全米の大学スポーツ女子チームにおける、女性コーチ(監督)の割合がどのくらいかご存知でしょうか?
今年2月、全米女性スポーツ研究機関のパイオニア的存在であるタッカーセンターより、最新の調査結果(2014−2015年シーズン*1)が報告されました(LaVoi, 2015a; LaVoi, 2015b)。
2012−2013シーズンから始まったこの調査は今シーズンで3年目となりますが、この調査報告によると、学生アスリートの割合にほぼ男女差がないにも関わらず、女性コーチ(以下、監督のことを指す)の割合は、40.2%(女子チームに限る)でした。
歴史的に見ると、その割合は1972年の90%以上をピークに40年以上も減少傾向にあることから、2013−2014年シーズンより0.6ポイント上昇したものの、依然と厳しい現状が伺えます。男子チームに女性コーチの入る余地がないことを考慮すれば、いかに女性コーチの活躍する場が限られた世界であるか、おわかりいただけるでしょう。 女性コーチの割合と評価
タッカーセンターでは2012年より、全米大学スポーツ女子チームにおける女性コーチの実態調査を行ってきました。今回を含め3度にわたる調査報告書では、競技種目別、大学別にそれぞれ、女性コーチの割合をAからFで評価し(A:100〜70%、B:69〜55%、C:54〜40%、D:39〜25%、F:24〜0%)、その推移を追っています。
大学別による評価では、調査対象となった86校うち、A評価を得たのはたったの2校で全体の2.3%(シンシナティ大学:90%、セントラルフロリダ大学:88.9%)であり、88.2%の大学がC評価以下(C:33校(38.8%)、D:31校(36.5%)、F:11校(12.9%))という結果でした。
前年度との比較では、C評価を受けた大学が若干増えた(35.5%から38.8%)ものの、F評価へと後退した大学もあり(11.8%から12.9%)、全体の女性コーチの割合に、ほとんど変化はみられませんでした。
競技種目による評価では、調査対象となった23種目うち、A 評価を得たのはフィールドホッケー(100%)、ラクロス(92.6%)、馬術(77.8%)、ゴルフ(76.3%)であり、0%の水球およびアルペンスキーを含めた7競技種目がF評価という結果でした。前年度との比較では、ボートがCからDへと評価を下げ、ボーリングがFからDへと評価をあげたものの、全体的には前年度と同じ傾向が伺えました。
女性コーチが女性アスリートを指導するメリットとしては、例えば、女性指導者の方が男性指導者よりも細やかな指導ができること、精神面での細かなアドバイスができる等があげられます。さらには、女性の身体に関するデリケートな話し合い(月経に関する悩み、食生活に関する悩み等)は、競技者としてより良いパフォーマンスを発揮するためだけでなく、一個人としてQOL(生活の質)を考えていく上で非常に重要ですが、身体の構造が違う男性指導者には、理解してもらいにくいことや、話すことすら躊躇してしまうこともあります。このような課題に対応するためにも、女性コーチの抱える問題を明らかにし、今後益々の活躍を期待したいものです。
注釈
*1:米国におけるシーズンとは、「9月始まり5月終わり」が一般に言われる学校の年度(school year)です。この期間は、競技種目により若干異なります。
<参考文献>
LaVoi, N. M. (2015a). Head coaches of women's collegiate teams: A report on select NCAA Division-I FBS institutions, 2014-15. Minneapolis: The Tucker Center for Research on Girls & Women in Sport
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LaVoi, N. M. (2015b). The status of women in collegiate coaching: A report card, 2014-15 [Infographic]. Minneapolis: Tucker Center for Research on Girls & Women in Sport.
国立大学法人鹿屋体育大学修士課程修了。
2014年9月より、ミネソタ大学大学院身体運動学科(アメリカ・ミネソタ)にて、女性スポーツ及びヘルスプロモーションを専攻。