vol.19
海外レポート

「Sport For Hope」プログラム~途上国の若者に希望を!

ザンビアの首都ルサカにあるOlympic Youth Development Centre (OYDC)は、国際オリンピック委員会(IOC)の「Sport For Hope」プログラムの最初の支援で建てられた施設です。「Sport For Hope」プログラムは、開発途上国に多目的運動施設を建設するための支援で、地域住民や若者にスポーツをする機会を提供し、オリンピズムの価値を教育することを最終的なゴールとして掲げています。
「Sport For Hope」 プログラムで建設された施設は、以下の内容を提供しています。
1)若者に運動機会の提供と心身の健康増進

2)アスリートに現代的で専門的なトレーニングの提供

3)コーチやマネジメントメンバーへのサポート

4)スポーツ競技会の開催

5)地域開発に繋がるためのミーティングの場を提供

6)オリンピックソリダリティプログラムと連携し教育機会の提供

7)健康増進サービスの提供(マラリアやエイズに関する知識提供も含む)

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施設建設はIOCが中心となり管理・施工しますが、国際競技団体も資金援助しています。施設の運営管理は、その国のオリンピック委員会と国内の競技団体が協力して担うことになります。また、その国の政府も建設、運営、管理において重要な役割を担います。その他、企業や非政府組織(NGO)からの資金面、技術面の支援を受けることも可能です。
ザンビアのOYDCは「Sport For Hope」プログラムの試験プロジェクトとして建設されました。OYDCはザンビアオリンピック委員会がザンビア政府からの支援を受け国内の競技団体と協力して管理、運営を行っています。協力競技団体は陸上競技、バスケットボール、ボクシング、ウェイトリフティング、ハンドボール、陸上ホッケーです。施設は屋外スポーツ施設(陸上競技、サッカー、バスケットボール、テニス、ハンドボール、バレーボール、ホッケー)と多目的屋内スポーツ施設(多目的スペース、ボクシングホール、ジム)、ミーティングルーム、運営事務所、倉庫、ロッカールームが含まれています。選手のトレーニングキャンプが行えるように、宿泊場所や食堂も完備されています。
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このOYDCはスポーツ復興のみならず、スポーツを通した地域社会の開発にも一役買っています。OYDCが建っている地域は、政府無計画居住区(コンパウンド)と呼ばれる低所得層が集る場所に隣接しています。このあたりの地域では住民が密集して暮らしており、社会保障も十分ではありません。また、治安も悪く、酒場も乱立しています。この地域には16の公立学校があり、1500から2500人の児童/学生が暮らしています。孤児院やストリートチルドレンセンターも隣接されています。周辺住民の78%が若者と児童であるにも関わらず、安全に運動ができる施設はほとんどありません。このような地域の現状が考慮され、OYDCの門は常時開放され、地域の子供たちがいつでも、自由に運動が出来るようになっています。なかには、代表チームがトレーニングキャンプを行なっている昼食時に遊びに行き、食事を分けてもらう子供たちもいるようです。
また、OYDCでは地域開発のための教育プログラムやオリンピック教育も行っています。国外の社会問題を扱う「スポーツを通じた国際開発 (IDS:International Development through Sport)」を行なっている団体、また、国内の社会問題を扱うスポーツを通じた開発(DTS; Development Through Sport)を行う団体とも連携を図り、ワークショップ等も開催しています。教育内容は、女の子のエンパワーメント、マラリアやHIV/エイズ教育などの 健康増進サービスが含まれています。さらに、スポーツ指導者に対する教育プログラムも実施されています。
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ザンビアのOYDCの事例を受けて、「Sport For Hope」プログラムからの支援で、2つ目のオリンピックセンターが、2014年にハイチの首都であるポルトープランスに建設されました。開発途上国では、ポテンシャルの高いアスリートが専門的なトレーニングが受けられる施設も、また、子供たちが安全に気軽にスポーツを楽しめる施設も十分ではありません。両者の問題解決を担うこの「Sports For Hope」プログラムに、今後も注目していきましょう。

*オリンピックソリダリティ:
経済的に恵まれない国、地域におけるスポーツ発展を目的として、各国のオリンピック委員会に対して資金援助をするIOCのプログラム。2009年から2012年期には3億1,100万USドルの予算が計上された。

参考資料
International Olympic Committee (IOC) 「Sports For Hope」
http://www.olympic.org/Documents/Commissions_PDFfiles/sports-for- hope-brochure.pdf

Olympic Youth Development Centre 「Background」
http://www.oydc.org.zm/background/

Olympic.org (2012) 「After Lusaka, a second Olympic centre is to be created - in Haiti」
http://www.olympic.org/news/after-lusaka-a-second-olympic-centre-is-to-be-created-in-haiti/154760
NOWSPAR

ライター紹介
野口 亜弥

米国・フランクリンピアス大学経営学修士課程(MBA) 2014年修了。2014年スウェーデンの女子プロサッカーリーグでプレー。
2015年1月から6月までザンビアの女性スポーツNGO(非政府組織))NOWSPARにおいてインターンシップ。
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