ザンビア国内において、女性と少女に最も人気のあるスポーツは「ネットボール」です。ネットボールはバスケットボールのルールを基準に女性用のスポーツとして改良されたもので、主にイギリス連邦の国々で盛んに行われています。ザンビアの村や都心の低所得地域では、スポーツは男性がするものというステレオタイプの認識が根強く残っており、少年と同じように、少女がスポーツを楽しむ機会に恵まれているとはいえません。こうした状況下で、女の子用のスポーツの方が導入しやすいということから、ネットボールは田舎の村でも都心部でもザンビアの女の子に最も人気のあるスポーツになりました。女性のスポーツ経験者の多くは、ネットボールを行なった経験があります。
また、都市部を中心に徐々に女の子にも広がってきているのがサッカーです。サッカーは男性のスポーツという認識が強いため、そのステレオタイプが障害となっており、なかなか浸透していませんが、学校の授業の一環として、女子サッカーチームを持っている学校は多くあります。しかしながら、女の子が学校を卒業すると、サッカーができる環境は非常に少なくなります。スポーツNGOが女子サッカーチームを持っているケースもありますが、ザンビアの文化的、社会的背景から考えても、地域に根づかせるまでに浸透させるには、長い時間と労力が必要です。
写真提供 NOWSPAR
少女や女性がスポーツをすることに抵抗のある社会背景がある一方で、女子ボクシングに注目が集っています。ザンビアにはスーパーライト級世界王者のEsther Phiri選手がおり、彼女のおかげでメディアの注目度が高まっているのです。彼女はザンビアの貧しい家庭で生まれ育ち、ボクシングで世界チャンピオンになりました。彼女のサクセスストーリーに刺激を受け、貧しい地域を中心に、彼女をロールモデルとしてボクシングを始める女の子が増えてきています。ボクシングで良い成績をおさめれば、勝利給や学費の補助をしてもらえるケースもあるようで、経済的に家族を助けることもできるそうです。
これまでご紹介してきたように、ザンビアでは、少女は学校やクラブを通してスポーツをする機会がありますが、学校を卒業した大人の女性にはほとんどその機会はありません。特に低所得地域の女性がスポーツにふれることのできる場所はなかなかないのが現状です。2015年にNOWSPARが行ったザンビアの首都ルサカのスポーツジムにおける調査によると、女性のジム利用者は、男性と比べるとかなり低く、低所得者向けのジムにいたっては、女性専用のトイレや更衣室を設けているジムはほとんどありませんでした。そこで、大人の女性にも気軽に運動を楽しんでもらうことを目的に、NOWSPARはエアロビクスのプロジェクトを実施しました。週末に女性を対象にした無料エアロビクスイベントを開催し、大人の女性の身体運動への参加を促したところ、このプロジェクトは、NOWSPARの手を離れ、民間のエアロビクス団体がスポンサーをつけ、独立して管理運営を行なえるまでに成長しました。
写真提供 NOWSPAR
現在では、平日の仕事終わりの時間と土曜日の早朝に、地域住民に向けて無料のエアロビクスプログラムを男女問わず提供しています。ザンビア人が大好きなダンスが、国民の心身の健康の維持増進のきっかけ作りになりました。こうした地道な活動こそが、ザンビア国民のスポーツに対する意識の変革に繋がっています。
米国・フランクリンピアス大学経営学修士課程(MBA) 2014年修了。2014年スウェーデンの女子プロサッカーリーグでプレー。
2015年1月から6月までザンビアの女性スポーツNGO(非政府組織))NOWSPARにおいてインターンシップ。