順天堂グローバル教養論集第一巻20160325
49/158

45科学的な表現力の育成を図る中学校理科授業の実践研究一つとして、学習指導要領の改善の方向性を示した。 こうした、日本の子どもたちの学力の状況を踏まえ、2006年(平成18年)12月には教育基本法が約60年ぶりに改正され、 21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指すという観点から、教育の新しい理念が定められた。 また、2007年(平成19年)6月には、学校教育法が一部改正され、学校教育法(第4章、小学校)第30条第2項として、『前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。』が加えられた。つまり、(1)「基礎的な知識及び技能」、(2)「思考力、判断力、表現力」など、(3)「主体的に学習に取り組む態度」の重要性が明記されたのである。なお、第49条、第62条等の中学校や高等学校などにおいても、第30条第2項が準用されている。 学校教育法第30条第2項が法の改正により追加されたことは、極めて重要な意味をもっている。これまでは、このような内容については学習指導要領の総則に記されていた。しかし、平成20年度版の学習指導要領の改訂では、教育基本法や学校教育法の改正に基づいて成されているのである。つまり、法律に「格上げ」されたことにより、小・中・高・特別支援学校などにおいて、先の(1) ~ (3)を育成する重要性が一層高まったと言えるのである。 そのため、平成20年度版の学習指導要領では、基本的改訂の考え方3つのうち1つに、「知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること。」を挙げている。また、平成20年版「中学校学習指導要領解説理科編」(文部科学省,2008a)では、科学的な思考力・表現力の育成を図る観点から、言語活動の充実を学習指導のポイントとして挙げている。 こうした改訂の趣旨を踏まえた現行の小学校学習指導要領(文部科学省,2008b)は2011年(平成23年)4月から全面実施され、中学校学習指導要領(文部科学省,2008c)は2012年(平成24年)4月から全面実施されている。 しかし、2012年4月に実施された「全国学力・学習状況調査の結果について(概要)」(国立教育政策研究所,2012a)では、「観察・実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・考察し、説明することなどに課題がみられる」と述べている。特に、中学校理科では「実験の計画や考察等を検討し改善したことを、科学的な根拠を基に説明すること」や「実生活のある場面において、理科に関する基礎的・基本的な知識や技能を活用すること」に課題があるとされ、科学的な概念を使用して考えたり説明したりする「思考力・判断力・表現力」を高める授業づくりの必要性が求められた。 以上のことからも、科学的な思考力・判断力・表現力の育成を図ることは、学校教育の理科教育において喫緊の課題であると言える。 そこで、本研究では、「科学的な思考力・判断力・表現力」のうち、特に、「科学的な表現力」の育成を中心に、中学校理科授業の具体的な方策について検証授業を通して提案することを目的とする。1.2. 科学的な表現力とは何か 理科教育研究チーム(2010)は、「科学的な表現力を高めることで科学的な思考力も高まる。」と述べている。日置(2010)は「観察や実験の前に位置付く予想や仮説をもつ場面における指導の工夫改善は行われてきた。一方で観察・実験の後に位置づく結果から結論を導き出す場面における指導については工夫改善の余地が十分にある。このことから、観察・実験において結果を表やグラフに整理し、予想や仮説と関連づけながら考察を言語化し、表現すること

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です