インタビュー

2021年04月23日

順天堂医院が「臨床研究中核病院」に承認。さらなる高みを目指して臨床研究・医師主導治験を推進中!

2020年3月24日、順天堂大学医学部附属順天堂医院(以下、順天堂医院)は、医療法に基づく「臨床研究中核病院」の承認を受けました。「臨床研究中核病院」とは、革新的医薬品・医療機器などの開発を推進するため、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う病院として位置づけられているものです。全国で13施設しか存在しない臨床研究中核病院に承認された意義と効果を、髙橋和久順天堂医院院長と田村直人臨床研究・治験センター長が語ります。

髙橋 和久(たかはし かずひさ)
順天堂医院 院長
順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学 主任教授

順天堂大学医学部卒業(昭和60年)
専門分野:がん、呼吸器一般
指定医:難病指定医・身体障害者指定医
資格:日本内科学会総合内科専門医、日本内科学会内科認定医、日本内科学会内科指導医、日本呼吸器学会専門医、日本呼吸器学会指導医、がん治療認定医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、日本老年医学会専門医

田村 直人(たむら なおと)
順天堂医院 臨床研究・治験センター長
順天堂大学大学院医学研究科膠原病・リウマチ内科学 主任教授

順天堂大学医学部卒業(昭和62年)
専門分野:膠原病、リウマチ
指定医:難病指定医・身体障害者指定医
資格:日本内科学会総合内科専門医、日本内科学会内科認定医、日本内科学会内科指導医、日本リウマチ学会認定専門医、日本リウマチ学会指導医、日本臨床免疫学会免疫療法認定医

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全国で13か所、私学では2か所しかない臨床研究中核病院に承認

――まずは臨床研究中核病院に承認された意義について、教えていただけますか?

髙橋 臨床研究中核病院として承認されると、これまで以上に臨床研究支援体制が整備され、より安全かつ健全な臨床試験や医師主導治験が可能になります。それにより、順天堂を選ばれた患者さんに、先進的かつ質の高い臨床研究や治験を提供することができます。結果として、臨床研究や医師主導治験に興味のある若手医師が集まることにつながり、若手研究者の育成や臨床研究への取り組み、意識の向上もこれまで以上に進むことになります。当院が質の高い臨床研究を行っていると認めていただき、大変光栄なことだと受け止めています。

――臨床研究中核病院の承認に先立つ201512月、順天堂医院はJCIJoint Commission International)の認証も取得されています。このように外部から高い評価を受ける順天堂医院の強みをお聞かせください。

髙橋 JCIとは国際的な病院機能評価基準で、本院は国内の大学病院本院(特定機能病院)で初めてその認証を取得しました。JCIに認証されたということは、海外からも「安全で質の高い医療を提供している病院」と認められたことを意味します。その評価項目のひとつ、ヒト被験者研究プログラム(HRP:Human Subject Research Program Standard for Academic Medical Center)で高い評価を受けたことが、臨床研究中核病院の承認時にも役立ちました。

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田村 JCI取得時に医療安全、感染症対策、検査機器の整備などがさらに強化されたことにより、これらに関しては今般の臨床研究中核病院の厳しい審査においても不備は認められませんでした。JCIをきっかけに、安全で質の高い医療を提供しようという意思が教職員全体に根付いていたことも、大きかったですね。また、JCIに認証されると海外からもインバウンドの患者さんを受け入れることができますし、その中には治験に興味のある方も少なくありません。

髙橋 現在、国内で臨床研究中核病院に承認されている医療施設は、わずか13か所。そのうち私学の大学病院は当院と慶應義塾大学病院の2か所のみで、それ以外は国立大学の一部の附属病院か国立がん研究センターなどのナショナルセンターです。なぜ当院がここまで高い評価を受けたのか、その理由は3つあると私は考えています。

1つ目は、順天堂大学は附属6病院で約3,400床を誇る病床数です。病床数は今後も増床を予定しており、あらゆる疾患に対して高度で先進的な医療を提供しています。当院はこれら附属病院群の中心に位置することを高く評価していただいたのだと思います。

2つ目は、前述したように国内で初めてJCIの承認を受け、国際的に認められた医療施設であること。また、厚生労働省から高度先進医療などを行う特定機能病院に承認されていることです。

3つ目は、「すべては患者さんのために」というペイシェント・ファーストの考え方が全職員に貫かれていることでしょう。

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承認後、実施治験数は過去最高に!COVID-19関連の臨床研究も進行中

――順天堂医院内にある臨床研究・治験センターとはどのように連携されていますか?

田村 当センターは臨床研究中核病院におけるARO(エーアールオー:Academic Research Organizationの役割を担っており、臨床試験前のプロトコル作成支援や統計相談、開始後の治験コーディネーター(CRC)による支援、モニタリング、監査など、臨床試験を完遂するために必要な支援を実施しています。倫理審査や患者さんの相談窓口など、臨床研究に関しても網羅的に対応し、情報の一元管理とワンストップサービスを実行しています。

ARO...研究機関や医療機関を持つ大学などがその機能を活用して、臨床研究・非臨床研究を支援する組織。

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順天堂医院1号館とB棟と直結している研究棟(A棟・7号館)に臨床研究・治験センターを配置

――臨床研究中核病院に承認後、1年近くが経過しましたが、順天堂医院での臨床研究にどのような変化がありましたか?

田村 なんといってもARO機能が充実したことで、企業からの受託研究や医師主導治験が目に見えて増加し、2020年度にはコロナ禍にもかかわらず、年間165件という過去最高の治験数でした。医師主導治験は3年間で5件の実施または包括的支援を実施し、臨床研究法下の特定臨床研究については、外部の大学病院からの審査依頼も3件ありましたし、他施設から臨床研究に関する相談を受けることも増えました。介入・観察研究の審査数も2019年度の300件から、2020年度は409件へと大きく増加しています。

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髙橋 COVID-19に関しては当院も多くの患者さんを受け入れており、COVID-19を対象とした臨床研究も進んでいます。なかでも「新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)」はワクチンの安全性情報を発信することを目的に、本学の伊藤澄信客員教授が研究代表者となり、2~6万人の調査を目指して進行中です。これも臨床研究中核病院だからこそできる研究でしょう。COVID-19関連の論文も次々に発表されています。

≪関連リンク≫ COVID-19に関連する研究等の発表はこちら

田村 ちなみに、その研究の事務局は当センターが担っています。当センターも年々規模が拡大し、現在100名あまりの教職員が在籍しているのですが、組織を改編することでより効率的に動けるようになりました。院内の医療安全管理室にも連携をしていただいておりますし、他部署との連携も強化されたと感じています。

また、20214月から臨床試験ライセンス制度も導入します。これにより、特定臨床研究における被験者の保護や品質の向上を図り、臨床研究をより健全に保つことができますし、万一の不適合事案にも厳正に対処することができます。

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承認はあくまでも通過点。さらに国際競争力のある研究開発拠点へ

――臨床研究以外の面では、どのような好影響があるとお考えですか?

髙橋 まず、院内の多職種・多診療科の連携が強化されていると感じます。そして全国でわずか13病院しか承認されていない臨床研究中核病院に当院が加わったことで、順天堂のブランド力が明らかに向上しました。さらに企業との共同研究講座の設置数が激増し、企業シーズを順天堂で臨床開発へとつなげる機会が増えました。

田村 そういう意味では本学のオープンイノベーションプログラム「GAUDI」の存在も大きいですね。企業の研究開発シーズから有力なものをピックアップし、当センターの支援のもと、院内で臨床研究まで持っていけるようになりますので、わが国の革新的医薬品・医療機器などの開発に貢献できる試みだと思います。

――今後、順天堂医院が目指す臨床研究中核病院の姿について、ご教示ください。

髙橋 これからも学是「仁」の精神のもと、心の通った臨床研究や治験を続けていきたいです。よく勘違いされますが、治験は「人体実験」では決してありません。私たちは患者さんに向けて新しい治療法やお薬を安全に提供できることは患者さんにとっても重要なことであり、それを実践するために万全の体制を整えています。

田村 臨床・治験センターでは昨年、「前進・連携・篤実」という標語を掲げました。より質の高い臨床研究・治験に向けて「前進」し、多職種がチームワークよく「連携」し、患者さん・ご家族・医療関係者・研究者など、すべての人の笑顔のために「篤実」であれ、という意味です。臨床研究の力とは、その病院の臨床力に比例するもの。今回の承認はあくまでも通過点で、今後は豊富な臨床データをさらに利活用し、研究数を増やしていきたいですね。

髙橋 今後もオール順天堂の力を結集し、今後も国際競争力のある研究開発拠点として発展していきます。

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※本インタビューは、2021年3月2日に実施しました。なお、2021年4月に新たに14番目の臨床研究中核病院に神戸大学医学部付属病院が承認されました。

院長メッセージ「コロナ通信」

~COVID-19を職員とともに考えるために

2020年1月以降のCOVID-19感染拡大を受けて、順天堂医院では2月のダイヤモンド・プリンセス号の感染患者さんの受け入れに始まり、累計で310名の入院患者さんと、3,000人以上の通院患者さんの治療を行ってきました。その中で3月には職員の院内感染が起き、私たちも対応に大変苦慮しました。

「院長として、この未曾有の事態に何ができるのか」を考えた結果、私はCOVID-19関連の情報を包み隠さず院内で共有することを決断。感染者数が落ち着くまで週1回、「コロナ通信」と名付けた院長メッセージを全職員・基礎研究者・医学部生へ発信し続けました。

医療従事者はみな「COVID-19に感染するのではないか」「ウイルスを自宅に持ち帰るのではないか」という不安を抱きながら、業務に臨んでいます。「コロナ通信」ではそんな方々の気持ちを少しでも和らげるよう、マンガを入れるなど柔らかい内容にするように心がけました。

現在もCOVID-19との闘いは道半ば。引き続き日本の医療を守るため、COVID-19診療とともに、世界でもっとも高度・先進的、かつ安全な医療を提供していきたいと考えています。