インタビュー

2020年05月01日

老舗物理療法機器メーカーの新たな領域への挑戦!医師とのマッチングを実施し、社会課題の解決に取り組む。

我が国のライフサイエンス分野における研究開発の促進と、開発シーズの社会実装促進を使命として、順天堂は2019年7月にオープンイノベーションプログラム「GAUDI(Global Alliance Under the Dynamic Innovation)」を始動させました。 少しでも多くの企業にGAUDIを体感してもらうために、経済産業省関東経済産業局と連携し、医療機器開発企業と順天堂大学の医師・研究者を結ぶための支援事業である「架け橋ピッチ」を、公募により採択された合計9社に対して2019年10月から実施しました。 この中から今回は、医療機器メーカー・伊藤超短波株式会社の吉田大悟(社長室室長)と西川英治(経営企画室業務推進役)が、GAUDIの「架け橋ピッチ」プロジェクトを統括した奈良環特任講師と語り合いました。

架け橋ピッチとは

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(左)伊藤超短波株式会社 吉田大悟(社長室室長)、(中)伊藤超短波株式会社 西川英治(経営企画室業務推進役)、(右)順天堂大学GAUDI 奈良環 特任講師

長年の事業で蓄積した膨大な情報を活かしたい

――まずは伊藤超短波株式会社について、簡単にご紹介をいただけますか?

吉田 当社は1916年の創業以来、電気や温熱、超短波などの物理的エネルギーを用いて治療を行う物理療法機器の製造・販売を主とする医療機器メーカーです。医療機関や個人向けに医療機器を提供するほか、エステサロンなどへも健康・美容機器を提供。海外へも幅広く事業を展開しています。

――どのような開発シーズをお持ちになって、「架け橋ピッチ」に応募されたのでしょうか?

西川 まだ研究開発のスタートラインに立ったばかりですので、ここで詳しい内容をお話しすることは難しいですが、我々が物理療法機器事業を通じて長年蓄積しているノウハウを新たな治療法として活かせないか、知見をいただきたくて応募しました。

奈良 今回の「架け橋ピッチ」では、公募で採択された企業の方に対して、まず私たち事務局が事前ブリーフィングをさせていただきました。

事務局には臨床視点でのコンサルテーションを行える医師や、薬事規制などに関するコンサルテーションを行える医師、知財・契約・政策・市場性などをアドバイスできる複数の専門家が在籍しており、全体を私が統括してプロジェクトを進めていきました。

伊藤超短波さんへの事前ブリーフィングに基づき事務局内で、架け橋ピッチの対象として、どの研究者、どの医局・医師に声をかけるのが適切かにつき、複数回ミーティングを重ねました。

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事務局でマッチングをした医師や研究者にプレゼンを行い、議論を深める

――事前ブリーフィング後、企業側からのプレゼンテーション(ピッチ)を行い、それに対して医師や研究者からのアドバイスを受けたり、意見交換をするわけですね。伊藤超短波さんの場合はどのように進みましたか?

吉田 我々のプレゼンテーションに対して、想像以上に多くの医師・医療従事者が参加してくださいました。いろいろな領域の先生方が56名ぐらいでしょうか。

――ピッチに参加される医師や研究者のセレクトが非常に重要なポイントでは?

奈良 おっしゃるとおりで、私たち事務局の中で検討を重ね、企業の方の要望の実現に最適と思われる医師に「架け橋ピッチ」の主旨と内容を理解してもらい、協力を得て進めます。

伊藤超短波さんのケースでは、人間の体調を総合的に判断する診療領域の中で、その症状がどのような病気につながるのか、どのような治療をすればどのような改善につながるのか、長年研究している医師に参加してもらいました。

西川 さらにGAUDI事務局では、それぞれの先生の研究の特長を把握しておられ、先生に理解されやすいアプローチについて事前のアドバイスもいただけました。

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――伊藤超短波さんのプレゼンテーションに対して、医師からはどんなフィードバックがありましたか?

西川 今回、私たちがテーマにしているものは解明できていない部分が多いジャンルで、医学的なエビデンスも少ないのです。ですから当初は、「ビジネスにならないのではないか」という不安もありました。

ところが、フィードバック時に先生方から「どういう疾患や悩みを持たれている患者さんに必要なのですか?」と質問されたことが、大きな気付きになりました。

私たちが漠然と生体変化を起こせるだろうと思っていたものが、実際にビジネスになり得るんだ、と。

奈良 患者さんのニーズを企業側が明確にイメージできれば、おそらくビジネスとしての方向性の判断も正確にでき得るのでしょう。具体的にどんな患者さんに向けてどんな器械をつくればいいのかについて、臨床や研究の観点から先生が意見を述べられる中で、その場にいたメンバー全員で「患者さんはどのように使いたいのだろうか?」と考え始めましたね。

吉田 かなり長時間議論を繰り返しました。

奈良 そのような議論の中から気付きが生まれ、その瞬間、お二人の表情が一瞬変わられたのが分かりました。その様子を拝見して、おそらく社内で漠然と考えられていたことが、一つの形になったのだろうと感じました。

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仮説の立て方や検証方法の助言が、大きな一歩に

吉田 ピッチの中で、どうすれば課題を解決できるか、最初の第一歩を示唆していただいたことが本当に大きかったです。

先生方から「こういう仮説が成り立つから、こういうところを見ればいい」と具体的に教えていただいて、実際に社内で試してみたところ、私たちが予想していた結果に結びつきました。

その答えの導き方が私たちには分からなかったので、大きな一歩進むことができました。

西川 さも当然のように「簡単に検証できるから、やればいいのに」と言っていただけました。実際に検証方法も教えていただいて、私たちも「その方法なら社内でできる」と。社内での検証の結果、「あ、本当に生体に変化が出ている!」と確認が取れて、この分野の研究開発は進めるべきだという自信が持てました。

奈良 伊藤超短波さんはピッチで提案された仮説に対して、すぐに社内で検証されましたね。

吉田 我々はそういうことが好きで「なぜこれが効くんだろう?」という点を追求したいと思っています。

奈良 私も伊藤超短波さんにヒアリングを繰り返す中で、真摯に検証に取り組もうとされている企業であることを感じました。

100年以上の歴史があり社内に膨大な情報が蓄積されていますが、これまで体系化できていなかったと伺っています。これをGAUDIを活用いただき、検証して体系化できれば、開発シーズの社会実装へ大きく近づくと思います。

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――伊藤超短波さんにとって、GAUDIのようなオープンイノベーションへの参加は初めての体験ですか?

西川 そうですね。どちらかというと、これまで当社は研究者や医師の先生方に対して、受け身の立場で関わることが多かったのです。例えば、当社の医療機器を先生方から「使いたい」と言っていただいたり、先生方のご研究に当社が参加させていただいていました。

ただ、長年に渡り物理療法機器を製造・販売してきた中で、当社には何よりも治療効果を大切に考え、相当なこだわりを持って事業を続けてきたという自負があります。「こんなふうにしたら効果があった」といった治療効果の声は社内の各部門で収集しており、その情報量はどの同業他社にも負けません。

先ほど奈良先生がおっしゃったとおり、治療効果と我々が体験的に感じている情報を臨床の専門家の力を借りて体系化できれば、患者さんのお悩みの解決に近づけるはず。ただ、開発を進めていく上で、どの先生が、私たちが考える物理療法の可能性に賛同してくださるのかが分からなかったのです。

その点、GAUDIなら、奈良先生が「この先生にお願いてみましょう」と、最適な研究者とつないでくださる。その点がとても有難いのです。

奈良 これまでは雲の中から何かを探すような状態だったわけですね。

西川 研究者の方に「エビデンスが少ないものを研究してください」とは、なかなか言えないですよね?

GAUDIはそういう前提のものも製品開発につなげ、社会実装していくことをバックアップしてもらえるプログラムなので、私たちのこれまでの活動とはそもそも前提が違います。

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研究者マッチングから社会実装までワンストップで提供してくれるGAUDI

――GAUDIに対して、不安はありませんでしたか?

吉田 順天堂大学で完結できるということで、不安よりも期待の方が大きかったです。これまで当社がビジネスチャンスを探す場合は、コンサルティング会社に依頼することが多かったのですが、中身がうまくかみ合っていなかったり、実現性を伴っていなかったりしましたので。

西川 GAUDIには医師、研究者、弁理士などの専門家が集まり、私たちの開発シーズを社会実装までワンストップでサポートしてくれる体制があります。そこが魅力なんです。

また、GAUDIの窓口を務める奈良先生はもともと企業にいらした方なので、ご自身の経験も含めて「こうしたらいい」と助言してくださり、本当に勇気づけられます。

さらに、順天堂にはさまざまな領域の先生方が揃っているので、そういう意味でも「GAUDIに相談すれば最も適した医師や研究者とつながることができる」という安心感があります。

――今後の展開について教えてください。

西川 事務局から「何でも相談してください」とおっしゃっていただいているので、今回のテーマ以外にも私たちがこれまでに考えて、どこにも行き場のなかったアイデアや戦略をひととおり相談させていただくつもりです。その中で患者さんのためになるもの、ビジネスとして成り立つものを選択して一緒に進んでいければ。

とにかく「エビデンスがない」と最初に否定されてしまうと、それ以上進めようがない、というのがこれまでのパターンでした。その点、GAUDIにはさまざまなジャンルの先生がいらっしゃるので、とても期待しています。

吉田 私たちは物理療法の可能性は無限大だと信じています。「物理療法を究める」が当社のビジョンですので、今後とも協力体制を続けていきたいと考えています。

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*本対談は、緊急事態宣言の前(3月18日)に実施されました。


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