世界情勢の改善に取り組む国際機関である「世界経済フォーラム」は、「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」を毎年発表しています。これは、世界各国の男女格差に関するレポートで、1)経済活動の参加と機会、2)教育、3)健康と生存、4)政治への関与、の4つの項目で男女格差を測定したものです。2014年のレポートによると、日本が104位、ザンビアは119位でした。各項目ごとのランキングを見ると、4番目の「政治への関与(意思決定機関への参画)」では、日本は129位だったのに対し、ザンビアは114位と、開発途上国のザンビアが日本を上回る結果となりました。
スポーツ界における女性リーダーの現状については、国際女性スポーツワーキンググループ(IWG)が「シドニー・スコアボード」で発表していますが、スポーツ組織の女性理事の割合は、日本が8.36%に対して、ザンビアは23.5%という高いスコアになっています(2013 年~2014年)。しかしながら、ザンビアのナショナル・ジェンダー・ポリシーでは、女性理事の割合を30%以上にしなければならないと定められており、スポーツ界における男女平等実現のためには、依然として課題は山積みです。
ザンビアでは毎年NOWSPARが「She Leads 調査」と題して、国内の競技団体に対し、理事メンバーの女性の割合について調査を行っています。これは、ザンビアのスポーツ界におけるジェンダー・ポリシー達成度を確認する機会にもなっています。
今年の調査の結果は、6月に行われた「女性スポーツリーダーシップセミナー(ザンビア・ルサカ開催)」で報告されました。調査の結果、女性の割合は、理事長7%、理事23%、事務局長21%であることが確認できましたが、ナショナル・ジェンダー・ポリシーの基準である30%に達していたのは、わずか7競技団体のみという結果となりました。過去の調査と比較すると、女性理事の割合は2010年と比べてほとんど変化がないのに対して、事務局長の割合は16%も増加しています。
女性を事務局長とした競技団体の中の半数は、その女性のみが理事メンバーであり、増加を手放しで喜べない状況が浮き彫りとなりました。「女性が会議に参加していると書記(議事録作成)係のような扱いをされてしまう(セミナー参加者談)」という点も踏まえて、今後、事務局長に女性が増えた理由を調査・分析していく必要があるでしょう。さらに、調査結果より、女性理事長の割合は減少傾向にあるものの、女性が理事長を務める団体のうち、約8割の団体がジェンダー・ポリシーの基準を達成していることも明らかになりました。女性が理事長になることで、スポーツ界における男女平等を促進しやすい傾向があることがわかっています。
調査結果が報告された「女性スポーツリーダーシップセミナー」は、NOWSPARが定期的にスポーツ界における女性リーダー(指導者、審判、運営者)を集めて開催されています。今回のセミナーでは、2018年に世界女性スポーツ会議が隣国のボツワナで行われることを受け、IWGからリソース・モビリゼーション・マネジャー(資源動員マネジャー)のチャング・シワワさんをゲストに招きました。ザンビアの女性スポーツリーダーを取り巻く環境、課題、キャリア教育、そして世界の女性スポーツの歴史や今後の取り組みを紹介し、女性リーダーのネットワークを強固にすることに成功しました。セミナーでは、ネットボール女子代表にコーチングスタッフとして約30年間関わってきた女性が、アフリカ大会進出を決めた直後に解雇されたケースが取り上げられ、不当解雇に関する正式な抗議をするため、現在、NOWSPARと協力して国立スポーツ復興センターに手続きをしている最中であるという話もありました。
米国・フランクリンピアス大学経営学修士課程(MBA) 2014年修了。2014年スウェーデンの女子プロサッカーリーグでプレー。
2015年1月から6月までザンビアの女性スポーツNGO(非政府組織))NOWSPARにおいてインターンシップ。