vol.014
海外レポート

「2015 Women Coaches Symposium」参加レポート
その2 ピックアップトピックス

今回は、「2015 Women Coaches Symposium」に参加して、特に興味深かった内容についてお伝えします(概要については「その1」をご参照ください)。
シンポジウム開催に先立って行われた「大会前ボーナスセッション」の「ママコーチであること」では、日本とは違ったスポーツ文化を持つアメリカの貴重な価値観を学ぶことができました。文化的違いを一番に感じた点は、ベビーシッターを雇うこと、デイケア(託児所)に子どもを預けることにまったく抵抗がなく、それは乳幼児から学童期に至るまで、ごく一般的であるということでした。日本ではどうでしょうか? 託児所の不足や待機児童問題もありますが「子どもを他人に預けてまで働くの?スポーツするの?」というような意識が根強く残っており、働くママに対する社会的理解が、得られにくい現状ではないでしょうか。また、家事・家庭に対しての適度な妥協(できないことに罪悪感をいだかない)が、コーチと母親業の両立の秘訣といった意見もあり、完璧を求め(求められ)がちな日本社会との大きな差のように感じました。
                                             
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「午前の部」で興味深かった講演は「自信をつけさせるコーチング」でした。これまで、勝利経験、反復練習、良いプレーのイメージがアスリートの自信を高めると考えられ、努力が実を結ぶというセオリーが信じられてきました。しかし、新しい考え方では「アスリートが自分の存在価値、目的を把握し、チームに貢献していることを理解させる」ことが重要であるといいます。これは勝利思考のスポーツにおいても、楽しみ、やりがい、といった要素を加えているということです。とりわけ「コーチはいかなる状況下でも、アスリートに笑顔を見せるよう促すことが鍵である」という見解は、とても意外なものでした。さらに、焦り、悲しみ、怒りの表現は、自信を低下させるだけで良い効果は得られないといい、スポーツをする意義について、再確認させられたような気持ちになりました。
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「午後の部」でおもしろいと感じた講演は「女子プロバスケットボール監督として思うこと」でした。これは、ほぼ全ての講演に共通していたことですが、ロールモデルの重要性を訴えたものでした。人間は、目で見えないものにはなれないが、目で見えるもの(姿を想像できるもの)には、なることができる、といいます。中でも同性、自分に近い存在(人種、経歴、競技等)は、非常に具体的な将来の目標となるそうです。演者である女子プロバスケットボールの監督は、こんな面白いエピソードを紹介しました。チームエースのマヤ・ムーア選手(Maya Moore:2011年ドラフト1位指名及び同年のルーキー・オブ・ザ・イヤー受賞)が、バスケットボールを始めたきっかけは、幼少期に父親に「女子の」バスケットボール観戦に連れて行ってもらい「カッコいい、あんなふうになりたい!」と、具体的なイメージができたからだそうです。これが男子プロバスケットボールであれば、結果は違ったことでしょう、と付け加えられたこのエピソードは、ロールモデルの重要性を顕著に物語っているように思いました。
競技人口の少ないスポーツには、身近に感じられる、なおかつ同性の存在は少ないのではないでしょうか?また、女性コーチが少ないという現状は、社会的な阻害要因はもちろんありますが、女性コーチの良いロールモデルが不足していることも、大きな理由のひとつです。世間ではオリンピック、女子ワールドカップサッカーが注目されていますが、その他たくさんの競技でも、女性アスリート、女性コーチが活躍しています。その素晴らしいプレーを見て、「私も!」と未来のスター選手が誕生するきっかけになるかもしれません。是非、子どもたちにも積極的に、スポーツを見せて欲しいと思います。
 コーチが専門職としての地位を確立しているアメリカ社会と、それだけでは食べていけない日本の状況では、文化的背景や価値観の相違があるのは否めませんが、今回は、「2015 Women Coaches Symposium」の中で参考にしていただきたい情報、特に印象的だった講演を紹介しました。
井上 好

ライター紹介
井上 好

国立大学法人鹿屋体育大学修士課程修了。
2014年9月より、ミネソタ大学大学院身体運動学科(アメリカ・ミネソタ)にて、女性スポーツ及びヘルスプロモーションを専攻。
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