順天堂大学について

順天堂大学行動規範

はじめに

 本学は、学是「仁」と「不断前進」の理念、「三無主義」の学風に基づき、人格と人権を尊重し、教育・研究・医療の分野で真理(事実)を探究し、情報を適正に取り扱う大学として、信用と名声を維持してきました。私たちを取り巻く環境は、国際化、情報化、開発と気候変動の進む中で、大きく変化しています。このような時代にあって、本学の信用と名声は、教職員の皆さんの不断の努力によって維持されます。ここに本学は、公共性を有する法人としての社会的責任に応えるため、私たち一人ひとりが職務の遂行にあたり遵守すべき「行動規範」を確認し、制定します。
 皆さんがこの規範を遵守し、本学の信用と名声を守り、社会から一層の信頼を得るよう行動することを信じ期待します。

理事長 小川秀興

自由闊達な学内環境と真理の追究

(1)個人の尊厳、多様性の尊重

 私たちは、職務上接するすべての人々の人格と人権を尊重しなければなりません。本学は、学内に参集する多様な人々が自由闊達に交流できる環境が本学の発展に必要不可欠と考えており、人種、性別、性的指向・性自認、国籍等に基づく差別的な取り扱いや言動を許しません。

(2)自由で安全な学内環境の維持

 教育活動も研究活動も自由で安全な環境のもとでのみ、成果を上げます。本学は、このような環境を阻害するハラスメント及び脅迫的、暴力的言動を禁止します。また本学は、暴力団等の反社会的勢力との関係は持たず、このような関係を遮断していない企業や人との契約・取引を行いません。職務に関連して脅迫的あるいは暴力的言動に遭った教職員は、ただちに所属長又は各部門の事務責任者に連絡してください。

(3)真理の追求――適正な記録と報告

 教育・研究・医療は、基礎となる資料(データ)が事実に基づくものであり、正確に記録・報告される場合にのみ、価値あるものとなり、真理の追求、科学と社会の発展に寄与します。教育効果の分析、研究成果の報告、科学研究費補助金等公的資金の使途報告、診療録、診療報酬明細書、立替金請求等、教職員が作成するすべての記録と報告は、常に事実に基づく正確なものでなければなりません。また記録や報告は本学の定める期間、完全な状態で保存しなければなりません。

情報の適正管理

私たちは、職務上取り扱う情報、とりわけ学生、患者、職員等個人を識別できる情報(以下「個人情報」という。)や産学共同研究等に関する情報で機密保持が必要な情報(以下「機密情報」という。)を適正に管理し、本学の承認を得ずに、第三者に開示したり、漏洩してはなりません。なお第三者には、近親者も含みます。

(1)個人情報の取り扱い

 個人情報は、入手、利用、伝達、保管、廃棄等の全ての局面で適正に取り扱わなければなりません。個人情報は、伝統的にはプライバシーの権利(私生活をみだりに公開されない権利)として、また個人情報保護法の時代には、本人自ら個人情報を管理する権利として保護されます。皆さんは、本学の個人情報保護管理方針や本学の規則・規程(以下「学内規程」という。)に従って、個人情報を取り扱うようにしてください。

(2)知的財産の適正管理

 学外との共同研究の場合を含め、研究開発に関する機密情報は、本学に帰属する重要な知的財産です。学内での利用は、機密情報を職務上必要とする教職員のみに限るように管理して下さい。本学に帰属する研究開発の成果は、本学の事前の承認を得たときに限り、公表あるいは第三者に提供することができます。

(3)知的財産権の尊重

 コンピュータ・プログラムやコンテンツ、著作物等の知的財産を利用する場合には、本学所定の手続に従いライセンス条件を学内で審査した後、権利者から利用許諾を受け、ライセンス条件に従って利用します。無断複製や送信、条件違反の利用は行わず、他者の知的財産権を尊重する行動をとってください。

(4)情報の不当利用の禁止

 教職員は、産学共同研究の機会等に知得した株価に影響する情報等、職務に関連し入手した未公開情報を、近親者を含め第三者に漏洩したり、未公開情報を利用して事業や不動産に投資したり、株式取引(インサイダー取引)をしてはなりません。

資産の保護

教職員は、本学の資産を保護する義務があります。大学資産の不正使用、盗難、紛失の防止に努め、そのような状況が発生したときは、所属長又は各部門の事務責任者に報告してください。

(1)有形資産

 本学の有形資産は、たとえばパーソナル・コンピュータ、事務用品等の動産も、土地建物も、本学の承認した目的以外に使用してはなりません。

(2)情報システムの利用と管理

 本学の情報通信システムは業務用の目的で設置され維持されています。システムを個人的な発言、ショッピングその他、業務に関係のないホームページやサイトにアクセスするために利用してはなりません。また教職員は、本学の情報通信システムを不正アクセスやサイバーテロの脅威から守るため、本学に協力しなければなりません。システムの完全性・可用性・秘密性を維持するため、本学の許可を受けていない機器を接続してはなりません。

(3)情報資産

 本学の事業計画、財務情報、研究報告等で未公表の情報の中には、知的財産として保護される情報があります。皆さんは本学所定の手続きをとった場合を除き、未公表の情報を第三者に開示したり提供してはなりません。

(4)第三者ソフトウェア、パブリック・ドメイン・ソフトウェア

 本学が承認したソフトウェア以外のソフトウェア(以下「第三者ソフトウェア」という。)を、皆さんは本学の情報通信システムに導入してはなりません。第三者ソフトウェアにはマルウェア(ウィルス等の悪質プログラム)が潜んでいることや、本学が承諾しない利用条件が付されていることがあります。たとえば、パブリック・ドメイン・ソフトウェア、オープン・ソース・ソフトウェアと称し、インターネット上で無料で提供されるソフトウェアの利用規約には、ユーザー(教職員)がこれらのソフトウェアを利用して開発したソフトウェアを無料で一般に公開しなければならないというような、本学が受け入れることができない条件を含むことがあります。

利益相反行為

(1)事前申請と本学の承認

 教職員が本学と取引をする行為(たとえば教職員が土地建物を本学に売り渡す行為)は相互の利益が相反する行為ですので、学内規程により認められる場合を除き、事前に申請のうえ理事会の承認を得なければなりません。教職員又は近親者が影響力を持つ団体・法人と本学との取引についても同様です。

(2)外部資金の取り扱い

 本学が科学研究費補助金等の公的資金や、共同研究講座、寄付講座等の外部資金を受け入れる事例が増えています。研究の発展のために望ましいことですが、公的資金・外部資金の使途には、資金の提供者が定める条件や制約が付されています。これらの資金を個人資金と混同することなく、明確に区分し、付された条件に従って管理してください。

(3)競業行為

 教職員が本学と競業する行為に従事するときは、学内規程により認められている場合を除き、事前に申請し本学の承認を得なければなりません。

(4)購買取引先との公正な関係

 教職員は、購買取引先の代理人となったり、購買取引先に助言や支援をして見返りを要求したり受領することはできません。

贈物・接待、政治献金

(1)購買取引に関連した贈物・接待

 本学は、購買取引に関連し、教職員が購買取引先から贈物や接待を受けることを禁止します。ただし社会通念上、社交的儀礼の範囲にとどまる場合は除きますが、社会通念があいまいな場合には、公表されても恥ずかしくないかを基準にすることができます。

(2)政治家や公務員との公正な関係

 政府、行政機関、地方公共団体との公正な関係を維持し、国民や地域住民の信頼に応えるため、本学は、政治家や公務員に対する贈物や接待、会議中の弁当の提供等社会通念上認められ、かつ相手側にも異議のない場合を除き、禁止します。公務員や外国公務員(英国等、国によっては民間企業の役職員)への金銭や贈物の提供あるいは接待は贈賄罪として処罰される可能性があります。コンサルタント等の第三者経由でこれらの腐敗行為を行うことも禁止します。

(3)政治献金の禁止

 政治資金規正法等の法令を遵守した政治献金は適法ですが、本学は、政府や地方公共団体等の許認可や補助金を受けることが多い組織です。政治家・公務員との公正な関係を保ち、疑念を招かないためにも、本学の名あるいは本学の資金を用いて政治献金することはできません。

法令の遵守

この行動規範は、皆さんの仕事に一般的に適用される法律と法の精神を考慮のうえ定めましたが、たとえば次に掲げる法分野を含め、本学の活動に関連する法令はさまざまで、この行動規範ですべてをカバーすることはできません。皆さんは、この行動規範や学内の規程を遵守するほか、自己の職務に関連する法令を遵守して、職務を行ってください。

(1)環境法

 本学は、地球環境保護に関しても先進的な大学でありたいと考えています。教職員は、それぞれの職務が環境に及ぼす影響を評価し、教育・研究・医療に関連した本学の様々な活動が「持続可能な開発」と調和するものとなるよう、とりわけ廃棄物や物資の環境への排出に適用される法令や自治体条例を遵守しつつ、職務を遂行してください。

(2)輸出管理法

 平和で安全な国際社会を築くため、多くの国が通常兵器の過剰な蓄積の防止、核兵器、生物兵器、化学兵器等の大量破壊兵器の拡散防止及び安全保障上の脅威の懸念される国(懸念国)や団体・個人(取引禁止者)に軍事転用可能な技術・物品が渡るのを防ぐため、輸出管理法を施行しています。わが国では外国為替及び外国貿易法が安全保障貿易管理の基本法ですが、本学で扱う細菌、ウィルス、先端材料等の研究データも軍事目的に転用されたり、生物兵器、化学兵器等に利用されるおそれがあります。教職員は、取り扱う技術・物品が規制対象に該当するか否か、相手方が懸念国あるいは取引禁止者に該当するか否かに注意し、本学が別途定めるガイドラインを遵守するとともに、疑問や質問があるときはいつでも研究戦略推進センターに確認し、輸出管理法を遵守してください。

(3)競争法

 公正かつ自由な競争を促進するため、わが国は独占禁止法を、米国、ヨーロッパ諸国、中国等もそれぞれ競争法を制定しています。単独事業者が不公正な方法で市場支配力を取得又は維持する行為(独占行為)、競争関係にある複数事業者による談合、価格カルテル等の競争制限協定(不当な共同行為)、商品や役務が生産者・流通業者・最終需要者と流通する過程における差別的取扱いや拘束条件付取引等(不公正な取引方法)は違法です。本学が教育・研究・医療活動に関し他大学・病院等と競争制限協定を締結することはありません。また本学に物品や役務を納入する購買取引先に対しては、公正な競争を促すため、三社以上に見積を依頼することを原則としています。教職員は、購買取引先が公正な競争をしているか、本学も公正な取引をしているか留意しながら職務に当たってください。

公的な発言・報告と報道機関への対応

(1)公的な発言

 政治的な発言を含め、公共問題に関する発言は、本学の事前の承認を得た場合を除き、個人の発言であることを明確にし、誤解のないように行って下さい。

(2)官公庁に対する報告

 行政機関、司法機関、地方自治体等から法令や条例に基づき報告を命じられたときは、事実に基づき正確に報告しなければなりません。命令の内容と事実を確認のうえ、本学の定めた手続に従い報告してください。

 なお任意の調査の場合には、民間団体からの調査協力要請等の場合と同じく、本学所定の手続に従い、協力の意義、協力に要する本学の負担等を検討してください。

(3)インターネットでの発言

 いかなる場合にも他人の名誉を毀損したり誹謗中傷する発言をしないことは大原則ですが、インターネットでの発言は、拡散する中で思いもかけない利用がされ、批判や非難を受けることがありますので、一層慎重に行う必要があります。個人としての対外的な発言は、政治的意見の表明を含め、本学の発言と誤解されないように行ってください。

(4)報道機関への対応

 本学の組織、運営、活動等に関する報道機関からの問い合わせに対しては、広報担当者が対応します。このような問い合わせがあった場合は、自分の一存で回答せず、相手方の連絡先を確認し、広報担当者に知らせてください。

おわりに

行動規範は皆さん一人ひとりが遵守することによってのみ、本学の信用と名声をもたらします。皆さんの理解を支援し、規範違反の問題行動の予防と是正のため、次に掲げる窓口を設置しますので、積極的に利用してください。

(1)相談窓口

 この規範の運用・解釈に関する質問は、所属長、各部門の事務責任者、法人総務部長又は企画調査室長にお尋ねください。

(2)ヘルプライン

 問題行動の通報は、実名又は匿名で企画調査室長、内部監事宛に行うことができます。本学は通報者の匿名性を守るほか、実名の通報者には、調査結果を知らせます。本学は、通報者に対する差別や報復を許しません。