読み物

2019年07月12日

順天堂練馬病院が創エネ力を強化。地域救急医療体制のさらなる充実へ。

地域の災害拠点病院として、災害時の救急医療の中核を担う順天堂大学医学部附属練馬病院(以下、練馬病院)。2019年3月26日、練馬病院は練馬区と「地域コージェネレーションシステム整備に関する協定」を締結。大災害時も診療体制を維持するために、院内のコージェネレーションシステム(以下、コージェネ)を増強し、有事の際には隣接する練馬区立石神井東中学校(以下、石神井東中学校)に電力を融通することを取り決めました。

災害時の地域のエネルギー確保のため、練馬病院と練馬区が協調。

コージェネレーションシステム(コージェネ)とは、都市ガスを燃料として電気をつくる創エネルギーシステムです。発電時に熱も生み出すため、給湯・空調などに利用することもできます。

練馬病院では2005年の開院以来、コージェネを導入。日々の病院運営に利用してきました。一方、練馬区は2016年に「練馬区エネルギービジョン」を策定。2018年の北海道胆振東部地震でのブラックアウトや台風24号による大規模停電を踏まえて、基本施策に「分散型エネルギーの導入促進」を掲げ、災害拠点病院(練馬病院)と近隣の医療救護所(石神井東中学校)が一体となった地域コージェネレーションシステムを創設。エネルギーの総合的・効率的な利用を目指しています。

2019年3月、練馬病院と練馬区は協定を締結。新たにコージェネを増強し、災害で地域が停電した場合は、発電した電力の一部を石神井東中学校へ送電することが取り決められました。

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協定締結式の様子 前川練馬区長(左)と児島院長(右) 

 

消費電力の約3割をコージェネでまかない、温水や蒸気も院内で有効活用。

増強後の練馬病院のコージェネ定格出力は370kW。病院全体で必要な電力量は約1400kWのため、およそ30%近くをガスによる自家発電でまかなっていることになります。

コージェネでつくられた電気は、おもに院内の空調に利用されています。電気と同時に生まれる温水は、院内の手洗いの水や厨房に活用。蒸気も厨房で使われます。

また、遠い発電所から送電網を辿って送られてくる電気は、消費者のもとに届くまでに約60%が送電ロスや廃熱などで失われているといわれます。その点、自家発電するコージェネは送電時のロスがなく、エネルギー効率も高いため、省エネに役立ちます。さらに日中に稼働させることで、もっとも電力消費量の多い真夏の昼間などに購入する電気を削減。地域の電力需要のピークカットにも貢献しています。環境にもやさしく、火力発電やガスボイラ使用時と比較して、CO2排出量を約34%削減1。練馬病院の場合、年間3,000時間稼働させれば、CO2排出量を約325tも減らすことになります。


1 東京ガス試算

 

東日本大震災クラスにも耐える中圧導管でガスを確保。

一般的に、「災害時にガスは電気よりも復旧が遅い」というイメージがありますが、それは地中にあるガス管が破損し、供給がストップした場合です。病院は災害時の機能停止を極力避けなくてはならないため、練馬病院では新築時から中圧導管という耐震性の強いガス管を採用しています。

中圧導管は道路や橋が崩落しても変形するだけで破損せずに残る構造を持ち、阪神・淡路大震災や東日本大震災クラスの地震にも充分耐えられる仕様です。練馬病院では中圧導管を敷地内に張り巡らせ、仮に停電になってもコージェネにより院内で電気をつくれる体制を整えています。

さらに、災害時には石神井東中学校が地域の人々の避難場所となり、体育館が医療救護所となるため、ガス発電した電気の一部を救護所へ送電する計画です。

  

災害拠点病院として、3日分の水・食糧・電源を用意。

有事の際の自家発電システムに加えて、災害拠点病院である練馬病院はさまざまな防災対策を講じています。

まず、建物が免震構造のため、免振装置が地震の揺れを吸収し、建物とその内部を守ります。東日本大震災で練馬区は震度5弱の長い揺れに見舞われましたが、院内では被害ゼロ。モノが倒れることもありませんでした。

また、3日分の水と食料を備蓄。非常用発電機も備えて、燃料となる重油も3日分貯留しています。ICU(集中治療室)、CCU(心臓血管疾患集中治療室)、手術室など、一瞬たりとも電源供給の停止が許されない場所には非常用バッテリーを完備。非常時にも重症患者さんの治療を継続する準備ができています。

大災害時はけが人が急増し、多数の地域の患者さんの来院が予想されます。そこで練馬病院では2階の中央待合ホールにて、待合用の長椅子をベッドとして利用した患者さんの受け入れを想定。トリアージ2を実施して、優先的に治療が必要な人を選別し、治療を行います。

さらに、中央待合ホールから石神井東中学校の体育館まで、ストレッチャーで移動できるルートを確保。中学校に避難した人の中から、中・重症者を速やかに練馬病院へ移送できる体制を整えています。


2 災害時などに多数の傷病者が発生した際、緊急度に応じて治療の優先順位を決めること。

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「救急の要請は断らない。」 日常の手厚い救急医療体制を災害時にも発揮。

もともと練馬病院は開院当初から、「救急の要請は断らない」ことを方針として掲げてきました。そのため現在も、救急患者の応受率は都内トップクラス。年間7,000台以上の救急車や、2万人以上のウォークイン3の患者さんを受け入れています。さらに救急・集中治療科の杉田学教授は練馬区全体の救急医療系を統括する立場にあり、有事の際は練馬病院だけでなく、区の医療機関全体の指揮を執ります。

もちろん、日頃から有事に備えて年1回の防災訓練も怠りません。区内の医療機関・医薬品事業者・警察・消防など関係各機関とは、区の「災害協定」に基づき、定期的に防災会議も実施しています。


3 直接救急受診に来られた患者さん

 

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2019年12月竣工予定の新3号館

 

医療スタッフの使命感に支えられ、地域の災害医療に貢献。

大災害が起き、地域の人々が治療を求めて一斉に来院された場合、病院では1人でも多くの医療スタッフが必要です。とりわけ災害拠点病院である練馬病院は地域において災害時の医療をリードし、より高度な治療と看護を患者さんに提供しなくてはなりません。

その点、練馬病院に所属する医師は約230名、看護師は約460名。有事の際には全員が病院に緊急出勤し、患者さんの対応に当たります。さらに近隣には入寮者を含め研修医70名が住んでおり、なにかあればすぐに駆けつけられる体制が整っています。

もちろん、離れた場所に住むスタッフも少なくありませんが、「医療を必要とされる患者さんがいる限り、病院へ」と考えるのが、スタッフの共通の想い。交通機関がストップした東日本大震災の際も、30kmあまり離れた自宅から歩いてたどり着いた看護師の姿が見られました。もちろん、1週間以上病院に泊まり込むスタッフも多く、患者さんだけでなく帰宅困難者も受け入れるなど、全スタッフを挙げて地域に貢献する姿勢が徹底されています。

こうした病院スタッフの行動の根底にあるのは、「災害時こそ手厚い医療を提供したい」と考える強い使命感。ハード面もソフト面も最大限に高めた上で、練馬病院は今後も地域の災害医療に貢献していきます。

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順天堂大学医学部附属練馬病院

〒177-8521 東京都練馬区高野台3-1-10

TEL 03-5923-3111