インタビュー

2020年09月28日

元気に歩いて帰る患者さんの姿をみることが医師のやりがい。安全で最適でハイレベルな医療を提供する順天堂大学浦安病院・循環器内科

地域の拠点病院として、急性期の患者さんを中心に大学病院ならではの高度専門医療を提供する、順天堂大学医学部附属浦安病院(千葉県浦安市。以下、順天堂大学浦安病院)。超高齢社会の到来とともに患者さんが急増している循環器内科の医師5名(戸叶隆司先任准教授、横山健准教授、宮﨑哲朗准教授、小田切史徳助教、尾崎大助教)が、同科の特長や最新の治療法について語ります。

戸叶 隆司(とかの たかし) 先生   
順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科 先任准教授
同 科長補佐
1987年3月 帝京大学卒業
1996年1月~1998年6月 ミシガン大学メディカルセンター 留学(Research fellow)
不整脈、臨床心臓電気生理学(心臓植込み型デバイス、カテーテル心筋焼灼術)、循環器内科学一般を専門とする。

横山 健(よこやま けん) 先生
順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科 准教授
1995年3月 順天堂大学卒業
虚血性心疾患、冠動脈インターベンションを専門とする。

宮﨑 哲朗(みやざき てつろう) 先生
順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科 准教授
1997年3月 順天堂大学卒業
2005年3月 順天堂大学大学院修了
2007年1月~2009年12月 ハーバード大学ブリガムアンドウイメンズ病院 留学(Research fellow)
動脈硬化学、心不全、脂質代謝異常を専門とする。

小田切 史徳(おだぎり ふみのり) 先生
順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科 助教
2004年3月 東邦大学卒業
2013年3月 順天堂大学大学院修了
不整脈、循環器一般を専門とする。

尾崎 大(おざき だい) 先生
順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科 助教
2007年3月 東邦大学卒業
末梢血管インターベンション、循環器疾患一般を専門とする。

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順天堂大学浦安病院

24時間365日の救急患者さん受け入れ体制とハートホットラインで死の淵から命を救う!

戸叶 順天堂大学浦安病院の循環器内科は2020年3月に退官された中里祐二教授のもと、循環器内科の全ての分野で高度な治療ができる診療科を目指し、心臓血管外科との密な連携によりハートセンターとしてそれが結実しました。中里先生は不整脈の大家であり、「医師であると同時に研究者であれ」と常々ご指導されていました。そのため、私たちも単なる臨床医でなく、順天堂大学が目指す医師像である「フィジシャン・サイエンティスト」として、疾患の発症メカニズムなどを研究しつつ、新たな治療法を研究、その有効性や安全性を自ら検証しながら日々患者さんと向き合っています。

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「フィジシャン・サイエンティスト」として日々患者さんに向き合う(戸叶)

宮﨑 当科の大きな特長は、休日や祝日に関係なく24時間365日当直体制で医師が待機し、緊急の患者さんに対応できる点でしょう。順天堂大学浦安病院救急診療科は三次救急まで対応しているため、急性心筋梗塞や不安定狭心症、心肺停止など急性冠症候群(ACS)の患者さんや致死性不整脈の患者さんが、ほぼ毎日搬送されてきます。緊急の患者さんは時間との勝負ですから、すぐに循環器内科医が対応し、必要な治療を行うことが理想です。当科では診療時間外であっても、当直医1名が病院に勤務し、他に2名の医師が自宅で待機するオンコール体制をとっています。

戸叶 さらに2005年からハートホットラインシステムも導入しました。搬送の際、「胸痛」や「動悸」などの症状をキーワードに、救急隊の方から救急診療科と当科に直接電話が入るため、緊急性の高い循環器疾患にすぐ対応できる準備をして患者さんをスムーズに迎え入れることができます。

尾崎 急性冠症候群の患者さんは緊急カテーテルを必要とされる方が多く、「Door to balloon time」(※1)という言葉もあるほど、治療が早ければ早いほど予後が良いです。

(※1) 患者さんが病院に到着後、カテーテル室に運ばれて最初に詰まった血管の中のバルーンを広げるまでの時間。

横山 急性期だけでなく、慢性期の治療がしっかりできるところも当科の強みでしょうね。戸叶先生や小田切先生が不整脈、虚血性心疾患のカテーテル治療が私、心臓だけでなく下肢などの末梢血管も担当する尾崎先生、そして不整脈と虚血性心疾患以外の分野を埋めるべく宮﨑先生がいらっしゃる。循環器の各分野にスペシャリストがいて、非常にバランスがいいですよね。

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急性期だけでなく、慢性期の治療がしっかりできるところも循環器内科の強み(横山)

宮﨑 各分野にスペシャリストが存在するから、不整脈外来、動脈硬化外来、冠形成外来、ペースメーカー外来、アブレーション外来、ICD外来などの専門外来も豊富です。救急病院としてはかなりレベルが高いと言えるのではないでしょうか。何かに特化するというより、いろいろな分野が幅広く存在し、全てが一定以上の水準を保っています。私の動脈硬化外来では病気を防ぐ一次予防外来や、病気を悪化させない二次予防外来もあり、未病の状態から重症の方まで幅広く診療することができます。

横山 もちろん、内科でできる治療には限界がありますから、ハートセンター心臓血管外科とチームを組み、外科への橋渡しをすることもあります。また当科には、「患者さんをよくしたい」「最良の治療をして差し上げたい」と考える若手や中堅の医師が多いと感じます。

戸叶 確かに使命感が強い人間が集まっていますね。24時間当直体制の上にオンコールチームを作って対応しているわけですから、どうしても拘束時間は長くなります。それでも地域の皆さんに最善の医療を、救急患者さんには一刻も早い治療をご提供したい。そんな思いがある医師が集まったのは、決して偶然ではないでしょう。


不整脈の悩みを軽減する最新カテーテル治療

最新の治療についてお聞かせいただけますか?

戸叶 前任科長の中里先生以来、順天堂大学浦安病院の不整脈チームの伝統は安全第一。不整脈の最新の治療法のひとつに、2019年11月より導入したHeartLight内視鏡アブレーションシステムがあります。

小田切 アブレーションとは、足のつけ根の血管から電極カテーテルという細い管を体内に入れ、心臓まで進めて、不整脈の原因となる異常な部位を見つけて焼灼する治療法です。胸を切開する手術に比べて患者さんのご負担が少なく、私たち循環器内科医の中でもトレーニングを受けた不整脈専門医が担当します。

HeartLight内視鏡アブレーションシステムは内視鏡で心内を観察しながら、レーザーで心房細動の発生に関与する肺静脈と左心房の接合部を焼灼するものです。心筋の状態を診ながら治療できるので確実性が高く、安全性の確保にもつながります。

 

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2019年11月に導入されたHeartLight内視鏡アブレーションシステム。内視鏡で心筋の状態を診ながら、レーザーで目標部位を焼灼する。

戸叶 外来診療などで遭遇する不整脈の中でもっとも多いものが心房細動です。心房細動が原因で大きな脳梗塞を起こす可能性があることが一般の皆様にも広く知られるようになり、病院を受診される方が増えました。以前は薬物療法が主体でしたが、アブレーション治療が進化してカテーテルで根治できる可能性は発作性心房細動では約90%です。我々も患者さんの症状を改善させるだけでなく、脳梗塞の予防も念頭に治療を行っています。これについては、脳梗塞の原因となる心房細動の早期発見のため、脳神経内科とも連携し植込み型心電図モニターなども積極的に行っています。

小田切 心房細動の症状は千差万別で、全く症状のない方もいれば、強い動悸が出る方もいらっしゃいます。不整脈のためベッドでぐったりされていた方が、私たちの治療でお元気になられることも少なくありません。また、無症状の患者さんの中にはご本人が不整脈の症状である運動時の動悸や息切れなどに慣れてしまわれている事例もあります。こうした患者さんがアブレーション治療を受けることでこれらの症状がなくなり、「先生、全然違います。あまり感じていなかったけれど、前は悪かったんですね」とおっしゃられる。そういうお言葉をいただけると、本当にうれしくなります。

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不整脈の症状がなくなり、患者さんから「先生、全然違います。あまり感じていなかったけれど、前は悪かったんですね」とおっしゃられるのが本当にうれしい(小田切)

戸叶 心房細動へのアブレーション治療では、クライオバルーンアブレーションも2016年にいち早く導入しました。


【関連リンク】浦安病院ホームページ 心房細動に対するクライオアブレーションを開始しました!http://www.hosp-urayasu.juntendo.ac.jp/medicalcare/heart_center/20161215_02/


クライオバルーンアブレーションとは、心房細動の発生に関連する肺静脈と左心房の接合部をマイナス40~50度で冷却し凝固壊死させることで、心房細動を抑制するものです。従来の高周波カテーテルアブレーションよりも治療時間が短く、合併症のリスクが低いことが特長で、施設認定を受けた病院でしか施術できません。患者さんの中には治療法をよく勉強されて、「最新のアブレーションをしてらっしゃいますね」と来院される方もいます。もちろん、近隣の開業医の先生方からのお問合せもいただいています。

宮﨑 心室細動や心室頻拍の治療に使う植込み型除細動器(ICD)が日本に導入されたときも、中里先生とともに早い時期から取り組んでおられましたね。

戸叶 心室細動や心室頻拍は心房細動ほど拝見する頻度は多くありませんが、心臓性突然死の原因となる疾患です。突然心室細動にみまわれた患者さんは当院でも年間1020名ほどおられ、このような患者さんのみならず、心機能が悪く心室細動による突然死のリスクの高い方にはICDを体内に埋め込み、このような致死的不整脈再発の際に確実に救命できるようにフォローします。ICDは患者さんの上前胸部を局所麻酔で切開し、血管にリード線を通して心臓内に留置しますが、この方法だと心臓を傷つけるリスクがゼロとは言えません。そこで最近では、側胸部から前胸部の皮下に胸壁に沿ってリード線を留置することで心臓には触れない、皮下植込み型除細動器(S-ICD)も導入しています。S-ICDでは、心臓を傷つけることは基本的にありません。

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左図:皮下植込み型除細動器(S-ICD
右図:側胸部にICD本体を置き、ここから前胸部まで皮下に胸壁に沿ってリード線を留置することで、心臓に触れないようになっている。


下肢の動脈硬化症の予防には、多職種連携のフットケアを!

横山 順天堂大学浦安病院のカテーテル検査・治療人数は年間1,300名ほどいらっしゃいます。そのうち心疾患のカテーテル治療は約400例。県内でもかなり多い方でしょう。私は安定狭心症の治療を専門にしていますが、カテーテル治療やバイパス治療の施術前の血流機能評価をしっかり行うようにしています。

ほかに、一般病院ではできないことが多い治療として、ロータブレーターがあります。動脈硬化が進んだ血管内で病変部が石灰化した場合、バルーンを入れてもうまく開くことができません。そこで高速ドリルを使って石灰化部分を削り取るのがロータブレーター治療で、当院はその認定施設になっています。


尾崎
 私は末梢血管治療、特に下肢の血管治療を専門にしています。

「下肢閉塞性動脈硬化症」といって、下肢の血管の動脈硬化により血管内に狭窄や閉塞が生じる病気があります。こういった病気の患者さんには「間欠性跛行」といって歩いているとふくらはぎの痛みや下肢の重さを感じてしまい歩行が困難となり、休むと症状が改善するといった症状が出現します。病状が進むと安静時に指先などの疼痛を感じる方や下肢に出来た腫瘍などの傷が血流不足により改善しない「重症下肢虚血」といった病態となる方もいます。特に後者の場合は増悪すれば最悪下肢の切断を余儀なくされることもありますので、出来るだけ早期の血流再開が望まれます。

下肢の痛みや歩行障害に関しては、整形外科疾患との鑑別が必要になりますので、下肢血流の評価を各種検査で行い、病状の原因が血流低下であると判断した場合には、カテーテル治療、バイパス治療、薬物療法などを適宜行います。

我々は主にカテーテル治療を行っています。基本的にカテーテル治療はバイパスに比して再狭窄などが多いとされてきましたが、近年は再狭窄予防の薬が塗布されたバルーンやステントが登場し、血管の開通率も飛躍的に上がってきております。

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左図:カテーテル治療前(左総大腿動脈に狭窄がある)
右図:カテーテル治療後(ステント留置後)

尾崎 近年、先に述べた「重症下肢虚血」に「糖尿病足病性潰瘍」を加え「包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)」という概念が生まれつつあります。これらの患者さんの治療には、フットケアが大変重要です。

現在我々は循環器内科、皮膚科、形成外科・再建外科、整形外科、糖尿病・内分泌内科、看護部、リハビリテーション科などの多職種のスタッフにてフットケアチームを形成しております。2週間に1度カンファレンスを開いて、これらの患者さんの治療法を検討しております。血流が悪い患者さんには我々でカテーテル治療を行い、その後の傷の程度により各診療科にて治療をお願いする形で様々な病態に対応できるチーム作りを心掛けております。これは大学病院だからこそできるチーム医療であると考えております。

今後ご高齢の方が増えてくるに従い、下肢の動脈硬化性の病気も増えていくだろうと考えております。下肢動脈の治療件数も、初め上司である柳沼先生と治療を開始した当時は年間20~30例であったものが、現在は100例を超える患者さんを治療させていただいております。その中には治療により下肢を切断することを回避できた患者さんも多数いらっしゃいます。

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多職種スタッフが連携しているフットケアチーム。なかには足を切断せずにすんだ患者さんもいらっしゃる(尾崎)

宮﨑 そもそも末梢血管が注目されるようになったのはこの10数年ほどのことです。当科の柳沼憲志先生が手足の治療に取り組むようになり、尾崎先生とともに症例数を増やしてこられましたね。その後、柳沼先生はドイツへの留学を経て2020年4月より当院に戻ってきています。私も2007年より米国ハーバード大学へ3年間留学した経験がありますが、順天堂循環器グループでは若手医師の海外留学を重視し、数年に1度派遣するようにしています。当院でも大学院生もつねに2~3名在籍し、研究発表指導も充実させています。


患者さんに寄り添い、ベストな治療を提供するのが使命

循環器内科のやりがいについて教えてください。

戸叶 来院時にベッドから起き上がることもできないような重症な患者さんが私たちの治療により、もとどおりに元気になられてご自分で歩き自宅へ帰って行かれる。日常生活がお楽になり私たちの治療効果にとても喜んでくださる。おそらくどの先生方も同じだと思いますが、そこが循環器内科医の最大のやりがいでしょう。

横山 そうですね。循環器内科の醍醐味はまさにそこだと思います。外科に近い部分もありますね。

尾崎 足の治療も非常にやりがいがあります。人は歩けなくなると、日常動作が非常に限られてしまいます。そこを歩けるように治療して差し上げると、心から感謝してくださいます。ひとりでも多くの患者さんの足を救い、ご自身の足で歩いていただくことが私たちの目標です。

宮﨑 超高齢社会である日本では、今後も心不全の患者さんが増え続け、2030年には140万人に達する「心不全パンデミック」が起きると予測されています。長生きすれば他の臓器が弱るのと同じように、心臓も弱ります。しかし、そこで生活の質を落とさずに暮らしていただくために、私たち循環器内科医がサポートします。当科は未病の段階から重篤な患者さんまで対応できる体制が整っていますから。

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患者さんが元気になることがやりがい。生活の質を落とさずに暮らしていただくために、私たち循環器内科医がサポートします(宮﨑)


最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。

戸叶 私たち順天堂大学浦安病院循環器内科はさまざまな先進治療をご提供しつつ、「患者さんに寄り添う」ことをなによりも大切にしています。治療法は必ずしもカテーテル治療や手術ばかりでなく、薬物療法もあります。患者さんに丁寧にご説明し、患者さんが望まれる治療をご提供するのが当科の方針です。

健康診断で問題があった方、胸の痛みや息苦しさを感じる方、動悸や不整脈がある方、歩行時などに下肢が痛くなったり、足の傷が治らない方などがいらっしゃいましたら、いつでもお越しください。若い方からご高齢者まで、地域で暮らす方々のみならず遠方の皆様もずっと診続けられる病院でありたいと、私たちは願っています。

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若い方からご高齢者まで、地域で暮らす方々のみならず遠方の皆様もずっと診続けられる病院でありたい(戸叶)