順天堂グローバル教養論集第一巻20160325
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108順天堂グローバル教養論集 第一巻(2016)1. はじめに 教員採用試験(以下、教採試験)とは、毎年度、全国47都道府県と19の政令指令都市(以下都府県市)の教育委員会が実施している試験である。八木(2007:144)が「教員採用試験も広く批判の対象になるように、人の目にふれる形にするべきである」と述べているように、教採試験の問題や題材の都道府県市による違いを明らかにした研究は少ない。高橋(2011:16-17)は、「英語教員に求められる専門知識・技能を明確にし、共通理解を図る必要がある」と指摘している。教採試験は、教員の出発点として非常に重要で、教員の真価が問われるべきであるし、筆者は2011年度から、英語能力、英語指導法、学習指導要領等に関して、毎年教採試験の問題の分析を行っている。本稿では、2011~2015年度5年間の長文読解問題における「言語と文化に関する題材」にしぼって、調査・考察を行いたい。 長文読解問題の題材を取り上げるのは、読み物の真髄は題材であり、かならず読み物にはメッセージがあり、教採試験ならではの題材があるべきだと考えるからである。「題材こそ〈ことばの命〉である」(森住2015:4)とあるように、英語教員になる人には、ことばについて敏感で、ことばについて考える力が必要である。言語と文化に関する題材を取り上げる理由は、英語教員の資質として重要なもののひとつに、英語に対する観点(言語観)があると考えるからである。言語観とは、言語や文化がどうあるべきかの是非を議論する視点である。教員一般としての資質、英語の知識、運用能力ももちろん大切だが、近藤(2015:166)が「文化とは〈生活様式の全体〉で、“Culture is everything.”とも言われる」と述べるように、言語と文化の結びつきは強く、言語と文化に関する判断が言語観に関わるからである。英語教員の資質として、特に、言語・文化観を重視していきたい。全体の構成は、まず、長文読解問題の全体像を把握し、次に、言語・文化に関する長文読解の題材にしぼって内容を調査し、言語、文化に関する問題の実例を紹介する。以上のことから、本稿の目的は、以下の3点である。(1) 長文読解問題の題材の種類と割合を調査する。(2) 2011~2015年度の言語・文化に関する題材を、言語一般、英語、文化一般、英語圏文化と分け、調査する。(3) その言語・文化に関する題材の実例を示し、教員の資質を問う問題として適切かどうかを考察する。 今回の調査対象は、2011年度から2015年度の教採試験で、受験者、採用者数が多い関東・関西近郊の25県市1)である。2. 長文読解問題の概要2.1. 長文読解問題の題材例 長文読解問題は、2011、2012、2015年度は100%、2013、2014年度は96%の都府県市が扱い、重視していることがわかる。しかし、これらの問題の配点や評価方法に関して、25都府県市の教育委員会の英語指導主事にアンケート調査を行った結果、正確な比率は把握できなかった(吉野2013)。長文読解問題は、都府県市によって、1種類から7種類の出題があり、語数は300語から1000語を超える英文まであり多様である。 紙幅の都合で、2015年度の関東地方(1都6県)の題材例を以下に載せる。(1) 東京都:①第二言語習得に関する動機付け、②色彩の認知と言語(2) 神奈川県:①日本の歴史や現状の本の書評、②生徒の携帯電話使用の影響(3) 千葉県:①ピグミーチンパンジーと人間の社会性、感情表現の類似、②内向的な人と外交的な人の傾向、③言語教育における協同学習の課題、留意点、④若者の不適切な運転の調査結果(4) 埼玉県:(中学)①火星の生命体調査、②

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