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vol.027
リサーチ

女子の身体活動Vol.1 Start Active! Stay Active!
~からだを動かす習慣をつけよう!~

「子どもの体力が低下した」「子どもの生活習慣病が増えた」というニュースをあちこちで耳にしませんか? 転んだ時、手をつくことができずに、顔を打って歯を折ったり、しりもちをついたときに手首を骨折したり、さらには、スキップができないなど、自分の身体を操作する能力の低下も指摘されています。そこで「女子の身体活動」に着目し、研究成果や各所での取組みなどを紹介しながら、体を動かすこと、運動することの意義を伝えます。年代・性別を問わず、興味を持っていただけるトピックスを全4回でお届けします。
プロフィール写真_城所哲宏

城所 哲宏 Tetsuhiro Kidokoro

順天堂大学スポーツ健康科学部スポーツ科学科卒業(2012年)。英国・ラフバラ大学大学院スポーツ運動健康科学研究科修士課程修了(2013年)。 2014年4月より、東京学芸大学大学院博士課程在学中。研究テーマは、子どもにおける身体活動(からだを動かすこと)と健康づくり

進む二極化

近年、車社会の発展や生活の自動化に伴い、私たちの日常生活における身体活動量(からだを動かすこと)は減ってきていると言われています。身体活動量の不足は私たち大人だけでなく、子どもにおいても深刻な社会問題となっているのです。特に、身体活動を行うことに関する二極化(活動的な子ども vs 非活動的な子ども)が顕著であり、スポーツクラブ等に入りスポーツ活動に熱中する子どもがいる一方で、1日中からだを全く動かさず、テレビや携帯、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、コンピュータなどの電子媒体の使用に夢中になる子どももいるのが現状です。
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なぜ、からだを動かすといいの?

では、ゲームやコンピュータに夢中になって、子どもの頃に身体活動をほとんどしなかった「非活動的な子ども」が大人になった時に、どのような影響が生じるのでしょうか? 子どもの頃の運動習慣は、その頃の健康だけでなく、大人になってからの運動習慣や健康に密接に関わっていることが指摘されています。たとえば、生活習慣病(例、心臓病や脳卒中)は40代後半から発症率が高まる病気ですが、その主な原因である動脈硬化(血管が固く、もろくなること)の初期病変は、10歳児でも多数認められることが明らかにされています[1)]。なんと、動脈硬化の進行は子ども期から既に始まっているのです。
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図1 身体活動および健康状態の持ち越し効果について
アクティブチャイルド60min[2)]を参考に、一部改変し作図(2016, 城所)

また、子どもの頃に外でよく遊び、からだをたくさん動かしていた子どもは、大人になってからも運動習慣を保持できる確率が高い一方で、子どもの頃に運動習慣のない子どもは、大人になってから運動を開始することは困難であることが指摘されています。つまり、子どもの頃の身体活動や健康状態は大人になってからも持ちこされ、大人になってからの身体活動と健康状態は、相互に影響を与え合うのです(図1参照)。

女子における身体活動の意義

文部科学省の調査(2014, 「平成26年度体力・運動能力調査」)によると、運動不足の現状は男子より女子の方が深刻であることが報告されています。1週間の総運動時間が60分にも満たない女子の割合が、小学生で13.0%、中学生で21.0%にも及ぶことが明らかになっており、学年が進むにつれて、男女差が大きくなる傾向があり、その対策が重要な課題となっています。
上述した生活習慣病に加え、特に女性では骨粗しょう症のリスクが高いことが報告されています。骨粗しょう症は骨の中がスカスカの状態になり骨がもろくなる病気であり、特に高齢者においては、骨粗しょう症による骨折から要介護状態になる人が少なくありません。そして、骨粗しょう症の予防にも、子どものころからの対策が大切です。ヒトの骨量は学童期から思春期にかけて著しく増大し、18歳前後で最大骨量(ピーク)を迎え、その後50歳前後まで安定して推移した後、減少し始めます(図2参照)。
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図2 骨量の経年変化
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版[5)]を参考に、一部改変し作図(2016, 城所)

特に女性は、閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌の低下に伴い、骨密度が急激に低下してしまいます。この対策として、これまでの研究より、最大骨量を10%増加させることで、将来の骨粗鬆症の発症を13年遅らせ、閉経後女性の骨折リスクを50%軽減させる可能性が示されています[3)]。 それでは、最大骨量を迎える時期である18歳前後までに骨密度を増加させるためにはどうすれば良いのでしょうか?その答えはバランスの良い食事を摂り、適度な運動をすることです。特にランニング、サッカー、エアロビクスなど骨に体重がかかる運動がより効果的であるとされています[4)]。

活発な活動を1日10分!

このような背景を踏まえ、私が所属する東京学芸大学の研究チームでは、小・中学生を対象とした身体活動量調査を行なっています。研究の特色は「活動量計」という装置を使っている点です。活動量計は、歩数計(万歩計)に高精度の加速度センサーが内蔵されている装置で、この活動量計を使うことで、日常生活中の身体活動量を「強さ別」に評価することが可能となります。具体的には、座位(座っている)時間、歩行時間、走行時間が1日にどのくらい行われていたかを記録することができます。前述の研究チームは、2014年に東京都に在住する中学生男女300名を対象に、活動量計で測定した身体活動量とスポーツテストの成績との関連性を検討しました。結果、女子においては、「1日わずか10分弱でも、かけっこや鬼ごっこ、サッカーなどの活発な活動[*1]を行うことで、低体力[*2]になる確率が77%低下する」可能性が示されました[6)]。このことは、学校内(体育授業・休み時間・部活動)、学校外(地域スポーツ・家庭・登下校)を問わず、活発な活動を、1日の中に数分組み込むことが、女子の体力向上につながる可能性があることが示しています。こうした研究成果をより多くの学校関係者や児童期・思春期の子どもをかかえる保護者の皆さんに知っていただきたいと思います。そして、子どもたちが活動しやすい(遊びやすい)環境を整え、子ども自身の取り組みをサポートし、子どもたちの体力低下を防いでいくことも、我々、大人が担うべき重要な役割なのではないでしょうか?さあ、からだを動かすことを始めましょう!そして習慣化させましょう!「Start Active! Stay Active!」
*1 「活発な活動」とは、6メッツ以上の身体活動を指します。メッツは活動の強度を示す単位であり、6メッツは活動の内容でいうと、おおよそジョギング程度の活動に相当します。
*2 文部科学省より公表されている新体力テスト実施要項( 1 2 歳 ∼ 1 9 歳対象)を基に、体力総合評価がDもしくはEの中学生を「低体力」と定義しています。
 
【参考文献】
1) McGill et al. Origin of atherosclerosis in childhood and adolescence. The American Journal of Clinical Nutrition, 72(5 Suppl):1307S-1315S, 2000.
2) 竹中晃二: アクティブ・チャイルド60min-子どもの身体活動ガイドライン-, 株式会社サンライフ企画, 東京, 2010
3) Bailey et al. A six-year longitudinal study of the relationship of physical activity to bone mineral accrual in growing children: the university of Saskatchewan bone mineral accrual study, Journal of Bone and Mineral Research, 4: 1672-9, 1999.
4) Ishikawa et al. Effects of weight-bearing exercise on bone health in girls: a meta-analysis. Sports Medicine, 4: 875-92, 2013.
5) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版, 2015.
6) Kidokoro et al. Sex-specific associations of moderate and vigorous physical activity with physical fitness in adolescents, European Journal of Sport Science, [Epub ahead of print].
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