講座・研究室 医史学研究室【医史学・医の人間学】

連絡先

順天堂大学医学部医史学研究室
〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1
Tel 03-5802-1052
E-mail:ishigaku@juntendo.ac.jp

教室紹介

医の歴史を研究する研究室の歴史は・・・

順天堂大学医学部医史学研究室は、1962(昭和37)年、医療の最先端を担う場にこそ、医の歴史を真摯に学ぶ研究の場が必要、という小川鼎三の強い意思によって創設された。

初代教授小川鼎三は、日本を代表する脳解剖学者であり、小細胞性赤核の機能解剖学研究で学士院賞を受賞している。しかし、東京大学医学部教授時代から医史学に関心を寄せ、解剖学の歴史を中心に研究を進めてきた。麻田剛立の研究や、日本学士院編『明治前日本医学史』の第一巻である『日本解剖学史』(1955年)、名著『医学の歴史』(中公新書、1964、毎日出版文化賞受賞)など、医史学上の業績も多い。また、1960(昭和35)年から日本医史学会理事長に就任し、順天堂大学医史学研究室を事務局とし、衰退しつつあった日本医史学会を活性化させた。

第二代教授酒井シヅは、1969(昭和42)年に順天堂大学の助手となり、その後、小川と共に克明な資料調査と実地踏査を行い『順天堂史』の編纂にあたってきた。この他、『日本の医療史』(東京書籍、1982)、『全現代語訳 解体新書』(講談社学術文庫、1982)、『病が語る日本史』(講談社、2002)、『絵で読む江戸の病と養生』(講談社、2003)など、酒井シヅの著書は多い。また、日本医史学会常任理事として1999(平成11)年5月、順天堂大学有山記念講堂で行われた日本医史学会第100回記念総会の会長を勤めた他、医史学研究室に事務局をおいてきた谷口財団医史学部門国際シンポジウムの開催(1976-1998)国際アジア伝統医学会(ICTAM)の開催(1994)、アジア医史学会の設立(2001)など、酒井シヅは、医史学研究室の教授を退任した現在も、日本における医学・医療史の第一人者として世界的な活動を展開している。

1977(昭和52)年から研究室に所属しはじめた研究生は、医史学に対する関心の高まりとともに次第に増加し、2005(平成17)年現在、協力研究員、大学院生、研究生など合わせて20名が所属している。ほぼ全員が、日本各地や海外で医療、および、医学教育、看護教育、社会福祉教育等に携わっており、それぞれのテーマに応じた活発な研究活動を行っている。また、1994(平成6)年から科学史・医療倫理の近藤均が非常勤講師として(旭川医大に教授として転出)、1998(平成10)年から漢方の丁宗鐵が客員准教授として、また春山克郎が非常勤講師として加わった。

2003(平成15)年から大学院研究科は「医史学・医の人間学」と名称を変更した。

方針・モットーなど

医史学・医の人間学研究室は、日本の医史学研究のセンターとして、また、医科系大学において日本で唯一の医史学の名を掲げる研究室として、狭い範囲や専門にこだわらず、医史学を研究したいと望む人たちに広く門戸を開いてきました。
医療職はもっとも古くから存在した専門職のひとつであり、順天堂大学医学部は文字通り現代最先端の医学・医療の各分野を代表する専門家たちから構成されています。医史学・医の人間学は、この医の専門家集団の中にあって、医という人間の営みを、狭い専門分野に囚われない広い視野と自由な発想をもち、そして同時に、可能な限り冷静かつ旺盛な批判力をもって、遺された歴史資料の語りかけてくる言葉を聞き分け、歴史の流れの中に客観的に位置づけ、現代の医療に積極的な提言を行っていくことを、その使命としています。

研究

研究プロジェクト

医史学・医の人間学研究室では酒井特任教授、澤井助教を中心に、常時、複数の研究プロジェクトが進行している。

研究室所属メンバーの研究内容

大学院生、研究生など、研究室所属メンバーの研究テーマは、日本医療史、内外医療交流史から近現代日本の医療制度・政策史、漢方医療史、看護学史、医療関連職の形成史と多岐にわたっている。 研究室のゼミ(集談会)で研究 発表を行い相互に活発な議論を行いながら研究を進めている。

関連学会誌

研究分野は非常に広いため、基本文献も多岐にわたる。
ここでは、医学史・医の人間学関連の主要な学会誌・ジャーナルを紹介しておきたい。

  • 『日本医史学雑誌』(Journal of the Japan Society of Medical History) 日本医史学会発行
  • 『医学史研究』(Studium Historiae Medicae) 医学史研究会発行
  • 『生命倫理』(Bioethics) 日本生命倫理学会発行
  • 『科学史研究』(Journal of History of Science)日本科学史学会発行
  • Historia Scientorum 日本科学史学会欧文誌
  • 『生物学史研究』(The Japanese Journal of the History of Biology)日本科学史学会生物学史分科会発行
  • Sudhoff Archiv - ZEITSCHRIFT FUR WISSENSCHAFTS GESCHICHTE
  • Journal of the History of Medicine and allied Sciences
  • Bulletin of the History of Medicine
  • Medical History
  • Social History of Medicine
  • Vesalius - Acta Internationalia Historiae Medicinae
  • 「中華医史雑誌」

教育・医学部教育

教育の方針

「医史学・医の人間学」では、それぞれの研究課題を追求する中から、次の力を身につけた実践的な研究者を育てていこうとしています。

  1. 医史学・医の人間学の研究者としての自覚をもち、多面的かつ客観的な立場から医療を考えることができる。
  2. 現代の医療を取り巻く今日的な問題に関して、歴史的背景を視野に入れた具体的な提言を行うことができる。
  3. 自ら設定したテーマに関して研究を進めて一定以上の水準に達したオリジナルな論文を纏め、専門学会誌に発表することができる。
  4. 歴史研究の基本である文献・器物・フィールド調査の仕方、原典・古文書の読解力を身につけており、自己の研究領域に関して十分な史料批判を行うことができる。
  5. 研究室のゼミをはじめ、内外の研究会に参加して発表を行い、他者の批判を仰いで自己の研究に対する評価と反映と深化が行えるとともに、他者の研究に対しても適切な批判を行い正当な評価が行える。
名誉教授

経歴

専門分野

酒井 シヅ(さかい しづ)

医学部:名誉教授
医療看護学部:客員教授

sakai

特任教授

経歴

専門分野

坂井 建雄(さかい たつお)

医学部:特任教授
保健医療学部:特任教授

sakai_t

助教

経歴

専門分野

澤井 直(さわい ただし)

医学部・大学院医学研究科:助教

sawai

研究室所属メンバーの主な著書と論文

酒井シヅ特任教授をはじめとして、協力研究員、研究生たちなど医学部医史学研究室に所属しているメンバーの執筆活動は盛んであり、最近5年間に発表された著書・論文・総説・紹介等の数は1000編以上を数える。
ここでは医史学の各分野を代表する最近の主な著書と主要論文の一部を挙げておいた。

  • Sakai Shizu et al.ed.:History of Doctor-Patient Relationship, The Taniguchi Foundation 213, 1995.
  • Sakai Shizu et al.ed.:The Comparison between Concepts of Life-Brain in East and West, The Taniguchi Foundation 249, 1995.
  • Sakai Shizu et al.ed.:History of Psychiatric Diagnoses, The Taniguchi Foundation 303, 1997.
  • Sakai Shizu et al.ed.:History of Ideas in Surgery, The Taniguchi Foundation 281, 1997.
  • Sakai Shizu et al.ed.:Disease and Society, The Taniguchi Foundation 235, 1997.
  • Sakai Shizu et al.ed.:Medicine and Law, The Taniguchi Foundation 255, 1998.
  • Shizu Sakai,:Translation and the origins of Western science in Japan:The Introduction of Modern Science and Technology to Turkey and Japan-International Symposium 所収,1998
  • 酒井シヅ『日本の医療史』東京書籍、1982,
  • 酒井シヅ『江戸時代の西洋医学の受容』吉田忠編『東アジアの医学』勁草書房、1982.
  • 酒井シヅ『全現代語訳 解体新書』講談社学術文庫1982:新装版 1999.
  • 酒井シヅ、深瀬泰旦(訳)、シンガー、アンダーウッド著『医学の歴史』朝倉書店、1985-1986
  • 酒井シヅ、深瀬泰旦、『検査を築いた人々』時空出版、1988
  • 酒井シヅ『日本疾病史』放送大学教育振興会,1993.
  • 酒井シヅ『日本で初めて翻訳した解剖書』1995.
  • 酒井シヅ編『疫病の時代』大修館書店、1999
  • 酒井シヅ『医学史への誘い 医療の原点から現代まで』診療新社、2000
  • 酒井シヅ『病が語る日本史』講談社、2002.
  • 酒井シヅ『絵で読む江戸の病と養生』講談社、2003.
  • 酒井シヅ『すらすら読める蘭学事始』講談社、2004.
  • 丁宗鐵『最新漢方実用全書―漢方薬の正しい用い方と漢方療法のすべて 漢方医学シリーズ』池田書店,1994.
  • 深瀬泰旦「『日だまりの樹』を読む:手塚家のルーツと『日だまりの樹』」小学館文庫編『神様手塚を読む』1999
  • 吉田忠・深瀬泰旦編、『東と西の医療文化』思文閣出版、2001.
  • 深瀬泰旦『天然痘根絶史―近代医学勃興期の人びと―』思文閣出版、2002→第15回日本医史学会矢数賞受賞
  • 高安伸子「ハーバード大学図書館に残るヘボンの書簡」『日本医史学雑誌』47,572-3.2001.
  • 杉山章子『占領期の医療政策』 頸草書房、1995 →第8回日本医史学会矢数賞受賞
  • 杉山章子「占領期の病院改革」in吉田・深瀬編『東と西の医療文化』思文閣出版、2001
  • 杉山章子「国際医療福祉最前線」in 杉山編『国際医療福祉最前線』頸草書房,1999
  • 杉山章子「農村医学の形成と発展―佐久病院における地域医療活動の実践から」『日本医史学雑誌』46,507-551,2000
  • 高橋みや子「看護の歴史に関する研究の動向と今後の課題」『看護研究』33,53-63,2000.
  • 高橋みや子「山形県における近代産婆制度成立過程に関する研究―明治32年までの産婆規則類の制定を中心に」『日本医史学雑誌』47,697-755,2001.
  • 平尾真智子「大正4(1915)年制定の『看護婦規則』の制定過程と意義に関する研究」『日本医史学雑誌』757-796,2001.
  • 平尾真智子『資料に見る日本看護教育史』看護の科学社、1999.
  • 上林茂暢「1980-90年代の病院」in中山・後藤・吉岡責任編集『[通史]日本の科学技術』学陽書房、1998.
  • 郭秀梅 「清医胡兆新の来日記録と業績(一)(二)」『日本医史学雑誌』47,83-104,261-281,2001.
  • 卲 沛「日中両国における人痘接種法の比較研究」『日本医史学雑誌』50,189-222,2004.
  • ライダー島﨑玲子・大石杉乃編著『戦後日本の看護改革―封印を解かれたGHQ文書と証言による検証』日本看護協会出版会、2003.
  • 大石杉乃『バージニア・オルソン物語―日本の看護のために生きたアメリカ人女性』原書房、2004.
  • 黄煌『中医伝統流派の系譜』東洋学術出版社、2000.
  • 陶恵寧「『重訂解体新書』所引の中国書籍の研究―『医学原始』と『物理小識』について」『日本医史学雑誌』48,155-174,2002.
  • 魯紅梅 「日本植民地時代における韓国のハンセン病対策の研究― 一つの試論―」『日本医史学雑誌』223-261,2003.
  • 高林雅子 「眼科リハビリテーションにおける医療と福祉の統合過程―順天堂大学眼科リハビリテーションクリニックの活動から」『日本医史学雑誌』49,581-614,2003.

研究室への入学希望者への案内

医史学・医の人間学研究室は、日本で唯一の医科系大学における医史学を専門とする研究室として、専門にこだわらず、医史学を勉強したいと望む人たちに広く門戸を開いています。
しかし、大学院生としてどこに所属し、何を専攻して数年間を過ごすかは、入学を志望する貴方自身にとって、とても重要なことです。
まず、医史学研究室まで相談に来てください。広い視野に立ったアドヴァイスをいたします。
いかなるものごとに対してもフレキシブルに対応できる高い基本的能力をもつとともに、医史学・医の人間学を本格的に研究し、医史学・医の人間学の新たな地平を開いていこうとする志(こころざし)のある人が訪れることを期待しています。

連絡先

順天堂大学医学部医史学研究室
〒113-8421 東京都文京区本郷2-1-1
Tel 03-5802-1052
E-mail:ishigaku@juntendo.ac.jp