研究・分野紹介 薬効機能解析学
病態理解を基盤に、
基礎と臨床を結びつけて治療へつなぐ薬学研究
分野概要
医薬品の効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるためには、病態の分子基盤から臨床現象に至るまでを多角的に理解することが不可欠です。本分野では、薬理学・機能形態学・薬物治療学の連携により、老化・認知症、疼痛および支持・緩和医療、慢性炎症・痒み、呼吸器疾患、循環器疾患などを対象に研究を展開しています。分子・細胞レベルの機序解明、最先端のバイオイメージング、さらに臨床課題に基づくリバーストランスレーショナル研究を通して、新たな治療戦略と創薬の創出、ならびに患者のQOL向上を目指しています。
教員紹介
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研究テーマ:
- 病態理解を基盤に、基礎と臨床を結びつけて治療へつなぐ薬学研究

研究テーマ:

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研究概要
【薬物治療学研究室】 亀井・藤田・宮野
薬物治療学研究室では、リバーストランスレーショナルリサーチの実践を通して、科学的根拠に基づく疼痛制御とがん患者の支持・緩和医療に関するクリニカルクエッションの解決を目指し、臨床と基礎の両面から研究を行い、臨床的課題の解決策を提言できる高度医療人材の養成をします。 具体的には、難治性疼痛に対する新規治療法や薬物の副作用回避の戦略の開発とともに、がん治療による口腔粘膜炎や術後せん妄などに対する支持・緩和医療の研究に取り組み、患者の生活の質(QOL)向上を目指します。
| 研究テーマ |
|---|
| 1. 副作用の少ない鎮痛薬開発を目指した創薬基盤研究 |
【薬理学研究室】 粕谷・白鳥
薬理学研究室では、炎症性疾患の発症機構と新規治療法を探索しています。生体がストレスを受けると炎症反応に続き様々な病態を呈することが知られていますが、病的アウトプットに至るまでに本来正常に機能してきた分子群が時空間的にいかなる変化を遂げるのか?この命題の解明が、創薬プラットフォーム/新規治療法の構築基盤となります。我々が現在取り組んでいる対象疾患は、難治性の炎症性肺疾患、中枢傷害や慢性掻痒です。それぞれの疾患での組織変性や再生における介在細胞の機能変化と細胞内シグナルに着目し、実験ベンチからベッドサイドへ、疾患克服に向けて基礎研究の果たす役割を強く意識しながら研究に取り組んでいます。
| 研究テーマ |
|---|
| 3. ストレス応答細胞内リン酸化酵素の病態的機能と応用 |
| 4. 難治性痒みの克服に向けた基礎研究 |
【機能形態学研究室】 南・古宮
機能形態学研究室では、新たなバイオイメージングツールや生体機能の解析技術を開発することにより、これまでにない視点から体の仕組みや病気の成り立ちを理解するための研究を推進しています。これらの研究を通して、認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患、アトピー性皮膚炎や乾癬、ドライスキン、加齢皮膚などの皮膚疾患や皮膚病変、低栄養関連疾患、更年期障害、糖尿病、サルコペニア、視覚障害、腎疾患などに対する治療法や予防法の確立を目指しています。また、企業との共同研究により、医薬品や機能性食品の開発やバイオマーカーの探索、美容技術の創出にも取り組んでいます。学生の発案によって始まった研究や企業との共同研究も多く、研究室一丸となって人々の健康に貢献できる研究を目指しています。
| 研究テーマ |
|---|
| 5. 糖鎖科学に基づいた体の仕組みの理解と創薬 |
| 6. 難治性かゆみ・かゆみ過敏のメカニズム解明と治療応用 |
1. 副作用の少ない鎮痛薬開発を目指した創薬基盤研究(藤田)
疼痛は、世界的にみても医療機関を受診する主な理由の一つです。疼痛に伴う医療費の増加や労働生産性の低下による社会経済的な損失は大きく、その治療法の開発は世界的に重要な課題とされています。その一方で、副作用が原因で治療が中断される場合も少なくありません。モルヒネに代表されるオピオイド鎮痛薬は、がん疼痛などの強い痛みに高い効果を示す一方で、呼吸抑制や長期使用による鎮痛耐性などの副作用が問題となっています。そのため、強力な鎮痛作用を保ちながら、副作用の少ない新しい鎮痛薬の開発が求められています (図1)。

モルヒネ鎮痛耐性形成のメカニズムの解明と新しい治療薬候補の探索〜オピオイド受容体ヘテロ二量体およびその制御分子に着目〜
本研究では、モルヒネの副作用の発現に対し、オピオイド受容体ヘテロ二量体とその制御分子に注目しています。特に、ミュー(MOPr)およびデルタ(DOPr)オピオイド受容体からなる MOPr-DOPr ヘテロ二量体が形成されると、モルヒネによる細胞内の情報伝達経路が変化することがわかっています。最新の研究では、MOPr と DOPr の相互作用を妨げ、ヘテロ二量体の形成を阻害するペプチドを脳室内に投与すると、モルヒネの反復投与によって生じる鎮痛耐性の形成が有意に抑制されることが確認されました(参考文献1)。
さらに、MOPr-DOPr ヘテロ二量体の形成や成熟を促進する分子として、Receptor transporter protein 4(RTP4)を見出しています(参考文献6)。さらに、RTP4 遺伝子を条件付きで欠損させたマウスでは、モルヒネ反復投与後に生じる鎮痛耐性の形成が部分的に抑制されました(参考文献3)。
この RTP4 は、モルヒネ反復投与で発現が増加し、MOPr-DOPr ヘテロ二量体の細胞膜発現量を増加させて、鎮痛耐性形成に関わると考えられています (図2)。

これらの研究結果から、MOPr-DOPr ヘテロ二量体の形成を阻害する薬剤や、その形成や機能を制御する内因性分子 RTP4 を標的とした阻害薬の開発が、モルヒネに代表されるオピオイド鎮痛薬の副作用を抑える新たな治療戦略につながる可能性があると考えられます。
また、RTP4 は免疫担当細胞にも局在し、インターフェロン刺激遺伝子として感染に対する制御能が報告されています。 今後は、疼痛を含む炎症性疾患や病態への関与の可能性にも注目し、研究展開していきます(参考文献2)。
主要な参考文献:
- Zhou P., Kasai RS., Fujita W., Tsunoyama TA., Neyama H., Ueda H., Yokoyama T., Sakamoto M., Pigolotti S., Fujiwara TK., and Kusumi A., Single-molecule characterization of metastable opioid receptor heterodimers: soluble µ-δ dimer blocker peptide reduces morphine tolerance. Nat. Commun., 16, Article number: 9859, 2025, doi: 10.1038/s41467-025-64695-2.
- Fujita W. and Kuroiwa Y., Inflammatory Stimulation Upregulates the Receptor Transporter Protein 4 (RTP4) in SIM-A9 Microglial Cells. Int. J. Mol. Sci., 2024 Dec 21;25(24):13676. doi: 10.3390/ijms252413676.
- Fujita W., Uchida H., Kawanishi M., Kuroiwa Y., Abe M., Sakimura K. Receptor Transporter Protein 4 (RTP4) in the Hypothalamus Is Involved in the Development of Antinociceptive Tolerance to Morphine. Biomolecules. 2022 doi: 10.3390/biom12101471.
- Fujita W., The Possible Role of MOPr-DOPr Heteromers and Its Regulatory Protein RTP4 at Sensory Neurons in Relation to Pain Perception. Front. cell. neurosci., 14, 609362, 2020. doi: 10.3389/fncel.2020.609362
- Fujita W., Aiming at Ideal Therapeutics-MOPr/DOPr or MOPr-DOPr Heteromertargeting Ligand. Curr. Top. Med. Chem., 20, 32, 2020. doi:10.2174/1568026620666200423095231
- Fujita W., Yokote M., Gomes I., Gupta A., Ueda H., Devi LA., Regulation of an opioid receptor chaperone protein, RTP4, by morphine. Mol. Pharmacology. 95(1):11-19, 2019. doi: 10.1124/mol.118.112987
- Gomes I., Ayoub MA., Fujita W., Jaeger WC., Pfleger KDG., Devi LA.. G Protein-Coupled Receptor Heteromers. Annu Rev Pharmacol Toxicol., 56:403-425., 2016. doi:10.1146/annurev-pharmtox-011613-135952
- Fujita W., Gomes I., Devi LA. Heteromers of μ-δ opioid receptors: new pharmacology and novel therapeutic possibilities. Br. J. Pharmacol.,172(2):375-87, 2015. doi: 10.1111/bph.122663
- Fujita W., Gomes I., Devi LA.. Revolution in GPCR Signaling:
Opioid receptor heteromers as novel therapeutic targets. Br. J. Pharmacol, 171(18):4155-76, 2014. doi:10.1111/bph.12798
- Gomes I., Fujita W., Gupta A., Saldanha AS., Negri A., Pinello CE., Roberts E., Filizola M., Hodder P., Devi LA.. Identification of a µ-δ opioid receptor heteromer-biased agonist with antinociceptive activity. Proc Natl Acad Sci U S A. 110, 12072-12077, 2013. doi:10.1073/pnas.1222044110-
※ その他の業績は、https://researchmap.jp/wakako.fujita をご参照ください。
2. がん支持緩和医療における臨床課題を起点としたリバース・トランスレーショナルリサーチ(宮野)
本研究室では、がん支持緩和委医療における臨床現場で生じる未解決の課題(clinical unmet needs)を出発点とし、基礎研究によってその機序を解明し、新たな治療戦略へとつなげるリバース・トランスレーショナルリサーチを行っています。病院で得られる診療データ(リアルワールドデータ等)や、バイオバンクに保存された検体などを用いて、がん治療によるしびれや痛み(化学療法誘発性末梢神経障害)、口腔粘膜炎や手術後に発症するせん妄など、患者の生活の質(Quality of Life; QOL)を低下させる要因を明らかにします(国立がん研究センター中央病院 歯科、精神腫瘍科との共同研究)。
得られた臨床的疑問や結果をもとに、各種モデル動物や細胞を用いた基礎研究を行い、分子・細胞・組織レベルで病態メカニズムを解析します。さらに、これらの知見を基盤として、受容体機能解析、薬理学的スクリーニングを行い、漢方薬や既存薬のリポジショニングをはじめ新規治療薬を開発し、新たな治療選択肢の可能性を検討します。
本研究室の特徴は、「臨床データ解析 × 基礎実験 × 薬理学的アプローチ」を横断的に行える点にあります。基礎と臨床の両視点を持った研究者の育成を目指し、医療の現場へ繋がる研究を通じて、患者のQOL向上に貢献する新しい医療の創出を共に目指す意欲ある大学生・大学院生を歓迎します!

主要な参考文献:
- Miyano K, Uezono Y, Yamaguchi T, Hashimoto W, Komoriya S. Co‑treatment with gabapentinoid and Japanese herbal medicine goshajinkigan for CIPN is associated with longer duration and higher dose of Chemotherapy. Adv Ther, 42 (6): 2833-2852, 2025.
- Ohshima K, Miyano K (co-first auther), Nonaka M, Aiso S, Fukuda M, Furuya S, Fujii H, Uezono Y. The flavonoids and monoterpenes from Citrus unshiu peel contained in ninjinyoeito synergistically activate orexin 1 receptor: A possible mechanism of the orexigenic effects of ninjinyoeito. Biomolecules, 15 (4): 533, 2025.
- Miyano, K., Nonaka, M., Sakamoto, M., Murofushi, M., Yoshida, Y., Komura, K., Ohbuchi, K., Higami, Y., Fujii, H., Uezono, Y. The inhibition of TREK-1 K+ channels via multiple compounds contained in the six kamikihito components, potentially stimulating oxytocin neuron pathways. Int J Mol Sci, 25(9):4907, 2024.
- Miyano, K., Hasegawa, S., Asai, N., Uzu, M., Yatsuoka, W., Ueno, T., Nonaka, M., Fujii, H., Uezono, Y. The Japanese herbal medicine Hangeshashinto induces oral keratinocyte migration by mediating the expression of CXCL12 through the activation of extracellular signal-regulated kinase. Front Pharmacol, 12:695039, 2022.
- Miyano, K., Ikehata, M., Ohshima, K., Yoshida, Y., Nose, Y., Yoshihara, S., Oki, K., Shiraishi, S., Uzu, M., Nonaka, M., Higami, Y., Narita, M., Uezono, Y. Intravenous administration of human mesenchymal stem cells derived from adipose tissue and umbilical cord improves neuropathic pain via suppression of neuronal damage and anti-inflammatory actions in rats. PLoS One, 17(2):e0262892, 2022.
- Mizuguchi, T., Miyano, K. (co-first auther), Yamauchi, R., Yoshida, Y., Takahashi, H., Yamazaki, A., Ono, H., Inagaki, M., Nonaka, M., Uezono, Y., Fujii, H. The first structure-activity relationship study of oxytocin as a positive allosteric modulator for the µ opioid receptor. Peptides, 159:170901, 2022.
- Miyano, K., Yoshida, Y., Hirayama, S., Takahashi, H., Ono, H., Meguro, Y., Manabe, S., Komatsu, A., Nonaka, M., Mizuguchi, T., Fujii, H., Higami, Y., Narita, M., Uezono, Y. Oxytocin is a positive allosteric modulator of κ-opioid receptors but not δ-opioid receptors in the G-protein signaling pathway. Cells, 10(10):2651, 2021.
- Miyano, K., Eto, M., Hitomi, S., Matsumoto, T., Hasegawa, S., Hirano, A., Nagabuchi, K., Asai, N., Uzu, M., Nonaka, M., Omiya, Y., Kaneko, A., Ono, K., Fujii, H., Higami, Y., Kono, T., Uezono, Y. The Japanese herbal medicine Hangeshashinto enhances oral keratinocyte migration to facilitate healing of chemotherapy-induced oral ulcerative mucositis. Sci Rep, 10(1):625, 2020.
- Miyano, K., Ohshima, K., Suzuki, N., Furuya, S., Yoshida, Y., Nonaka, M., Higami, Y., Yoshizawa, K., Fujii, H., Uezono, Y. Japanese herbal medicine ninjinyoeito mediates its orexigenic properties partially by activating orexin 1 receptors. Front Nutr, 7:5, 2020.
- Miyano, K., Ohbuchi, K., Sudo, Y., Minami, K., Yokoyama, T., Yamamoto, M., Uzu, M., Nonaka, M., Shiraishi, S., Murata, H., Higami, T., Uezono, Y. A novel method for evaluating activity of transient receptor potential channels using a cellular dielectric spectroscopy. J Pharmacol Sci, 143(4):320-324, 2020.
- Miyano, K., Shiraishi, S., Minami, K., Sudo, Y., Suzuki, M., Yokoyama, T., Terawaki, K., Nonaka, M., Murata, H., Higami, Y., Uezono, Y. Carboplatin enhances the activity of human transient receptor potential ankyrin 1 through the cyclic AMP-protein kinase A-A-kinase anchoring protein (AKAP) pathways. Int J Mol Sci, 20(13):3271, 2019.
3. ストレス応答細胞内リン酸化酵素の病態的機能と応用(粕谷)
細胞へのストレスの負荷は、疾患の発症過程に密接に関わっている。我々は、細胞外からのストレス刺激を核内の転写機構制御にまで変換・ 伝達するシグナルを担うリン酸化酵素:p38(stress-activated protein kinaseともいう)が、様々な病態に関与することを見出した。特に、様々な病態の進展過程において、サイトカイン・ ケモカインの産生制御や細胞の運命制御を介して、p38が免疫・ 炎症作用を司る蛋白分子群ネットワークの中心に位置することを、遺伝子改変マウスを用いて解析し発表してきた (参考発表論文 : ①〜④)。
これらの研究と並行して、炎症性肺疾患の成立機構の解明と治療法の探索を、コアテーマの1つとして実行してきた。とりわけ、生存期間中央値が3年弱という極めて予後不良な特発性肺線維症 (IPF, 指定難病#85) に関しては、細胞治療も含めた新たな治療法の提案を行ってきた (参考発表論文 : ⑤〜⑦)。これまでの研究から提案されているIPFの成立様式としては、病態の入口としてのⅡ型肺胞上皮細胞(AECⅡ)、出口/終点細胞としての筋線維芽細胞(MyoF)が重要な働きを担うことが示唆されている。しかしながら、病態成立に決定的な因子は何なのか?については依然として全く不明である。 IPFに限らず、病態の成立には適応(防御)反応と侵襲反応があり、特に、薬物療法の対象となる時期には、この2つの反応が複雑な混合シグナルを形成している(図1)。したがって、この複雑な混合シグナルから、信憑性を持って標的分子を抽出する方法論が必要となる。

そこで、これまでの研究経験を生かして、炎症反応・細胞運命を司るp38の力価の異なる環境を演出/マウス肺AECⅡ特異的transgenic (TG) マウスを作出した。そして、それらTGマウスに肺線維化を誘導した際、p38の力価に準じて病理的アウトプットに変化(増加or減少)が確認されるならば、それに連動する分子を探索すれば治療ターゲットに効率よく辿り着けるのではないか?との仮説を立てた(図2)。事実、この方法論に準じて、肺線維化の重篤度と相関する変動遺伝子を絞り込むことに成功し、現在さらに、肺線維化関与分子の絞り込みを行っている(参考発表論文 : ⑧)。
一方、終点細胞として病巣形成の中心的役割を演ずるMyoFを正常な細胞に引き戻すことが可能になれば、効率の良いIPF治療法となり得るのではないか?という命題のもと、右図のようにIPF患者由来のMyoFを調製した。このMyoFをアッセイシステムとして用い、化合物ライブラリーのスクリーニングを行った結果、ひとたび成立した線維化肺を、エピジェネティック阻害剤が正常に戻しうる可能性を見いだした(参考発表論文 : ⑨)。
このように、我々は仮説を立てて、それを実証しながら、難病の新規治療法の探索に努めている。

【参考発表論文】
- Takanami-Ohnishi Y, Amano S, Kimura S, Asada S, Utani A, Maruyama M, Osada H, Tsunoda H, Irukayama-Tomobe Y, Goto K, Karin M, Sudo T, *Kasuya Y. (2002) Essential role of p38 mitogen-activated protein kinase in contact hypersensitivity. J. Biol. Chem. 277:37896-37903.
- Matsuo Y, Amano S, Furuya M, Namiki K, Sakurai K, Nishiyama M, Sudo T, Tatsumi K, Kuriyama T, Kimura S, *Kasuya Y. (2006) Involvement of p38α mitgen-activayed protein kinase in lung metastasis of tumor cells. J. Biol. Chem. 281:36767-36775.
- Namiki K, Matsunaga H, Yoshioka K, Tanaka K, Murata K, Ishida J, Sakairi A, Kim J, Tokuhara N, Shibakawa N, Shimizu M, Wada Y, Tokunaga Y, Shigetomi M, Hagihara M, Kimura S, Sudo T, Fukamizu A, *Kasuya Y. (2012) Mechanism for p38α-mediated experimental autoimmune encephalomyelitis. J. Biol. Chem. 287:24228-24238.
- Yoshioka K, Namiki K, Sudo T, *Kasuya Y. (2015) p38α controls self–renewal and fate decision of neurosphere–forming cells in adult hippocampus. FEBS Open Bio. 5:437-444.
- Yamazaki R, *Kasuya Y, Fujita T, Umezawa H, Yanagihara M, Nakamura H, Yoshino I, Tatsumi K, *Murayama T. (2017) Antifibrotic effects of cyclosporine A on TGF-β1–treated lung fibroblasts and lungs from bleomycin-treated mice: role of hypoxia-inducible factor-1α. FASEB J. 31:3359-3371.
- Tanaka K, Fujita T, Umezawa H, Namiki K, Yoshioka K, Hagihara M, Sudo T, Kimura S, Tatsumi K, *Kasuya Y. (2014) Therapeutic effect of lung mixed culture-derived epithelial cells on lung fibrosis. Lab. Invest. 94:1247-1259.
- Kobayashi T, Tananka K, Fujita T, Umezawa H, Amano H, Yoshioka K, Naito Y, Hatano M, Kimura S, Tatsumi K, *Kasuya Y. (2015) Bidirectional role of IL-6 signal in pathogenesis of lung fibrosis. Respir. Res. 16:99.
- *Kasuya Y, Kim JD, Hatano M, Tatsumi K, Matsuda S. (2021) Pathophysiological roles of stress-activated protein kinases in pulmonary fibrosis. Int. J. Mol. Sci. 22:6041.
- Ugai K, Matsuda S, Mikami H, Shimada A, Misawa T, Nakamura H, Tatsumi K, Hatano M, Murayama T, *Kasuya Y. (2020) Inhibition of the SET8 pathway ameliorates lung fibrosis even through fibroblast dedifferentiation. Front. Mol. Biosci. 7:192.
4. 難治性痒みの克服に向けた基礎研究(白鳥)
かゆみ(痒み)はアトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患だけでなく、皮膚の炎症が見られない糖尿病や腎疾患などの全身疾患をはじめ、30種類以上の疾患で高頻度にみられ、多くが抗ヒスタミン薬や抗炎症薬が効かない難治性です。このような痒みの多くは非常に激しい上に慢性化するため、長期的な強い不快感と、そこからくる肉体・精神的ストレスは睡眠不足や勉学・勤労意欲の低下につながり、患者のQOLを大きく低下させます。

痒み情報伝達は皮膚から始まり、末梢神経の一種である一次求心性神経、脊髄後角神経を介して最終的に脳神経に伝えられることで私たちは痒みを感じます。痒みは今から300年以上前に定義されていますが、長きにわたり弱い痛みだと認識され、研究はほとんど進んでいませんでした。しかし、技術の発展に伴い、ここ20年の間に痒みの表現型に関わる一方で痛みの表現型には関わらない神経、すなわち“痒み神経”が相次いで発見されました。そのため、現在では、痒みは痛みとは異なる独立した感覚として認識され、研究が進みつつあります。

従来の痒み研究は病態時の皮膚の変化やアレルギー反応を起点に行われてきましたが、未だ難治性痒み病態の全容理解には至っていません。そこで私たちは、痒みは皮膚だけでなく神経も関わるという事実に着目し、①病態時の痒みの神経基盤の解明を行うとともに、難治性痒みの原因の一つに痒みの生理機能の破綻があるという全く新しい着想の下、未だ人類が達成できていない②痒みの生理的意義の解明を起点に、難治性痒み病態の理解とそれに基づいた創薬標的創出を目指します。
【参考発表論文】
- Shiratori-Hayashi M, Tsuda M: IP3R1-dependent astrocyte calcium signaling in chronic itch. Neuroscience Research. 187:40-44, 2023
- Kanehisa K, Koga K, Maejima S, Shiraishi Y, Asai K, Shiratori-Hayashi M, Xiao M-F, Sakamoto H, Worley PF, Tsuda M: Neuronal pentraxin 2 is required for facilitating excitatory synaptic inputs onto spinal neurons involved in pruriceptive transmission in a model of chronic itch. Nature Communications, 13:2367, 2022
- Shiratori-Hayashi M, Tsuda M ‘Spinal glial cells in itch modulation.’ Pharmacol Res Perspect., 9(6):e00754, 2021
- Shiratori-Hayashi M, Yamaguchi C, Eguchi K, Shiraishi Y, Kohno K, Mikoshiba K, Inoue K, Nishida M, Tsuda M ‘Astrocytic STAT3 activation and chronic itch require IP3R1/TRPC-dependent Ca2+ signals in mice’ Journal of Allergy and Clinical Immunology, 147: 1341-1353, 2021
- Shiratori-Hayashi M & Tsuda M ‘Role of reactive astrocytes in the spinal dorsal horn under chronic itch conditions’ Journal of Pharmacological Sciences, 144(3):147-150, 2020
- Koga K, Yamagata R, Kohno K, Yamane T, Shiratori-Hayashi M, Kohro Y, Tozaki-Saitoh H, Tsuda M ‘Sensitization of spinal itch transmission neurons in a mouse model of chronic itch requires an astrocytic factor’ Journal of Allergy and Clinical Immunology, 145(1):183-191.e10, 2020
- Shiratori-Hayashi M, Hasegawa A, Toyonaga H, Andoh T, Nakahara T, Kido-Nakahara M, Furue M, Kuraishi Y, Inoue K, Dong X, Tsuda M. ‘Role of P2X3 receptors in scratching behavior in mouse models’ Journal of Allergy and Clinical Immunology, 143(3):1252-1254.e8, 2019
- Shiratori-Hayashi M, Koga K, Tozaki-Saitoh H, Kohro Y, Toyonaga H, Yamaguchi C, Hasegawa A, Nakahara T, Hachisuka J, Akira S, Okano H, Furue M, Inoue K, Tsuda M ‘STAT3-dependent reactive astrogliosis in the spinal dorsal horn underlies chronic itch’ Nature Medicine, 21, 927-931, 2015
5. 糖鎖科学に基づいた体の仕組みの理解と創薬(南)
1-1) 糖鎖機能分析ツールの開発と脳機能解明への応用
第三の生命鎖「糖鎖」とシアル酸について
私たちの体は、第一の生命鎖である「DNA」や第二の生命鎖である「タンパク質」という主要な生命鎖によって成り立っています。近年、これらに加えて第三の生命鎖である「糖鎖(とうさ)」が生命現象に不可欠であることが分かってきました。糖鎖は様々な種類の糖分子が鎖状に連なって構成されており、タンパク質や脂質に結合して細胞表面に豊富に発現しています(図1)。その糖鎖の末端によく見られるのがシアル酸と呼ばれる糖分子です。シアル酸は、からだの働きや成長に広く関わるほか、ウイルスや細菌が細胞を認識する際の目印にもなります。このように、糖鎖は目に見えない存在ですが、私たちの健康や生命活動を支える大切な役割を果たしています。

図1 健康や生命活動に重要な「糖鎖」
シアル酸切断酵素「シアリダーゼ」の働きを検出する蛍光プローブの開発
シアリダーゼは糖鎖からシアル酸を切り離す酵素であり、この働きは神経の機能や免疫反応、さらには病気の発症や進行と深く関係しています。しかし、体中でシアリダーゼが「いつ、どこで」働いているのかを調べることは容易ではありませんでした。そこで、我々の研究室では蛍光プローブBTP3-Neu5Acを開発しました(図2)。本プローブは、シアリダーゼが作用すると強く光る性質をもち、酵素が働いている部位を顕微鏡下で直接観察することが可能です。BTP3-Neu5Acは、生命現象の理解を深めるだけでなく、病気の仕組みの解明や新たな治療法の研究に役立つ技術です。近年では、インフルエンザウイルスの検出への応用も進んでいます。

図2 シアリダーゼの酵素活を高感度に検出するBTP3-Neu5Ac
記憶形成におけるシアリダーゼの役割
BTP3-Neu5Acを利用してラットの脳を染色すると、軸索が走行する白質領域に強いシアリダーゼ活性が検出されます(図3)。また、記憶に関連する海馬では、主要な神経線維である苔状線維の神経終末に比較的強いシアリダーゼ活性があることが分かります。そこで、記憶におけるシアリダーゼの役割を詳細に調べたところ、記憶形成の過程において細胞表面のシアリダーゼ活性が迅速に増加し、この活性変化がシアル酸の遊離、神経回路の形成、神経伝達の制御に関与していることが分かりました。
図3 脳のシアリダーゼ活性の分布今後の展望:糖鎖科学に基づいた神経疾患に対する治療戦略の構築
現在、シアル酸やシアリダーゼの働きに着目し、認知症、パーキンソン病、脳梗塞といった神経疾患に関する研究を進めています。生命活動に応じた糖鎖の構造変化や役割を正確に捉えることで、神経機能障害の仕組みを理解し、病気の予防や治療法の創出を目指しています。糖鎖科学に基づく研究は、神経疾患を理解するための新しい視点を提供するものとして期待されます。
1-2)糖鎖分解酵素を標的とする創薬への展開
シアリダーゼ活性の分布情報に基づく治療薬の開発
これまでに、脳以外の組織においてもシアリダーゼ活性の分布情報を活用し、糖尿病(図4)や更年期障害の改善を目指した治療薬の開発、循環器疾患の改善を目的とした機能性食品(当研究室所属の渡邉マキノ先生と共同で研究)、肌のたるみを改善する化粧品の開発などに取り組んできました。このように、シアリダーゼ活性の分布情報は、シアリダーゼの役割を理解・推定する上で有益な情報を提供します。

図4 シアリダーゼ阻害剤を利用した低血糖副作用を回避する糖尿病治療薬の開発
今後の展望:糖鎖分解酵素の活性分布情報を活用した創薬への展開
BTP3-Neu5Acの最大の特徴は、酵素量ではなく酵素活性そのものを検出できる点にあります。これにより、免疫組織染色とは異なり、実際の酵素の働きに即した組織分布を明らかにすることが可能です。現在、シアリダーゼ以外の糖鎖分解酵素についても活性プローブの開発を進め、得られた活性分布情報を整理・データベース化することで、酵素の働きと疾患との関係を網羅的に理解する取り組みを行っています(図5)。糖鎖分解酵素の活性分布情報は、治療標的となる酵素や組織を見いだす手がかりとなり、これまでにない視点からの創薬につながることが期待されます。

図5 糖鎖分解酵素の活性分布情報を活用した創薬への展開
主要な参考文献:
- S. Hata, A. M. Anuar, Y. Kurebayashi, T. Takahashi, H. Takeuchi, T. Otsubo, A. Minami. Sialidase activity imaging of different organs with BTP3-Neu5Ac. Advances in Experimental Medicine and Biology, in press.
- Y. Tsukamoto, K. Aoki, Y. Kama, H. Hosokawa, W. Saiki, N. Tsukamoto, K. Kato, Y. Hosokawa, R. Sato, N. Uesugi, Y. Fujita, K. Fukazawa, D. Funada, F. Suzuki, Y. Kurebayashi, Y. Urata, S. Uchiyama, W. Wang, A. Minami, T. Takahashi, M. Tiemeyer, Y. Narimatsu, T. Okajima, H. Takeuchi. Differential O-glucose elongation on a specific EGF repeat within the canonical ligand-binding domain regulates DLL1/4-NOTCH1 signaling. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 122(43), e2504827122 (2025).
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- A. Minami, T. Otsubo, D. Ieno, K. Ikeda, H. Kanazawa, K. Shimizu, K. Ohata, T. Yokochi, Y. Horii, H. Fukumoto, R. Taguchi, T. Takahashi, N. Oku, T. Suzuki. Visualization of sialidase activity in Mammalian tissues and cancer detection with a novel fluorescent sialidase substrate. PLOS One 9(1) e81941 (2014).
6. 難治性かゆみ・かゆみ過敏のメカニズム解明と治療応用(古宮)
2-1)かゆみとは何か
かゆみ(瘙痒)は、皮膚疾患に限らず、多様な全身性疾患に随伴して生じる感覚症状です。近年、抗体医薬をはじめとする分子標的治療の進展により、アトピー性皮膚炎を中心に、皮膚科領域におけるかゆみ治療は大きな転換期を迎え、急速な進展を遂げています。しかし、そうは言っても、アトピー性皮膚炎だけをとっても、金銭的問題や副作用の出現など、様々な理由で抗かゆみ治療が不十分な患者さんは依然として存在し、臨床上の問題となっています。また他方では、皮膚疾患以外の領域の抗かゆみ薬研究は殆ど進んでおらす、既存の治療法に抵抗性を示す「難治性のかゆみ」が特に内臓疾患を中心として多く存在し、その病態理解と治療戦略の確立についても未解決の課題として残されています。
このような背景のもと、私たち機能形態学分野では、かゆみを単なる皮膚局所の炎症現象としてのみ捉えるのではなく、皮膚と末梢~中枢神経までのかゆみ伝達経路すべてが総合的に関与する「感覚異常のシステム」として理解することを研究の基本方針としています。この経路の中でも、治療標的としての有用性から、特に皮膚と末梢神経に焦点を当てて研究を行っています。具体的な方法論として、①動物モデルを用いた行動学・組織学的解析、②分子・細胞レベルでの機序解明、③患者データに基づく臨床研究、という三層構造の研究戦略を相互に連関させることで、かゆみの発生および過敏化の本質に迫ります(図1)。

また私たちは特に、「通常であれば問題とならない刺激が、かゆみや不快感として知覚される」という感覚過敏現象に注目しています。皮膚瘙痒症、炎症性皮膚疾患におけるかゆみ過敏 (機械的アロネーシス、後述)、さらには敏感肌に代表される主観的感覚異常は、一見異なる病態にみえながらも、「非侵襲的刺激に対する感覚系の破綻」という共通基盤を有しているのではないかと考えています。
そこで私たちはこの共通基盤に基づき、
テーマ1:内臓疾患に伴う難治性かゆみ「皮膚瘙痒症」の誘発機序の解明と治療応用
テーマ2:炎症性皮膚疾患におけるかゆみ過敏(機械的アロネーシス)の治療戦略の開発
テーマ3:敏感肌を含む感覚過敏状態の誘発機構
の3つの研究テーマを主軸として展開していきます。
2-2)テーマ1:内臓疾患に伴う難治性かゆみ「皮膚瘙痒症」の誘発機序の解明と治療応用
近年、抗体医薬の台頭などにより、アトピー性皮膚炎に対する複数の新薬が相次いで市場に登場しており、皮膚科領域におけるかゆみ治療はここ数年で飛躍的な進歩を遂げつつあります。しかし、これら新薬により、皮膚科領域を中心に「治療できるかゆみ患者」の人口が大きく増加している反面、既存の抗かゆみ薬が奏効しない「難治性のかゆみ」が問題となっている疾患領域が依然として多く残されています。この「難治性のかゆみ」を呈する疾患群の根幹をなすものの一つに、「皮膚瘙痒症」があります。皮膚瘙痒症は、「発疹を認めないにも関わらずかゆみを訴える疾患群」の総称であり、様々な内臓疾患等によって引き起こされることが知られています(表1)。

炎症の目印ともいえる「発疹(皮疹)」をもたない皮膚瘙痒症は、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患と全く病態が異なるために、炎症性皮膚疾患を主な研究対象として発展してきたこれまでの抗かゆみ薬のみでは治療できていないのではないかと考えています。
そこで私たち機能形態学分野では、加齢に伴うかゆみ・糖尿病に伴うかゆみ・がんに伴うかゆみなど、複数の皮膚瘙痒症の原因疾患の病態にフォーカスし、その共通項を探ることで、皮膚瘙痒症に共通したかゆみ誘発メカニズムを解明し、その成果をもとにして、多くの内臓疾患のかゆみに横断的に使用可能な新規抗かゆみ薬を創生することを目指します。
2-3)テーマ2:炎症性皮膚疾患におけるかゆみ過敏の治療戦略の開発
荒れた肌にチクチクする毛糸が触れた場合、かゆみを感じることがあります。このように、専門用語で「かゆみの知覚過敏現象」のことを「かゆみ過敏」と呼び、「通常ではかゆみを生じない無害な機械刺激が、かゆみを誘発する知覚過敏現象」を「機械的アロネーシス (mechanical alloknesis)」と呼びます(図2)。

機械的アロネーシスという現象には、2つの重要なポイントがあります。一つ目は、ヒト(やほかの動物)が、機械刺激によってかゆみを感じるという点です。実は、かゆみの原因となる化学物質は多く発見されており、生体内外の化学物質によって引き起こされるかゆみのことを、「化学的かゆみ (chemical itch) 」と呼んでいます。これに対し、機械刺激によるかゆみは「機械的かゆみ (mechanical itch) 」と呼ばれ、誰もが経験したことがある反面、機械刺激がどうやってかゆみを引き起こすか、皮膚の中で起こっている事象は殆ど明らかにされていません。
もう一つのポイントは、機械的アロネーシスが知覚過敏現象である点です。通常私たちは、健康な皮膚に弱い機械刺激を受けた場合、「何かが触れた」としか感じません。また、強い機械刺激はかゆみではなく、痛みを引き起こします。つまり、肌荒れが起きた皮膚では、何らかの事象により、機械的かゆみが誘発されやすくなっていると考えられます。
機械的アロネーシスはアトピー性皮膚炎・ドライスキン・乾癬などの、皮膚の乾燥から発生されるとされる皮膚疾患でよく観察され掻く時の刺激によってかゆみが増幅するしくみをかたち作っています。掻き行動により皮膚が掻き崩されると、炎症が起こり、炎症はかゆみを増大するという悪循環が起こります。私たちはこの機械的アロネーシスの誘発メカニズムの解明に取り組むことで、この「かゆみと炎症の悪循環」を疾患のごく初期に止めることを目指します。
2-4)テーマ3:敏感肌の誘発機構の解明と治療戦略の開発
敏感肌は国際かゆみ研究フォーラムにおいて、「通常は刺激を与えないはずの刺激に対して不快な感覚(刺すような痛み、灼熱感、痛み、瘙痒感、チクチクする感覚)が生じる症候群」であり、さらに「これらの不快な感覚は、皮膚疾患に起因する病変では説明できない。皮膚は正常にみえる場合もあれば,紅斑を伴う場合もある。敏感肌は体のあらゆる部位、とくに顔面に影響を及ぼす可能性がある。」と定義されています。
この定義に基づいて考えれば、敏感肌は皮疹の有無や体の部位に左右されず、感覚の過敏性のみに依存する、いわば患者主観的な症状だということができます。従ってその症状の程度や特徴は多岐にわたり、病態も個人差が大きいことになります。
敏感肌の定義と上述した機械的アロネーシスと敏感肌の定義とでは、機械的アロネーシスが入力される非侵性の刺激として機械刺激のみが想定されている点と、出力される感覚が痒みに限定されている点が異なるものの、両者が通常非侵襲性の刺激による感覚過敏現象である点で一致しています(表2,古宮栄利子,鎌田弥生,冨永光俊,高森建二.Part 5-2 敏感肌の学術的定義と病態.山﨑研志編.『酒皶・敏感肌』.株式会社Gakken,2025:120–129 表2を改変)。そこで機能形態学分野では、機械的アロネーシスを敏感肌の一形態として位置づけ、いわゆる皮膚疾患だけでなく、一見正常な皮膚が過敏化するメカニズムの解明に多角的に取り組みます。

主要な参考文献:
- Toyosawa Y, Komiya E, Kaneko T, Suga Y, Tominaga M, Takamori K. Type 2 cytokine-JAK1 signaling is involved in the development of dry skin-induced mechanical alloknesis. J Dermatol Sci. 117(3): 52-60, 2025
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- Komiya E, Tominaga M, Hatano R, Kamikubo Y, Toyama S, Sakairi H, Honda K, Itoh T, Kamata Y, Tsurumachi M, Kishi R, Ohnuma K, Sakurai T, Morimoto C, Takamori K. Peripheral endomorphins drive mechanical alloknesis under the enzymatic control of CD26/DPPIV. J Allergy Clin Immunol. 149(3):1085-1096, 2022
- Komiya E, Tominaga M, Kamata Y, Y Suga, Takamori K: Molecular and Cellular Mechanisms of Itch in Psoriasis, Int J Mol Sci.; 21(21): 8406, 2020
- Itoh T, Hatano R, Komiya E, Otsuka H, Narita Y, Aune TM, Dang NH, Matsuoka S, Naito H, Tominaga M, Takamori K, Morimoto C, Ohnuma K: Biological Effects of IL-26 on T Cell-Mediated Skin Inflammation, Including Psoriasis. J Invest Dermatol. 139:878-889, 2019
- Komiya E, Hatano R, Otsuka H, Itoh T, Yamazaki H, Yamada T, Dang NH, Tominaga M, Suga Y, Kimura U, Takamori K, Morimoto C, Ohnuma K: A possible role for CD26/DPPIV enzyme activity in the regulation of psoriatic pruritus. J Dermatol Sci. 86:212-221, 2017