インタビュー

2021年06月15日

順天堂大学の研究者たちを支援する専門家集団「JURA」

近年、順天堂大学では、JST「創発的研究支援事業」をはじめとした大型研究費助成事業に相次いで採択されるなど、基礎研究において数々の成果をあげています。こうした研究力強化の原動力となっているのがURA(リサーチ・アドミニストレーター)の存在です。2012年に大学独自のURA組織として設立された「JURA」では、自らも研究者として研究に従事してきたスペシャリストたちが、科研費申請や情報発信などにおいて研究者たちをサポート。その活動は、学内外の研究者たちから高く評価されています。ここでは普段あまり表に出ることのないURAの活動について、JURAの髙野秀一さんと松田七美さんに話してもらいました。

松田 七美(まつだ・ななみ)
順天堂大学研究戦略推進センター リサーチ・アドミニストレーター

製薬企業で創薬研究に従事した後、理化学研究所BSI(脳科学総合研究センター)、東京大学薬学部研究員、米国コロンビア大学研究員、早稲田大学先進理工学部生命医科学科准教授を経て、2020年より現職。製薬会社時代に博士(医学)取得。

髙野 秀一(たかの・しゅういち)
順天堂大学研究戦略推進センター リサーチ・アドミニストレーター

2002年筑波大学大学院農学研究科修了。博士(農学)取得。金沢大学薬学部助教、米国テキサス大学研究員、産業技術総合研究所研究員、研究所専門の設計事務所のラボデザイナーを経て、2012年より現職。

■研究時間を確保することがURAの目的

――まずはURAについて教えてください。

髙野 日本の大学では、研究者が事務作業やさまざまな雑用に忙殺されて研究に費やせる時間が圧迫されていることが問題視されてきました。そこで、2008年頃から研究者の研究時間確保を目的として、研究者の活動を戦略的に支援する専門職職員として、URAUniversity Research Administrator)が各大学に設置されるようになってきました。特に順天堂大学のような医学・看護を含む保健分野では年々研究時間が減っているというアンケート調査結果があり、URA機能のニーズは高まっています。

――順天堂大学の「JURA」はどのような経緯で設置されたのでしょうか。

髙野 研究者の研究時間減少の問題は本学も例外ではないことから、2012年にURA2名という体制でスタートしました。私はそのときからJURAの一員として従事しています。その後、2014年に研究戦略推進センターとして研究者支援体制が強化され、現在はURA6名を含む約50名の体制になっています。順天堂大学のURAは、Juntendo University Research Administratorの頭文字をとって、「JURA(ジュラ)」と呼ばれ、皆様に親しんでいただいています。

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JURAの活動の根底には「順天堂大学の研究者たちのさらなる発展や底上げに貢献したい」という想いがあります。その想いは、JURAのロゴに密かに反映させました。研究者に右斜め上の提案ができることを信条に、常にさまざまな角度から右肩上がりの効果を出すための戦略を練り、研究者の皆様の研究のさらなる発展を祈念して、テキストを「斜め」に配置しています。

■「企画力」「発信力」「発表力」を支援

――JURAでは、主にどのような活動をしているのでしょうか。

髙野 申請書レビューや面談を通じた研究費獲得のための「企画力支援」、研究成果のプレスリリースのメディア配信などを行う「発信力支援」、論文作成を助けるEndNote提供および作図などを行う「発表力支援」という、大きく分けて3つの活動があります。中でも、メインとなるのは研究費申請の支援です。その際には、できるだけ客観的に申請書類を確認できるように、1人の研究者に対して2人のURAが対応するようにしています。

といっても、6人のURAだけで約1600人の研究者を支援しなければなりませんので、6人で工夫してやりくりしています。

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JURAメンバー:(左から)櫻井 孝司 Ph.D.、仲島 義貴 Ph.D.、髙野 秀一 Ph.D.、松田 七美 Ph.D.、小倉 かさね Ph.D.、菅原 剛彦 Ph.D.

松田 研究費といっても、ベテラン、中堅、若手とさまざまなランクがあり、どのランクの研究者に注力して支援するかについても検討してきました。JURAができた当初は、経験の浅い若い先生方を支援していたようですが、近年では大型科研費を取れる先生方がさらに上の科研費にもチャレンジできるよう支援することも重視しています。研究者の中には、十分な実績と実力がありながら「自分はそこまでではないのでは」と考える謙虚な方もいるので、後押しすることも大切だと思っています。

髙野 松田さんは尖っている研究をさらに最先端へ押し上げるような活動、私は若手の先生方を中心に底上げをする活動というように、限られた人数で幅広く支援するように役割分担をしています。

■申請書作成などに活かされる専門家の目線

――これまでにお話を伺った研究者たちからは、研究費支援の中でも申請書作成やヒアリングの練習などでURAの皆さんにとても助けられたという声を多く聞きました。

髙野 研究申請書の支援でも役割分担がありまして、松田さんやほかのURAたちは研究内容をさらに伸ばすようなアドバイスを中心に行っています。一方、私は研究内容については基本的に触れず、主に文章上の表現に注力して指摘する担当で、語尾を直したり長すぎる前置きを削るなどして全体を整えます。そうやって一連の流れで進めています。

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松田 私の場合は、自分自身が研究費を獲得して研究代表になった経験があるので、研究者の目線で研究を見て、研究者自身が気づいていない研究の魅力を引き出すことを大切にしています。とても素晴らしい研究でありながらアピールが十分でないために採択されないという残念なケースも少なくありませんから、一緒にしっかりと準備します。

研究費申請では、ヒアリングの準備もとても重要です。ヒアリングのときのアピール次第で、書類選考の段階での順位が覆ることもあります。採択率が低い大型研究費ともなれば、どの研究内容もレベルが高く、わずかな違いが採択の明暗を分けますから、私たちもかなり力を入れていますね。

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――お2人から見て、順天堂大学の研究の特徴はどのようなところにありますか。

髙野 研究をになう先生方が皆さんとても優しくて、情報や機器類をシェアする文化が根付いています。そういった雰囲気が少しずつ力になって研究力を高めているという特徴があるのではないかと思います。そして、そのような研究者を支える体制が整っているところも素晴らしいです。例えば、共同利用機器の専属人材や統計の専門家が配置されていたり、研究発表用のポスター印刷を学内で請け負う部署もあります。それから、私たちがいる研究戦略推進センターでは研究費や知財の管理を支援しています。私が経験した米国の研究環境の充実度にそっくりです。

松田 特に他大学から移ってこられた先生たちは、研究環境がとても恵まれていると話されていますね。

■研究者としての経験があるから研究がわかる

――お2人は研究者の経験を活かしてURAになったそうですが、なぜURAになろうと思ったのですか。

松田 私は製薬企業の創薬研究、理研や大学での研究、アメリカ留学などを経て、前職では大型研究教育プロジェクトの申請や採択後のプログラム運営などを行う仕事をしていました。大型研究費の研究代表を務めたこともあるなど、これまでの私の経歴が順天堂大学のURAという仕事にとてもマッチすると知り興味を引かれたのがきっかけでした。

髙野 私は金沢大学や産総研で研究をしていたのですが、当時から研究の傍ら共同機器のメンテナンスを行うなど、知らぬ間に周囲の人のお手伝いをするような役割を担っていました。ところが、その後留学したアメリカでは、学会に出かけるときのチケットや機器の管理など全て専門のスタッフにお任せで、研究者は研究に専念できるのです。そのときに初めて研究者を支援する役割の大切さを実感して帰国しました。

松田 確かに、私もアメリカにいたときは事務的な作業など一切する必要がありませんでしたね。

髙野 私の場合は研究者としてのキャリアに加えて、研究所専門の設計事務所での仕事がURAの仕事に大きく影響しています。ここではクライアントである研究者の要望を設計者に分かりやすいように伝えたり、逆に設計者の意図を研究者に説明するといった仕事をしていました。こういった仕事を通して、誰にとっても分かりやすく伝えるスキルを磨くことができて、今の仕事で大いに役立っています。

――URAという仕事のやりがいはなんでしょうか。

髙野 やはり研究者の先生方から喜んでもらえることです。申請書作成のお手伝いをした先生方からは、私たちの仕事に対して「感動した」といった感謝のメールをいただくことが多く、そういった言葉のひとつひとつがやりがいになっています。

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松田 それは私もまったく同じで、研究者に喜んでもらえることが一番のやりがいです。また、研究者自身が気づいていないその方の魅力を引き出すことができたとき、とても喜んでいる研究者の様子を見るとこちらもうれしくなってきます。

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――研究者支援を行う上で大切にしていること、心がけていることはなんですか。

髙野 信用・信頼をしてもらうことです。これらがなければ、アドバイスをしても研究者には届きません。極論を言えば、私を信じてくれなくてもいいので、できるだけ客観的なデータを示してデータを信用してもらうよう心がけています。そうして納得してもらってから、信頼関係を作っていきます。

松田 髙野さんは分析が得意ですから、その面で研究者たちからとても信頼されていると思います。私の場合は、個々の研究者のポテンシャルを知り、長期的視野に立って実力を発揮するための戦略を立てるようにしています。そのために実践しているのが、できるだけ11人の研究者に会って話すことです。今はそれも難しい状況にありますが、JURAに来たばかりの頃は、自分からどんどん連絡をとって研究者たちに会いに行きました。そうやって面談することで、研究者ごとの研究プランや魅力、お悩みも見えてくるので、その人に合った提案をできるようになるのです。

■順天堂大学の研究成果をもっと知ってもらうために

――次のステップに向けた課題などはありますか。

髙野 学内の研究者の中でもJURAというサービスを知らない方がたくさんいますので、学内周知を徹底させなければいけないと感じています。特に、新しく着任された教員の皆さんはご存じないので、そういった先生方にどうやって情報を届けるかは現在の課題の1つです。

松田 中堅研究者や若手研究者の育成、大学単位での大型研究教育プログラムへの申請、産学連携や起業家教育など多岐にわたりますが、データサイエンス教育も重点課題の1つだと捉えています。本学ではデータサイエンス分野で、今年度より医学研究科内に大学院が設置され、2023年度より新たに学部を創設する予定があるのですが、私は前職でデータサイエンス教育に携わったことがあるので、そういった経験も活かしてお手伝いできればと考えています。

――最後に、順天堂大学の研究について、特にアピールしたいことを教えてください。

松田 本学は脳神経系分野において特徴的な研究者が多く、世界的に見てもトップレベルの実績を挙げています。そういった研究について、JURAで研究ブランディング事業のWebサイトでアピールしていきます。

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髙野 個々の研究者が取り組んでいる研究の中には、共通する分野、切り口のものが少なくありませんから、そういった研究をまとめて紹介することで訴求力を高めたいと考えています。現在ですとCOVID-19関連の研究アプリ開発などがかなり盛んに行われていますので、ぜひ多くの皆さんに知っていただきたいです。

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