初回は、女性スポーツに特化したアメリカの研究施設、タッカーセンター(The Tucker Center for Research on Girls & Women in Sport)について紹介します。
タッカーセンターとは?
タッカーセンターは1993年、女性とスポーツの関わりについて学際的な研究を行うことを目的とし、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスにある、ミネソタ大学身体運動学部(The University of Minnesota, School of Kinesiology)内に設立されました。
タッカーセンターは、「スポーツや身体活動が女子と女性の人生、家族、地域にどのような影響を与えるか」をテーマとした研究に加え、最新の話題に関する講演会、女性コーチシンポジウム、フィルム・フェスティバル (テーマに沿ったドキュメンタリーのコンテスト)、学会の開催など、多方面にわたり活動しています。
タッカーセンターの作られた理由タッカーセンターの作られた理由
タッカーセンターの設立は、20年以上前にさかのぼりますが、時代的背景が大きく関わっています。アメリカにおいて女性スポーツを語る際、1972年に施行された「タイトルナイン(Title IX)」という法律がとても大きな鍵となります。「タイトルナイン」は、簡単に述べると、教育機関における性差別を撤廃する、というジェンダーフリーに関する法律です。
タイトルナイン施行後、女子のスポーツ参画が飛躍的に向上しました。しかしながら一方で、女性とスポーツに関する研究は世界中どこにもなく、その事実にいち早く気づいたDr. Mary Jo Kane(ミネソタ大学教授、タッカーセンターセンター長)がその必要性を唱えました。
Dr. Kane(ケイン博士)は、「研究型大学(アメリカの大学は大まかに、研究型大学と教育型大学に分けられます)の中で、科学的な分析と研究ができること」を条件とし、寄付金の提供者を探していました。そして、その趣旨に賛同したDr. Dorothy McNeill Tucker(タッカー博士;1945年ミネソタ大学卒業)がなんと、100万ドルを寄付してくれることになり、一気に、センター設立が現実のものとなりました。こうして設立されたセンターは、Tucker Center(タッカーセンター)と名づけられました 。
現在、タッカーセンターでは、以下の4つの柱に分かれた研究が進められています。
次回は、それぞれの研究内容について、紹介します。
国立大学法人鹿屋体育大学修士課程修了。
2014年9月より、ミネソタ大学大学院身体運動学科(アメリカ・ミネソタ)にて、女性スポーツ及びヘルスプロモーションを専攻。