに近づけていくことが大事だと思うよ。箱根駅伝をはじめ、順天堂大学の学生たちが活躍する場はたくさんある。卒業生たちも伸びているし、みんなチャンスを逃さないように頑張ってほしいな。
 
(仲村):トレーニングを想像し、先取りして取り組み、結果を出していくということですね。私も学生たちがチャレンジングな姿勢を持って頑張れるような指導をしたいと思っています。本日は、どうもありがとうございました。
プロフィール
小出 義雄 YOSHIO KOIDE
佐倉アスリート倶楽部株式会社/順天堂大学スポーツ健康科学部客員教授

順天堂大学体育学部在学中に箱根駅伝を3回走り、昭和40年に卒業。その後は、高校教師として23年間にわたり陸上部の指導を続け、インターハイや全国高校駅伝などを全制覇。その後、実業団陸上部の監督を務め、バルセロナ五輪・アトランタ五輪で、銀・銅連続メダルを獲得した有森裕子氏や、シドニー五輪で金メダルを獲得した高橋尚子氏を指導した。2002年には、佐倉アスリート倶楽部株式会社を設立し、現在も多数の選手を指導している。
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