例えば、スポーツの才能があれば奨学金(学費の免除、生活費の補助、旅費や備品のサポートなど)をもらうことができます。チームの指導は、大学教員や職員ではなくコーチングに特化した専門家が担当し、大学は、たくさんの観客が入ることのできるスタジアムやアリーナを所有しています。さらに、メディアはこぞって大学スポーツに注目し、試合ともなると、テレビやラジオで中継されるほどです。最も注目を集めている競技は、アメリカンフットボール(男子のみ)と男子バスケットボールで、この2種目に限っては、プロスポーツと同等の人気を誇り、日本で言えば夏の甲子園の白熱がずっと続いているようなイメージをしていただくとわかりやすいかと思います。興味深いことに、オリンピックやワールドカップなどの代表戦よりも国民の関心度は高く、この点でも、大学スポーツの位置づけが大きく日本と異なることがわかります。女子競技では、プロリーグのあるバスケットボールが最も注目を集めています。
女性スポーツとして考えた場合、メディアの取り上げられ方やカバー率には未だ多くの課題が残されているものの、大学スポーツ文化の好影響は、多くの分野に現れています。例えば、アメリカで女性スポーツの研究が盛んであるのは、研究も行なう大学が舞台になっているということも理由のひとつとしてあげられるでしょう。また、スポーツ参加率からいうと、大学スポーツにおいて良好な環境が存在するおかげで、高校卒業とともにスポーツから離脱することなく、よりプロフェッショナルに競技を継続できるということも大きく貢献している点であるでしょう。さらに、将来、大学スポーツのコーチとして活躍するチャンスがあるということは、指導者を志す女性、元アスリートにとっては、非常に大きな雇用の場となっているということです。このように、アメリカ大学スポーツの取り組み、仕組みには、将来的に女性スポーツを活性化させるための道筋、ヒントがたくさん隠されているのです。
国立大学法人鹿屋体育大学修士課程修了。
2014年9月より、ミネソタ大学大学院身体運動学科(アメリカ・ミネソタ)にて、女性スポーツ及びヘルスプロモーションを専攻。