洛星高等学校(2024年7月27日)

洛星高等学校×順天堂大学 高大連携イベント開催!

-本物に触れる機会を高校生向け医学授業-

パリの夜空にオリンピック開会式の花火が上がるころ、京都・洛星高校では医学の話に目を輝かせる生徒さんがいました。2024年7月27日、「洛星高校×順天堂大学 高大連携特別授業」が開催されました。

今回の特別授業では、順天堂大学卒(現関西医科大学 小児外科学講座教授)土井崇先生の講演、MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会によるMEdit授業、そして医学教育研究室先任准教授小川尊資先生による大学紹介と、3時間の想定時間を超過するほど濃密なプログラム。順天堂の医学生や研修医も東京から新幹線で駆けつけ、豪華な布陣でお届けしました。

夏休みにも関わらず、特別授業に参加してくれた17名の熱意あふれる生徒さんたち。順天堂の教員たちは何を伝えたのでしょう。小川尊資先生が「本物を見せたい」と意気込んだ授業の一端をレポートします。

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学校法人ヴィアトール学園 洛星中学校・洛星高等学校の正面玄関。重厚な校舎です
■手術のリアルを見てみよう ―小児外科・土井崇先生の真剣講義―
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土井先生の解説を聞き、赤ちゃんの想像を絶する小ささに、思わず手を見つめる生徒さんたち

まず教壇に立ったのは土井先生。「医療のリアルな世界をお見せします」と話し出して投影したのは、先天性臍帯ヘルニアで生まれた新生児の写真。身体が融合している双子や、おへそから球体のように膨れ上がった臍帯の中に腸が飛び出している子…。実際の症例写真の数々に、生徒さんは息を呑みます。

「小児外科の仕事は、子どもの人生を一気に変えるものです。明日死んでしまうかもしれない子が、ぼくの治療によって、学校に行ったり、結婚したり、子どもを生んだりできるようになるかもしれない」。 仕事のやりがいを語る土井先生。

土井先生が手術したもっとも小さい赤ちゃんのひとりは、生後2日、体重420gの新生児。「手のひらにあかちゃんの頭からつま先まですっぽり入る」ほど小さい子どもだったといいます。そんな小さい赤ちゃんに土井先生はどう向き合ったのでしょう。
実際の手術映像を見ながら、「同じ小腸なのに、太い小腸と細い小腸がありますね」と解説していく土井先生。手術のときにドクターが何を考え、何に注意しているのか、臨場感あふれる話を一同は食い入るように聞いていました。

■バナナで病理診断を学ぶ!? ―遊んで学ぶMEdit 授業―

症例写真から手術映像まで、ヒリヒリするような医療の「本物」に触れたあとは、ガラリと雰囲気が変わって、遊んで学ぶ「MEdit授業」へ! MEdit Lab代表・人体病理病態学講座教授小倉加奈子先生と、同講座助手發知詩織先生がハツラツとした笑顔で登場。おふたりは病理医です。

「病理医って聞いたことがある人は?」と尋ねると、知っている人は一人。それもそのはず。病理医は日本全国のドクターのなかでも0.6%しかいない専門医。病気になった細胞や組織を肉眼や顕微鏡で観察し、それがどんな病気で、どの程度悪いのかをジャッジするのが仕事です。

高校生には馴染みのない病理診断ですが、この仕事を楽しく体感できるゲームを發知先生がご案内。MEdit Lab特製の「バナオーマ」というカードゲームに挑戦です。
このゲームは、緑っぽい状態から真っ黒状態まで、だんだん熟していく14段階のバナナカードを見て、どこが「未熟・適熟・過熟」なのか境目を決めるもの。遊んでみると、グラデーション状の変化のどこに区切りをつくるのか、意外と難しく、盛り上がります。

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「このバナナ、食べごろ?熟れすぎ?」
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チーム対抗戦で盛り上がる生徒さんたち

じつはこの苦労、実際の病理診断現場と同じものだとか。「診断とは、グラデーション状に変化する状態を、どこかで区切って病名をつける行為です」と小倉先生。病理診断は、細胞のかたちを見て、正常からどれだけ逸脱しているかを診断する主観的な診断だといいます。スライドには、正常な大腸粘膜と、良性腫瘍(腺腫)、そして悪性腫瘍(がん)の写真が映し出されます。

小倉先生はこう締めくくりました。
「病理診断は、医療現場での特殊な行為に見えたかもしれませんが、じつはみなさんが生活のなかで何気なくおこなう判断に似ています」。このバナナはまだ甘くないとか、このお肉は傷んでいるとか、私たちは五感を駆使して微細な判断をしています。
「医学を、医学部で学ぶ特別な専門科目だと思いすぎずに、日常生活や高校で学ぶさまざまな科目とも関係づけてみてください。土井先生もおっしゃったように、さまざまなことに興味関心を向けている状態が大事です」。

テーブルコーチには、土井先生や、順天堂大学医学部2年生や順天堂大学医学部附属浦安病院で研修中の研修医の姿も。特別講義に駆けつけた研修医は、高校1年生のとき、東京・広尾学園高等学校で開催された小倉先生の病理診断体験セミナーに出席。そのときのことを鮮烈に記憶しているといいます。今日参加した生徒さんのなかからも、数年後には順天堂メンバーとして後輩の指導にあたる人が出てくるかもしれません。

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ふだんの病理診断について解説する小倉先生
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チームでのディスカッションを楽しく語る生徒さん。うふふと笑うのは小倉先生と一緒にMEdit授業をナビした病理医の發知先生
■データや実績が語る、順天堂の魅力 ―小川先生による大学紹介―

最後のプログラムは、小川尊資先生による大学紹介。学生に「順天堂大学医学部ってどんなところ?」と聞いてみると、こんな答えが返ってくるのです。「雰囲気が明るい」「教育が手厚い」「語学にも力を入れている」……。

では、なぜ学生たちが明るく和気あいあいとしているのか? どんな手厚い教育が行われているのか? 小川先生は医師国家試験合格率一覧や日本医学教育評価機構(JACME)の評価報告書など、具体的なデータや外部からの評価を例示しながら、順天堂大学医学部の魅力をたっぷり紹介しました。

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順天堂の魅力をたっぷり語る小川尊資先生
■最後に……

授業終了後、感想を聞いてみました。「母が病院に勤めていて医学部を目指している」という生徒さんは、「実際の写真がリアルでびっくりしたけど、鼠径ヘルニアの手術がすごく印象的だった」「意外とバナナの病理診断が難しかった。でも楽しかった」と満足気な様子。

同席くださった洛星高校の先生からも「医学部を目指しているものの医師の仕事がどんなものか具体的にイメージできていない生徒も多いので、今回の特別授業がとても刺激になったよう」と感想をいただきました。

今後も、順天堂大学は、首都圏に留まらず全国各地の高校と連携し、多くの生徒さんに医学の魅力をお伝えしていきます。高大連携イベント、これからもご注目ください。