鈴木 志保子
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科 教授
競技選手への競技力向上のための栄養サポートに関する研究などを行う。
主な著書に基礎から学ぶ!スポーツ栄養学 (「基礎から学ぶ!」スポーツシリーズ) などがある。
食事構成について
食事構成とは、1回の食事を構成する料理・食品区分を指し、ここでは主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物に区分したものをいいます。下の図に示すように、これらを毎食そろえることが、アスリートにとってのバランスの良い食事につながります。コンビニ食や外食も考え方は同じです。パフォーマンス向上のためにも、1日3食を意識して食べましょう。
コンビニでバランスの良い食事構成を実行する例
食事構成が良くできていても、食べ過ぎると体脂肪の増加につながったり、塩分摂取量が増えたりします。また、食べる量が少ないとエネルギー切れによるパフォーマンスの低下、疲労、故障の原因となる場合があります。
複数のグループに属するもの
下の図のように、1品で複数の区分がとれる料理もあります。
料理・食品区分について
主食
主食とは、ごはん、パン、めん類、パスタなどを主材料とする料理のことです。身体の主たるエネルギーとなる炭水化物(糖質)が豊富で、たんぱく質も含まれています。
主食の量が少な過ぎると、生きていく上で重要なエネルギー源となる糖質が少ないため、身体は本能的に不足分を甘いもので補おうとします。お菓子を食べる量が多かったり、やめられない人は、主食をしっかり食べているか見直しましょう。ただし、食べ過ぎれば脂肪となって蓄えられてしまうので、適正量を食べることが大切です
主菜
主菜とは、肉類、魚類、卵類、大豆製品が使われているメインのおかずのことです。体を作るもとになる良質のたんぱく質が含まれています。
POINT
・1回の食事でこれらの食品群から2種類食べる
(1種類は主菜から、もう1種類は副菜から)
・1日3回の食事で、4種類の食品群を一度は食べる
これにより、たんぱく質だけでなく、さまざまなビタミンやミネラルをとることができます。ただし、主菜として、メイン料理を2品食べる必要はありません。たんぱく質をたくさんとったからといって筋肉が多くつくわけではありませんし、食べ過ぎるとたんぱく質の分解と排泄のために肝臓と腎臓に負担がかかる上に、一部分は体脂肪として蓄えられてしまいます。たんぱく質は身体づくりや発育・発達に欠かせない栄養素の一つなので、適正量を食べるようにしましょう。
副菜
副菜とは、野菜類、きのこ類、いも類、海藻類などを主材料とする料理のことです。身体の調子を整えるビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。
主菜で示した4種類の食品群を副菜でとることもできます。
例)野菜炒めの豚肉、煮物のちくわ、野菜スープのベーコン、煮豆
豆腐や納豆などの大豆製品は食べる量が少ないと十分なたんぱく質をとることができないため、主菜ではなく副菜として考えましょう。
牛乳・乳製品
牛乳・乳製品は、カルシウム、たんぱく質が豊富に含まれています。ヨーグルトやチーズなどの発酵食品もおすすめです。以下の量を目安に、毎食とるようにしましょう。
果物
果物には、糖質、ビタミン、ミネラルが含まれています。できるだけ毎食とるようにしましょう。ただし、エネルギー量が多いため、食べ過ぎには注意です。
脂質の摂取について
脂質はエネルギーを効率よく摂取できるため、活動量が多いほど、脂質からの摂取量も多くなります。そのため、不足しすぎると肌の
乾燥や筋膜炎などの症状や健康障害が現れます。また、油脂類は消化に時間がかかるため、体調に合わせて、とる量を調整しましょう。
POINT
・体重減少が必要な場合には、調理に使用する油を控える
・身体が疲れているときは内臓も疲れているため、油脂類の摂りすぎには気をつける
・揚げ物以外にもカレーなどのルー、マヨネーズも油を多く含んでいるので注意する
間食・補食・おやつの違い
おなかが空いた状態で練習をすると、練習の質が落ち、故障の原因になることがあります。エネルギー切れの状態で運動することがないよう、3回の食事以外で間食、補食を有効活用しましょう。
間食
食事と食事の間が6時間以上空く場合(寝ているとき以外)に、練習の途中でエネルギー切れにならないために補給する食事のこと。間食をとる際には、菓子類(菓子パンを含む)ではなく、食事として認められるもの(おにぎりやサンドイッチなど)を食べるようにしましょう。間食をとった場合は、1日で食べる総量を変えないように調整する必要があります。
例)昼食と夕食の間に間食としておにぎりを食べる→夕食でその分のごはんを減らす
補食
成長や1回の食事量が少ないために、3回の食事だけではとりきれないエネルギーや栄養素を補給する食事のこと。
おやつ
身体のエネルギーや栄養素の補給とは関係のない「心の栄養」であり、間食や補食とは別物。菓子類や菓子パンなどのおやつを食べる場合は、食事代わりにするのではなく、少量を楽しむようにしましょう。