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女性スポーツセンター Women in Sport 女性スポーツに関する情報発信サイト
vol.015
コンディショニング

女性アスリート外来 ~開かれた「チーム医療」を目指して

 順天堂大学医学部付属順天堂医院と、同浦安病院内に2014年10月、女性アスリート外来がオープンしました。開設以来、多くの人が訪れていますが、実際にどのような人が受診し、どのような診療が行われているのでしょう。産婦人科医である北出真理順天堂大医学部准教授(女性スポーツ研究センター副センター長)にお聞きしました。
北出真理

北出真理

順天堂大学産婦人科准教授、女性スポーツ研究センター副センター長。
1991年順天堂大学医学部を卒業後、同大産婦人科に入局。専門は生殖内分泌(月経異常、不妊症など)、子宮筋腫、子宮内膜症などに対する腹腔鏡手術。日本産科婦人科学会専門医、日本産科婦人科内視鏡技術認定医、日本生殖医学会生殖医療指導医。

女性アスリートに多い疾患は?

北出医師によると、これまでに女性アスリート外来を訪れた人たちは、陸上選手を筆頭に、新体操やクラシックバレエなどいわゆる“審美系”の選手が多い傾向にある様です。年齢別では14~18歳くらいが最も多く、次に大学生、社会人選手の順となっています。受診理由は、主に次のように分けられます。
1)月経痛や月経前緊張症(PMS)などの月経前後の不調 (月経移動希望者を含む)
2)無月経 
 ・初経が遅れている(15歳になっても初経がこない:遅発月経、18歳の時点で初経がない:原発性無月経)
 ・月経が止まってから3ヶ月以上になる:続発性無月経
3)アスリート貧血
4)疲労骨折やシンスプリントなど整形外科疾患に加えて、月経異常がある場合
5)栄養相談や心療内科受診を希望する方
月経痛やPMSの場合は、「ピルの処方でほとんどが軽快します」と北出医師は言います。

「ピルのよいところは、月経時の不調を改善すると同時に、月経期間の移動もできるところです。試合日や公演日に当たらないよう、月経開始日をずらすことができるからです。ピルは、うまく使えば女性アスリートの強い味方になってくれると思います」
  
一方で、人によって治療法が大きく異なるのが無月経です。北出医師によると「訪れる人の病気の要因や女性ホルモン分泌パターンはさまざまで、比較的深刻な状態が多い」とのこと。
「満18歳までに初経がない場合を原発性無月経と言いますが、実際のところ14~15歳までに初経がなければ、骨量の減少が始まっている場合も少なくありません。また、月経が一度開始したにもかかわらずまた休止してしまう続発性無月経でも、18歳までに再開の兆しがなければ、ほとんどの場合何らかの治療が必要です」
 
ただし、前述したとおり、その要因や背景は人によってさまざまです。

「体脂肪が少なかったり、ストレスがあったり、過度なトレーニングに見合う栄養摂取ができていなかったりなど、人によって無月経の要因は多種多様であり、治療法は決してパターン化できるものではありません。多くの場合、産婦人科だけでなくさまざまな専門分野からのアプローチも必要になってきます」
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そこで生きるのが、女性アスリート外来が採用している「チーム医療」。産婦人科のほか、整形外科、メンタルクリニック、そしてスポーツ栄養士がタグを組み、情報を共有しながら診療を行うチーム医療の体制が整えられているのです。
 
「例えば、14~15歳の人の無月経の治療の場合、いきなりホルモン治療をするのではなく、まずは栄養士による栄養指導から始めて様子を見ます。また、無月経でなおかつ疲労骨折を繰り返す人の場合は、整形外科とコラボレーションしながら適切な治療法を探っていきます。患者さんひとり一人の症状に合わせた、きめ細かい治療ができる『チーム医療』は、私たちの最大の強みだと思っています」

トップレベルだけでなくすべての人のために

このように、充実の医療体制が整えられている女性アスリート外来。今後はより開かれた外来を目指し、「もっと気楽に利用できるようにしていきたい」と北出医師は言います。
「例えば何か気になる症状があったら、トレーニングの合間を縫って気軽に来院してほしいと思います。自分の身体の状態をしっかり調べて知っておくことは、ケガ予防のためにもとても大切なことだからです。
ただの月経不順であっても骨量が驚くほど少なかったり、無月経なのに貧血も認めるなど、アスリート特有の症状も少なくありません。病院に行くとすぐホルモン療法を薦められると勘違いされている方もいますが、私達の女性アスリート外来ではまず食事などの生活習慣を見直してから、それでも改善しない場合に医療の介入を行うようにしています。

ピルを飲むと体重が増えるのでは……という不安を持つ選手やコーチもいらっしゃるようですが、体重増加はあったとしても一時的なむくみに伴うもので、自然に戻る方がほとんどです。当院の患者さんの中にも、ピルによる月経移動を行うことで月経時の不調を克服し、競技パフォーマンスが格段に上がってインターハイに出場できたという方もいらっしゃいます。固定観念にとらわれることがチャンスを逃してしまう事にもなりかねませんし、新しい治療を試してみることがよい転機となるかもしれません」
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「もしかしたら自分は月経異常があるのかも」「試合日に月経が当たらないようにしたい」「自分の身体のことをもっと知りたい」……。 自分の身体についての悩みや、気になることがある人は、ぜひ一度、女性アスリート外来を受診してみては? そのドアは、スポーツに親しむすべての女性アスリートのために開かれています。
佐藤温夏

ライター紹介
佐藤 温夏

ライター、編集者。柔道、サッカー専門誌の編集部などを経て独立。スポーツ分野では主に競泳や柔道を取材している。
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